経済・経営データを読む
消費と貯蓄
1.消費と所得の関係(短期)
短期的には、消費Cと所得Yの関係は、単純化すると
@ C=a+b・Y
a>0 基礎消費
1>b>0 限界消費性向
として表される。
つまり、消費は、所得が増加するにつれて増加するが、所得の増加より小さい。
これはケインズ型の消費関数と呼ばれる。
45度
2.消費と所得の関係(長期)
ところが、クズネッツ[1937年]は、アメリカの長期データを用いて、長期には、
消費と所得の関係は
A C=c・Y
として表されるとの結果を得た。(クズネッツはノーベル経済学賞受賞)
3.短期と長期の違いの整合的な説明
短期と長期の消費関数を結びつける仮説
@相対所得仮説(デューゼンベリー)
その後、計量経済学者は「習慣形成仮説」としてモデル化した。
Aライフサイクル仮説(安藤・モジィリアニ)
(モジリアニはノーベル経済学賞受賞)
B恒常所得仮説(フリードマン)
(フリードマンはノーベル経済学賞受賞)
相対所得仮説
消費は現在の所得ばかりでなく、過去の所得の最高水準に依存して決まると
主張する仮説。
Ct=g・Ymax + h・Yt
ただし Ctはt期の消費、Ymaxは過去の所得の最高水準、Ytはt期の
所得であり、1>g>h>0 と想定される。
<含蓄>
所得が増加し続ける時
Ct/Yt=g・(Ymax/Yt)+h
Ymaxは1期前の所得であるから。g・Ymaxは1期遅れの所得に比例する
形で増加し、h・Ytはその期の所得の増加に比例して増加。したがって、消費は、所得が増加し続ける場合、所得にほぼ比例的する形で増加していく。
例えば、毎年5%で所得が増加していくときは、(Ymax/Yt)=1.05
この場合、Ct/Yt=g・(Ymax/Yt)+h=1.05g+h となって一定
値をとり、消費は所得に比例する。
所得が減少するとき
Ymaxは、過去の所得の最高水準であるから、所得が減少していくときは
変化しない。したがって、所得が減少する場合は、消費は、太い実線に
沿った比例的な減少ではなく、矢印のような緩い減少にとどまる。
消費の減少には、歯車(ratchet)に付いているように、歯止めが掛かるという意味で、歯止め効果(ratchet
effect)と呼ばれる。