財政学(Public Finance)

   平成14(2002)年度 昼間主コース(前学期)


<テキスト>  能勢哲也『現代財政学』,有斐閣 <参考書>  ・『図説 日本の財政』(平成14年度版),東洋経済  ・財務省 財務総合政策研究所『財政金融統計月報』財務省印刷局(月刊)    (予算、租税関係の特集号)  ・財務省 『財政の現状と今後のあり方』平成14年1月    (財務省ホームページからPDFファイルをダウンロードできる)     アドレスを       http://www.mof.go.jp/shukei/shukei.htm     としてアクセスすれば、予算・決算のページがでます。     そのページで、[財政の現状と今後のあり方 PDF(2002.1)]     を指定すればよい。
1.財政学講義について  ・講義要綱をもとに説明    財政学は応用経済学の1分野     ミクロ経済学、マクロ経済学との関係    研究対象    テキスト    参考書  ・後期授業科目 応用経済学特殊講義『応用ミクロ経済学』について  ・財務省『財政の現状と今後のあり方』(平成14年1月)    平成14年度の予算、財政赤字の問題等を解説  ・公務員試験講座との関係 2.財政学  ・混合経済    混合経済における公共部門      市場経済においてなぜ政府活動が必要とされるのか?  ・財政学はどういう学問分野か?    公共部門の予算の科学、あるいは公共政策の政府収支の研究     意味:公共部門の経済学であって特に予算を通じた政府の諸        活動を研究対象とする  ・公共部門とはどの範囲を指すのか?     一般政府+公的企業       一般政府:中央政府+地方政府+社会保障基金       公的企業:中央+地方     テキスト:p.3,表1-2参照のこと  ・.政府の規模    大きい政府とか小さい政府とかは何を指標とするのか。      指標の一例: 一般政府総支出/GDP     日本 1998 37.4%     米  1997 33.1     英  1994 44.1     独  1997 47.8     仏  1997 52.1     米  1997 33.1     スウェーデン        1996 63.6    (資料)財務省『財政の現状と課題』,p.19    大きい政府:高サービス、高負担    小さい政府:低サービス、低負担  ・SNAと政府予算の関係    国民経済計算と政府活動の関係は    平成11年度    GDP:国内総生産 5,136,822億円    GDE:国内総支出     GDE=C+I+G+XーM      =民間最終消費支出(56.3)+政府最終消費支出(16.2)       +民間設備投資(14.6)+民間住宅投資(4.0)+公的固定資本形成(7.5)       +民間在庫品増加(△0.2)+公的企業在庫品増加(0.0)       +財貨・サービスの輸出(10.2)+財貨・サービスの輸入(8.6)       ( )内は構成比(%)     政府支出=政府最終消費支出+公的固定資本形成           +公的企業在庫品増加+移転支払い      注意:「移転支払い」は政府の予算に入るがGDEの項目ではない。         移転支払いは、租税等で資金調達した財源を、反対給付を求めない         サービスとして給付するものであり、所得得再分配である。 3.財政の機能  ・政府活動の特質  ・財政活動の機能    R.マスグレイブのアプローチにしたがう。    政治的機能を前提とし、社会経済的機能に注目すると、    財政活動の機能は、     資源配分機能     所得分配機能     経済安定機能    に分類されうる。  ・機能の変遷    テキスト p.148 図9−3         p.150 図9−4    および、第9章の説明文を参照せよ。    ・社会保障関係費、産業経済費、国土保全・開発費、地方財政費、     教育文化費、防衛関係費、国家機関費、の推移と社会経済的拝啓    ・消費、投資、移転支出の推移:補完性と代替性  ・経済構造と財政機能    R.マスグレイブ『財政組織論』(Fiscal Systems,1969)      消費(C)、貯蓄(S)、生産手段(O)、賃金率(W)      私的決定(i)、政府決定(g)     純粋な資本主義制       Ci、総貯蓄Si、Oi、Wi     現代の資本主義制       Ci、総貯蓄Sg、Oi、Wi     自由社会主義制       Ci、総貯蓄Sg、Og、Wi     正統的社会主義制       Cg、総貯蓄Sg、Og、Wg     消費、貯蓄、生産手段、賃金率の決定が経済体制ごとに異なることから、     政府の財政活動もそれに応じて異なりうる。     例えば、資本主義経済では、私有財産制(Oi)であり、消費、貯蓄は私的     に決定される。賃金率は市場で決まる。      以上から、Og、Wgの場合より、所得の格差が拡大しやすい。        所得分配機能が必要とされる。ただし、その程度は政治問題である。      民間部門においては貯蓄と投資が一致する保証はない。        経済全体で、完全雇用とISバランス(I+G=S+T)が維持され        るように総貯蓄を調整する役割(経済安定機能)が求められる。        人口成長、技術進歩を考慮すれば、適正成長の維持も同様に求め        られる。  ・市場の失敗と政府活動    自由市場経済の下で、      完全情報      広範性      完全競争    の条件が満たされると、    市場機構は効率的資源配分を達成する(資源配分はパレート最適になる)。    これらの条件が満たされないならば、市場の失敗が生じる。    市場の機能を補正するための政府による資源配分機能が要求される。    「市場の失敗」     狭義には、市場機構において効率的な資源配分が達成されないことをいう。     広義には、市場機構では公正な所得分配が達成されないという意味での市場     の失敗も含められる。

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