☆ 重金属イオンの不溶性化合物生成を利用する沈殿除去は,溶解度積の原理に基づいている。すなわち,重金属水酸化物の水に対する溶解度は非常に小さいものが多く,酸性でイオン状態で溶解していた重金属はアルカリで中和すると水酸化物となり沈殿するようになる。金属水酸 化物が沈殿するために必要な条件は,金属イオン濃度と水酸基イオン濃度の積がその水酸化物の溶解度積より大きくなることである。 ☆ 重金属イオンの不溶性化合物生成を利用する沈殿除去は,溶解度積の原理に基づいている。すなわち,重金属水酸化物の水に対する溶解度は非常に小さいものが多く,酸性でイオン状態で溶解していた重金属はアルカリで中和すると水酸化物となり沈殿するようになる。金属水酸化物が沈殿するために必要な条件は,金属イオン濃度と水酸基イオン濃度の積がその水酸化物の溶解度積より大きくなることである。 ☆ 廃液にアルカリを加えて、pHを上げると廃液中の金属Mが水酸化物になり、次の平衡関係が成り立つ。 溶解度積 Ksp =
[Mn+]・[OH−]n、水のイオン積 Kw
= [H+]・[OH−]
から... K' =
Ksp /
(Kw)n ...という式が出てくる。 この水酸化物にアルカリを加えると水酸化物錯イオンを生成し、平衡関係が成り立つ。 水酸化物錯体の平衡定数を K
とすると... ...と表せる。 溶解する重金属の濃度をCMとすると、(1)式及び(2)式から... ...となる。 この式から単純な廃液の溶解する重金属の濃度は
pH で変化する。凝集沈殿法では、操作を行う時の pH
によって反応し具合が変化する。 金属塩溶液に同じ塩を加えると,金属塩が共通塩イオンの影響で金属塩の溶解度が,純水中と比べて小さくなり析出する時がある。水に難溶性な塩の溶解度は、塩を構成するイオンと同じイオンが存在すると一般的に溶解度は減少する。 例えば AgCl、NaCl を含む溶液中で
AgCl の溶解度積を Ksp、溶解度を S、NaCl
の濃度をCNaClとする時... [Cl−] = S +
CNaCl ...と表せる。S = 1.33×10−5
mol/L、Ksp =
1.78×10−10、CNaCl = 1.00×10−2
mol /L の時... ...となる。これを S
について解けば溶解度が分かる。 CNaCl >> S
の時は... ...となる。 このように溶解度は減少する。ただ、共通イオンの量(上記の例でいうとCl−イオンの量)が増えると沈殿は錯体(AgCl2−、AgCl32−など)となる場合もあり、この場合は結果として溶解度は上がる。 一般に、アンモニウムイオン、塩化物イオン、有機化合物が含まれていると、錯体を形成してしまい溶液から分離するのが困難で処理が阻害されることが多い。また、二座配位子のエチレンジアミンなどの有機化合物によって重金属とキレート化
(一つの配位子が金属イオンと二つ以上の結合をしたもの)反応して重金属イオンを安定化し、同じように処理を妨害する。特にアミノ基を持つ化合物が多量にあると重金属の凝集沈殿処理はほとんど不可能となる。
Mn++n
OH−フ M(OH)n
[Mn+]=K'・[H+]n ・・・・・(1)
M(OH)n フ
Hn−1MOn− +
H+
K =
[H+]・[Hn−1MOn−] ・・・・・(2)
CM =
[Mn+] +
[Hn−1MOn−] =
K'・[H+]n +
K / [H+]
[Ag+]
= S
Ksp =
[Ag+]・[Cl−] = S
( S + CNaCl ) =
1.78×10−10
S = Ksp
/ CNaCl = 1.78×10−8 mol/L
参考資料
「岡山大学保健環境センター環境安全部門HP」
「環境用語集:「凝集沈殿」」EICネット
「無機廃液処理の概要」
「大学等における廃棄物処理とその技術」大学等廃棄物処理施設協議会編
「環境教育テキスト」中村以正、山田浩司編
「基礎分析化学」本浄高治ほか