B3301> 古紙のリサイクル負荷評価
循環型社会が叫ばれる中,古紙は古くから再資源化が行われていることは皆さんもご存じだと思います。我が国での紙製造における古紙の利用率は年々上昇を続け,2001年には57%に達しています。
Fig. 1 古紙を原料とした手すき紙(この重量で歩留まりを評価)
Fig. 2 インクジェット紙:ほぐれない部分(異物?)が多い
Fig. 3 インクジェット用紙:回収した繊維の顕微鏡写真(100倍)に黒い影が...これは異物か?
しかし最近,インクジェット用紙等,新種の紙の登場により,紙が多様化してきています。皆さんも「この紙,再資源化できるのか?」と悩まれたこともあるのではないでしょうか。
そこで,本研究では,「再資源化の可否」の判断の参考にするため,100種類以上の身の回りにあるありとあらゆる種類の紙を原料と位置づけ,再生紙製造過程を意識しながら歩留まりや製造過程における水質を分析することで古紙のリサイクル負荷を考察し,再生紙原料としての有用性についての評価を試みました。
その結果,合成紙,切符,ガムテープ等は,今回の手法で評価する限り,リサイクルに向かないと判断されました。その他のほとんどの紙においては再生紙製造において決定的な障害を発生させるものはあまり見受けられませんでした。ただし,インクジェット用紙等のように,通常の紙に比べ異物がたくさん混入している紙は,結果としてリサイクル負荷が高いと評価されました。
古紙の再資源化は,紙繊維の再利用です。従って,異物や繊維回収できない紙が古紙原料に混入することは,結果としてリサイクル負荷を高めてしまいます。紙の消費者である皆さんは,購入してからどのようにすればよいかを判断し行動するのではなく,購入前にリサイクル負荷の小さな紙(異物混入の少ないもの)を購入することが重要であると,我々は考えています。
なお,本研究は「とやま古紙再生サークル」事務局 谷口 新一 氏(当時)と共同で,環境事業団平成14年度地球環境基金助成を受け行いました。
Fig. 4 カップ麺のフタ:銀色部分は異物!
Fig. 5 写真:表面はほぐれない! 【関連論文】
◇ 谷口新一, 小松原奈英, 江守久美子, 芹川裕加, 真草嶺郁美, 加賀谷重浩, J. Ecotech. Res., 9(1), 35-44 (2003).
【関連資料】
◇ とやま古紙再生サークル, 「紙のグリーン購入データブック」, 2003.2.