2.地殻構造
2.1 日本列島のモホ面深さ分布
地球の表面には,比較的密度の低い岩石からできている地殻があります。地殻
の厚さは大陸で30kmほど,海洋で7kmほどです。しかし,その厚さは一様でな
く,地域によって異なっています。地殻の下はマントルという密度や地震波速
度が大きな岩石でできた層があります。地殻とマントルとの境界はモホロビ
チッチ不連続面,あるいはモホ面と呼ばれています。日本列島におけモホ面の
深さ分布,言い換えると地殻の厚さを地震波の走時データから推定しました。
地殻の厚さくらいすでによく分かっていると思われる方もいるとは思い
ますが,意外とその推定結果のそれほど多くありません。
基本的なモデルとして,表層・コンラッド面・モホ
面という不連続面を明示的に仮定して,地震波の到着の違いのデータを用いて
推定しました。
表層を仮定することに
より観測点補正を仮定せず,表層により観測点直下の構造差を表しました。
また,表層から次第に深い層に上からはぎとるように構造を推定する手法を
とることにより,推定時における浅い部分と深い部分の干渉を抑えています。
推定したモホ面深さ分布を図.1に示します。中部日本においてモホ面は深く推
定されています。中部日本においてモホ面が深いという推定結果は,他の研究
結果でも共通して認められている結果です。山梨県の下で深さ40kmになってい
ると推定されています。北海道では東西に深い部分があるように推定されてい
ます。北海道の東側は千島弧が衝突してできたとされていますが,千島弧の
地殻構造を反映しているのかもしれません。関東平野や新潟県の部分ではモホ
面が浅いと推定されました。関東平野の地下部分は地殻が引き伸ばされたよう
な構造をしています。引き伸ばされた結果地殻が薄くなり,モホ面は浅く,上
には多量の堆積物がたまっているとみられます。新潟県の平野部もモホ面が浅
く,堆積物が厚いという特徴があります。
また,九州北部・中国地方において浅いという特徴が見られます。九州北部において
浅い部分は,背弧拡大軸である沖縄トラフの延長上にあたりますが,関係ある
かは不明です。中国地方のモホ面については,他の手法によると深くもとまっ
ている研究結果もあり,まだ把握しきれない点があります。

図1 モホ面浮さ分布。