ノ ントルエン型研究室

 

    
「研究室のみんな、さようなら。今まで本当にありがとう!!」
 
私は心の中でこうつぶやいた。
 
*****
 
あれは私が就職活動を始めてまだ間もないころ、
生協の食堂で友人の水島病気(仮名)と夕食をとっている時の出来事だった。
 
あの日、久しぶりに食べる揚げ出し豆腐を眺め私はいつになく心を躍らせていた。
しかし、いざ揚げ出し豆腐食べようと箸をのばした瞬間、
ポケットに入っていた携帯電話の着信音が鳴り私の思考は遮られた。
 
「もしもし、どうした?」
 
「○野先輩ですか?さっきK先生が呼んでましたよ」
 
電話をかけてきたのは私が所属している環境分析化学研究室の一つ後輩にあたる南田小樹(仮名)だった。
 
彼の話によると、
どうやら研究室の准教授であるK先生が私を探していたらしく、
私が戻ってきたら先生の部屋に来るようにと伝言を任されたとの事だった。
急のことに私は箸をのばしかけた揚げ出し豆腐を一瞥し、
生協の食堂を後にした。
 
*****
 
その後、研究室に戻った私を待っていたのは研究職を目指す人間にはあまりに非情な健康診断結果だった。
 
【馬尿酸値】
 
それは体内に残存するトルエンの指標となる物質であるのだが、
この数値が異常に高いことを告げられた私は研究室を去ることを覚悟したのだった...。
 
<続く>

 

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