Shape of Molecules

Saturday June 2nd, 2012 12:18 PM | By | Category: Physical Chemistry, Uncategorized, Tsuge Group
図1 今回新たに導入された単結晶X線構造解析装置。X線集光ミラーと二次元検出器を備えている。

図1 今回新たに導入された単結晶X線構造解析装置。X線集光ミラーと二次元検出器を備えている。

図2 単結晶構造解析で決定された分子の構造。左:JBIR-23(抗悪性胸膜中皮腫活性)の重要合成中間体。右:金原子を6個含む金属錯体。(赤:酸素原子、灰色:炭素原子、白:水素原子、黄色:硫黄原子、青:窒素原子、ピンク:金原子。右の分子は複雑なので水素原子は省略してある。)

図2 単結晶構造解析で決定された分子の構造。左:JBIR-23(抗悪性胸膜中皮腫活性)の重要合成中間体。右:金原子を6個含む金属錯体。(赤:酸素原子、灰色:炭素原子、白:水素原子、黄色:硫黄原子、青:窒素原子、ピンク:金原子。右の分子は複雑なので水素原子は省略してある。)

全ての物質は原子から出来ていますが、含まれている原子の種類がわかっただけではその物質が何かは決まりません。例えば、エタノール(お酒)、ショ糖(砂糖)、セルロース(紙)は、どれも水素原子(H)と炭素原子(C)と酸素原子(O)からできていますが、それぞれ全く異なる性質を持った物質です。物質中では原子は互いに単独でいるのではなく相互に結合して分子と呼ばれる単位を作り、この分子がそれぞれ異なる性質を示すため、同じ原子からできている物質でも違う性質を示します。つまり、原子の種類と繋がり方(=結合)が物質の性質を決めると言うことになります。

このため、新しい物質が得られた時には、構成する原子の種類と結合の様子を明らかにする必要があります。同時に、結合の様子を決めることは、新しい機能を持った物質(医薬品、新素材など)を作り出すうえでも重要です。分子内の結合を決めるのには、色々な手法があります。例えば、エタノールやメタノールなどアルコールには、酸素と水素が結合した水酸基(-OH)が含まれていますが、これを持つ物質は特徴的な反応を起こすため、その反応を試してみることにより、水酸基が含まれていることが分かります。また、水酸基はあるきまった波長の光(赤外線)を強く吸収するため、赤外線を当てみるとその有無が分かります。ただし、このような反応性による分析や光の吸収を利用した分析法では、その結合が物質中にあるのはわかっても、それぞれがどのような配置になっているかを知るのは容易ではありません。

このような方法のほかに結合の様子を知る方法として、X線の回折現象を利用した単結晶X線構造解析があります。この方法を用いると結晶中の原子の三次元配列、すなわち立体構造を直接決定することができます。さらに、この方法では単に分子一つ一つの構造を決定するだけなく、その物質に複数の分子が含まれている場合に分子がどのように並んでいるかも決定することができます。最近、生体中の酵素の構造もこの方法で決定され、酵素がどのようにして複雑で精密な機能を発現するかも明らかにされています。

ただ、この強力な方法にも弱点があります。それは、この方法は回折現象を利用しているため、分析したい物質が“ある程度”大きな結晶になる時しか使えないのです。また、構造を精密に決めるためには、非常に多くのデータを測定し、多くの未知数を決定する計算を行う必要があります。*このため、単結晶構造解析は、決定的だが時間と手間のかかるものとなっていました。(複雑な物質の構造を決める際に、数年間ただただ同じ化合物の再結晶を繰り返す場合もあります)

最近、計算機の進歩により計算時間が短縮されると同時に、測定装置も進歩しました。1次元検出器で1つずつ測定されていたデータも、二次元検出器の利用により同時に何十個も測定できるようになり、測定時間の大幅な短縮が可能になりました。また、用いるX線の強度もX線集光ミラーの開発により桁違いに強度の強いX線が手軽に利用できるようになりました。

昨年末に、富山大学にもこのような最新鋭の装置(図1)が導入され、これまでは測定不可能であった大きさの結晶を使って分子構造が決定できるようになりました。図2にこの装置を使って最近決定した分子の形を示します。このように単結晶X線構造解析をもんちいるとどのような結合の仕方で原子が分子を作っているか明確に示す事ができます。左に示したのは、新規治療薬(抗悪性胸膜中皮腫)のリード化合物として期待されているJBIR-23の重要合成中間体(有機化合物)で,核磁気共鳴スペクトルではその立体構造の解析は大変困難でしたが、X線測定により極めて短時間にその3次元構造を決定することが出来ました。右に示したのは、金原子 を6個含む金属錯体で,これも同じような結合をたくさん含むため他の方法では立体構造の決定は困難ですが、X線測定により容易に構造を決定する事が出来ました。今回導入された装置では、生体関連物質や医薬品などで重要な問題になる左手型の分子か右手型の分子かも容易に決定することができます。

今回、この二つの化合物の測定に用いたのは僅か0.2 mm 四方の大きさの結晶です。シャープペンの芯の太さが0.5 mmですので、この測定で用いた結晶はシャープペンの芯の半分よりもさらに小さいと言うことになります。10―20年前に使われていた装置では一辺がおよそ0.5 mm以上ないと測定できませんでした。体積で考えると実に1/10以下の結晶でも十分に分子構造を決めることができるようになったことになります。また、測定時間も短縮され、標準的には5―6時間あれば数万個のデータを測定することも可能であり、解析まで含めても結晶が得られてから1日あれば、どんな構造の分子であるかわかるようになりました。今後、この装置を使ってますます新たな化合物の合成とその性質の研究を進めることができると考えられます。

*原子の空間位置を決めるには、1つの原子当たり(x, y, z)の3つの値を決める必要があります。このため、20個の原子からなる分子ならば少なくとも60個の値を決定しなくてはなりません。さらに原子の位置には分布があるため、実際の解析では通常一つの原子あたり9つの値を決めていきます。つまり、20個原子がある場合には180個の値を決めることになります。

(化学科 柘植 清志)

Sorry, the text is in Japanese only for now. Please stay tuned and come back again later.

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