4. 熱帯雨林を流れる河川

 Rajan川で印象に残ったこと...それは「ゴミ」が流れていることと「泥川」であることである。

 ジャングルを流れるこの川にはたくさんのゴミが流れていた。まず図16を見ていただきたい。これはRumar Seriの船着き場から撮影したものである。

 

図16 ジャングルを流れる河川に浮かぶペットボトル(9月9日Rumar Seriにて撮影 )

 

少し見にくいかもしれないが,河川の中央に白いものが浮かんでいるのが見える。これは何か...実はペットボトルである。なんと,ジャングルにペットボトルが流れているのである。ジャングルをぼーっと眺めていた時の出来事で,正直最初は何が流れているかわからなかったが,ペットボトルと知って目を疑ってしまった。

 

図17 ジャングルを流れる河川に浮かぶペットボトル(9月8日ロングボートから撮影)

図17は9月8日にRumar Seriに向かう途中に撮影したものである。このような光景はここでは珍しくないようである。これは私にとってかなりショックだった。ジャングルにペットボトルって...。ジャングルを流れる川はもっと幻想的なものだと思っていたのに...。

 

図18 ジャングルを流れる河川に浮かぶゴミ入りのビニール袋(9月8日ロングボートから撮影)

 

ペットボトルで驚いていてはいけない。今度はゴミのたくさん入ったビニール袋(図18,中央付近のピンクの袋)が流れてきた。ここまでくると,驚きを通り越して,呆れてしまう。

 このようにゴミの河川への不法投棄は日常茶飯事となっている。ゴミ収集等は行われていないため,ゴミの行き場がない。目の前には豊富な水量の川。そこに捨てればゴミは目の前から消える。それでおしまい...。このような考え,すなわち「目の前からなくなったらそれでおしまい」的発想は,我が国の人々にもあるのではないか。我が国の場合,行政によりゴミ処分が適正に行われているため,このような考え方を我々がしていることにそれほど気付いていないのかもしれない。ゴミ処分に関し対策がなされていないこの地で,このような現実をまざまざと見せつけられ,そのことを再認識した次第である。それはともかく,ゴミ収集が困難な環境において,いかにゴミを処分するか,適正でかつ現地に適合した方策を検討する必要があるだろう。これがまた難しい問題であるのだが...。

 

 

図19 Rajan川流域にある製材所(左)と流木(右)

 

  一方,「泥川」については前にも述べたとおり,森林伐採が進むにつれて表土が河川に流出したことが原因のようである。Rajan川流域にはかなり多くの製材所が立地しており(図19左),この地の重要な産業となっている。一時期,「このまま森林伐採が続くと2002年には東マレーシアにはジャングルがなくなる」とまで言われていた程活発に伐採が行われている(2002年9月にはまだジャングルはあったが)。この製材所から流れてくるのだろうか,あるいは木材の輸送時に流れるのであろうか,とにかく流木が目立つ(図19右)。船がこの流木を避けながら進まなければならない程である。

 ジャングルを流れる川...何となく静かで,きれいな川を想像していたが,現実は異なっていた。この河川が流域住民の生活に密接に関わっている以上,水質改善は課題の一つであろう。その際,考えなければならないのは,例えば我が国の持つ技術をそのままこの地に導入するのではなく,その技術がこの地で適合しているか,また適合させるためにはどのように改良すればよいか,精査することであるように思う。