有機トランジスタの高性能化を目指し、一つの課題としてはコンタクト抵抗の低減が有ります。
ボトムゲート・トップコンタクト形TFTでは、有機半導体/金属界面に挿入する材料系の選択で、コンタクト抵抗の低減が図れます。
本来、このヘテロ界面の障壁高さは、半導体のフェルミレベルと金属の仕事関数によって決まる筈ですが、こと有機半導体の場合では、界面層の存在による界面準位の形成や真空準位のバンドオフセットが出来ます。
そのため、理想的な系とはならないと言う課題が有ります。
そのなか、報告されているMoO3/Au構造を参照構造として、酸化物材料を種々変えた検討を行いました。
高融点金属酸化物であるWO3、電子伝導酸化物として知られるTiO2、そして比較的低温で抵抗加熱蒸着可能なGeOを用い、有機半導体をp形ペンタセンとしたTFTとそのキャリア注入特性を検討しました。
図には、トランジスタ特性と特性の温度依存性を示します。
全ての酸化物挿入で、Au単体の電極のときより大きな移動を得て、MoO3を持つTFTでは移動度0.72 cm2/Vs、バリアハイト0.03 eVであったのに対し、
GeOを持つTFTでは移動度0.96 cm2/Vs、バリアハイト0.01 eVと、MoO3のTFTを超える結果を得ることが出来ました。