環境分析研究室  
 
   
 
つぶやき2007

あめりかのおもひで


 今から4年ほど前のことである。研究室のドク ターコースの学生とフロリダ州オーランドで開催されたPittsburgh Conference (注1:Pittconとも言う。分析化学系の世界最大規模の国際学 会)に参加したときのことである。
 愛車サターンクーペをクリーブランドホプキン ス空港で乗り捨て,オーランド空港に降り立ったのは夕暮れ迫る時間であった。その足で○○レンタカーの チェックアウトカウンターへ急ぐ。免許とクレジットカードを出し予約していた旨告げると,カウンターの係員は,予約したコンパクトクラスの車は無い,のだ と言う。こんなことはアメリカでは当たり前なのだが,彼は続けて言うのである。実は,フルサイズもスタンダードもミッドサイズもエコノミークラスの車も今 は用意できないと。これはアメリカでも少し珍しい。「じゃあ何 が用意できるんや?」 と関西弁 (注 2:広義での関西弁)で静かに告げると, 彼は少し困った目をして一本の鍵を差し出した。
 鍵につけられたタグの番号を頼りに,レンタ カー会社の駐車場内で車を探し歩く。しかしそれらしい車は見当たらない。タグの番号のスペースに止まっている のは真っ赤なボ ディーマスタ ングの 新車,しかもコ ンバーチブルな のである。半信半疑で鍵に付いているリモコンの解錠ボタンを静かに押してみた。開いた。私はスミサ(注3:ドクターコースの学生)とともに真っ赤なマスタングに飛び乗 り,すっかり日の暮れたオーランドの街に出ると,用も無いのにルート4号線に入りアクセルを踏み込んだのであった。その夜,本来なら空港から車で15分し かかからない宿に到着したのは,それから4時間後であった(注4: 単に道に迷ったという説もある)。

 学会3日目の昼頃,そう,これは学会に参加し た思い出である。会場でK大での恩師S先生御一行と出会った(注5:前もって連絡しあっていたわけではない)。S先生は,これか らお土産を買いにショッピングモールまで行こうと思うとおっしゃる。そこでレンタカーを唯一借りていた私がお送りすることにした。
 一般にアメ車はでかい。従ってマスタングも びっくりするぐらいでかい。もちろん座席も広い…前のほうは。しかし後部座席は狭い(注6:いわゆる2 by 2,大人2人+子供2人あるいは荷物)。しかも,幌の収納スペースが必要なのでコンバーチブルの後部座席はもっと狭い。
 さて,S先生一行は,S先生,若い研究員の方 1名,ドクターコースの学生さん2名の計4名であった。運転席には私,助手席にはS先生が乗られるのは良い として,後部座席に男3人が乗ることは一見不可能のように思えた。しかしここはフロリダである。快晴の3月の心地よい昼下がりである。フロリダではコン バーチブルの帆は必要ない。結局,後部座席の二つのシートに一人ずつ座り,もう一人は折り畳んだ幌の上に座ることで問題を解決した。いわゆるオープンカー というやつである。
 学会会場からショッピングモールまでさほど遠 くはなかった。観光バスが行き交うオーランドの目抜き通りをまっすぐ行けば良いのである。しかし,運転して いる私は途中で奇妙なことに気付いた。行き交う大型の観光バスの乗客がみんなこちらを見ているのである。いや見るだけではなく明らかに手を振っている。ふ とバックミラーを見ると後部座席の三人が半ば立ち上がって大きく手を振りながら行き交う周りの車にアピールしているではないか(注7:若い人のノリには付 いていけない)。確かにアメリカ有数の観光地の目抜き通りで,しかも真っ赤なマスタングのオープンカーの後部座席で3人の奇妙な東洋人が半ば立ち上がって 手を振っていれば観光客は何かの催しものだと思うだろうと半ば納得しながら,バスの観光客に手を振って応えている自分に気が付いたのであった。
 さて,次回のPittconは2008年3月 2日〜7日の間,ニューオリンズで開催されるようである。要旨締め切りは8月初旬とのこと。ちなみに,マス タングのレンタル料は5日間で 約$150だった。
...マスタング,のりてぇ。
 
       

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