B1204)排水中規制元素の同時定量法
工場等の事業場から公共用水域に排出される排水には,水質汚濁防止法に係る排水基準が適用されます。従って,事業場では排水が基準 に合格しているか,検査する必要があります。この際,一度にたくさんの基準項目を評価できる方法があれば便利であることはいうまでもありません。
今回,我々は,イットリウム・ガリウム・マグネシウムの各水酸化物を試料水中で同時に沈殿させ,これらの沈殿に試料水に含まれる 微量元素を捕集する「ハイブリッド共沈法」を開発し,排水中の微量元素定量に応用したところ,排水基準に規定されている9元素を含む13 元素を同時に濃縮し,ICP発光分析 にて一斉に定量できることが確認されました。またこの方法に,我々が研究を進めている内標準併用ー迅速共沈法を適用し,操作を簡便・迅速化することに成功 しました。本法では,微量元素濃縮に要する時間は約20分間であり,操作に熟練を必要としません。本法で濃縮し,ICP発光分析にて定量することにより, 排水基準レベル(サブppmレベル)はもとより,環境基準以下(ppbレベル)の微量元素を再現性よく定量することが可能となります。
Fig. 1 排水採水場所
なお本研究 は,(財)ソルト・サイエンス研究財団より助成を受けて実施しました。
【関連論文】
◇ Shigehiro Kagaya, Tatsuki Sagisaka, Satoshi Miwa, Kazuya Morioka, Kiyoshi Hasegawa, Bull. Chem. Soc. Jpn., 79(5), 717-724 (2006).