B1201> 迅速共沈濃縮・原子吸光分析による微量鉛の定量法

鉛の排水基準の許容限度は0.1mg/Lと定められており,その検定法にはフレーム原子吸光分析及びICP発光分析などが用いられます。しかし,これらの方法は感度が不十分であり,分離濃縮法を併用する場合が多くなります。

当研究室では,鉛の分離濃縮法として迅速共沈法に注目し,廃水・排水分析への適用を試みています。優れた鉛捕集能を有するリン酸ガリウム共沈法(Fig.1)により廃水・排水中の鉛を捕集した後,沈殿を遠心分離します。ここで沈殿の一部は損失しますが,かまいません。得られた沈殿を溶解し,この溶液中の鉛量とガリウム量とをフレーム原子吸光分析により測定します。最初に加えたガリウム量と測定した溶液中のガリウム量との比と,測定した溶液中の鉛量から,試料溶液に含まれていた鉛量を定量できます。

本法では,ナルゲン製175mL遠心沈殿管(Fig.1中写真)を用いることにより,極めて迅速に廃水・排水中の微量鉛を定量することが可能となりました。

Fig.1 リン酸ガリウムによる鉛共沈に及ぼすpHの影響

【関連論文】

Shigehiro Kagaya, Yasuko Araki, and Kiyoshi Hasegawa, Fresenius J. Anal. Chem., 366(8), 842-845(2000).