「幸せに暮らせる故郷にするには地域包括ケアシステムの構築が具体的なヒントになる」と,医師として南砺市民病院で取り組んできた地域包括医療・ケアについて紹介。本人の意向を十分に汲んだ,様々な職種の専門家による課題解決型カンファレンスを行い,在宅で支える体制を作ってきたことを紹介。顔見知りに会え,人生をともに歩んだ家族の思い出があり最も安心できる場所である自宅での生活を誰もが希望し、自宅で穏やかに暮らし,人生を仕舞いたいと希望していると話し,高齢化に伴い独居・老老世帯が増加していくことが予想される中,子どもや孫への過重な介護負債を強いる社会を残さないために,地域包括ケアシステムの構築が必要不可欠と説明。
長命社会を長寿社会とするための心構えと取組として,①健康寿命の延伸・経済的安定(自立への努力と支援),②不便でも不幸ではない暮らし(自律への努力と支援),③満足で穏やかな人生の終わり(最期への努力と支援)を住民に提言していると紹介。
認知症の方が最期まで自宅で暮らせる地域の看護の在り方を先進国オランダの地域看護から学び,南砺市の「5つのまちづくり規範」を平成26年に制定したと説明。南砺市の地域包括ケアシステムの現状では,在宅介護や生活支援・介護予防などが不十分であり,保健・医療・介護・福祉組織と業務現場を統合した地域包括ケアセンターを作り,自立支援型ケアマネジメントにチームで取り組んでいることを説明。今までは現場のプロがシステムを整備してきたが,これからは住民が一緒にやっていかなければ十分な支援が提供できないので,地域包括ケアシステムの構築も小規模多機能自治のヒントとなると述べた。
南砺市は健康寿命の延伸(介護予防)への取組が不十分であり,住民が歩いて行ける「通いの場」の構築がいつまでも元気で暮らせる「まちづくり」に繋がるとし,特に70歳代からは,社会とつながること,親しい人と結びつくこと,適度に運動することが大切であり,これからは元気な高齢者が支えられる側から支える側に移ることで,市の財政の安定にもつながると説明。高齢者の働く場・活躍の場が少ない現状の中で,つながりのある心地よい居場所づくりや日常生活支援など,地域の絆となる支援活動に住民主体で取り組む必要があると話した。
また,認知症高齢者の在宅での生活支援には地域の理解と協力が必要であり,認知症を知り,患者を支える活動を市内全域の全世代に広めるための啓発活動を紹介した。さらに一般介護予防活動としての介護予防運動サロンの活動内容を紹介し,その効果を説明した。幸せに暮らせる故郷づくりのためには,地域ごとの住民組織での自助公助の構築や地域への愛着と誇りを持つことが大切であり,住民が地域の歴史と文化に誇りを持ち価値を高めれば次世代の人も集まる。これらは誰かがつくってくれるものでなく,そこに住む一人一人が知恵を出し汗を流し努力してつくっていくものであると話した。
自己紹介を兼ねて,自身の携わった地域再生ソリューションの案件を紹介しながら,どんなに立派な報告書や戦略をつくり提案しても,地域の人が考えないと動かないと話し,動くための地域再生の研究と人づくり,大学の地域連携戦略の形成と実践に取り組んでいると紹介。
地域で生きるための事業・組織・人はどうあればいいのか,そのヒントを掴むことを狙いとし,地方創生が描く新たな地域づくりのあり方と各地の取組について紹介。大学と接点があり南砺市との類似点もある和歌山県田辺市の動きと取組について事例紹介。住民主体での地域づくりの取組は,ボランティア活動だけでなく経済活動に繋げないと持続可能とならないことから,地域住民の出資による農産物直売所の事例や地域の廃校を市から買い上げて地域拠点施設として活用運営している事例を紹介。
様々な地域が,資源とビジネスを組み合わせて社会課題解決を持続的に事業として進めていると説明。地方創生の背景にある人口減少・高齢化が進行すると住民の暮らしにどの様な影響をもたらすかを説明し,地域の取組により課題解決を図って暮らしを維持させている事例を紹介。地域と連携した子育て支援施設の運営事例や地域活動団体が協働体制で山間地再生に取り組む事例,買い物代行サービスの事例や地域福祉サービス,撤退した商店等の地域での自主運営の事例を紹介。ボランティア頼りの運営は頭打ち現象が見られるようになる一方で,ソーシャルビジネスなど地域・コミュニティに密着したサービスに対するニーズは拡大して,地域で小さな拠点をつくりそこから活動を広げ,自分たちで考え自分たちで創りだして動かしているのが今の動向と説明。
舟橋村と富山大学が連携して地域主導のまちづくり取り組んだ事例として「ふなはしまつり」改革を紹介。住民自らが動き考えたことで行政から離れて自主的に運営するようになったと話し,何のためにやるのか自分たちで考えることが重要であり,地域が生き残るためには,人口移動や年齢構成など将来の行方を知り,どんな事業・組織が必要か,どうすれば事業が立ち上がり,組織が動くのかをわかっているかを自分で考えてみることが大切であると話した。
冒頭,本会議の今後の日程について説明。南砺市型小規模多機能自治の実現へのロードマップが示され,事業立ち上げまでの流れと今後の会議日程と内容について説明。
市民会議参加者の住居エリア別に「市街地」「平野部A」「平野部B1」「平野部B2」「山間部」の5グループに分かれワークショップをおこない,これからの自分たちの地区の課題は何か,組織の何が課題なのか,今後の予定,モデルとなる自治振興会などについて,各グループで話し合った。