1.財政学とは

(1) 主題  @ C.S.Shoup, Public Finance, 1969:財政学(1),p.3   「政府サービス、補助金、福祉関係給付について論述し分析すると共に、   それに必要な資金を課税、政府借入、外国からの援助、貨幣の創出で賄う   場合の方法について論述し分析する。」  A R.A. Musgrave & P. Musgrave:「財政学 1」,pp.2-3.   「公共部門の経済学であって、資金調達ばかりでなく、資源利用の水準と   配分、さらに消費者間の所得分配に関しても取り扱う。我々の主題は、伝   統的に財政学(Public finance)と呼ばれているけれども、問題の実物的側   面と同時に資金的側面も取り扱うのである。さらに、「公共」経済学の事   柄のみではありえない。公共部門は民間部門との間で相互に作用しあって   おり、双方が分析に入ってくる。支出および租税政策の効果は民間部門の   反応に依存するばかりでなく、財政手段の必要性は、民間部門が公共部門   の存在無くしていかに働くかによって決定される。」   財政学は、公共部門の経済活動の内、予算に関する諸政策を主として研究   する。 (2) 領域  @領域                             公共部門 -----> 予算 -------> 経済活動    分析の3側面   機能的側面、制度的側面、歴史的側面       A解くべき財政問題の例   1.市場経済において何故政府活動が必要とされるのか。   2.政府活動の最適範囲と水準を決定するのは何か。   3.どのような財とサービスを政府が国民・住民に供給すべきか。   4.どれだけ供給すべきか。    政府が供給している財・サービスの水準と種類は、各国によって異なり、    また時代時代で異なる。その要因は何か。   5.どのようなタイプの租税・価格を、費用調達のために、あるいは政府が    生産しない財の配分の問題を修正するために賦課べきか。   6.資金調達において、どのような基準が用いられるべきか。   7.政府が資金調達する場合、租税のかわりに貨幣や公債を発行した場合の    経済効果は。   8.種々の政策の所得分配に対する効果は。   9.財政政策の目標と効果。

2.公共部門の活動の特質

(1) 公共部門の必要性と存在意義  R.A. Musgrave & P. Musgrave:「財政学 1」,pp.2-3.  @市場機構の法的保護    市場の機能に必要な契約や交換の調整は、法律によって与えれる政府の   保護や強制なくしては存在し得ない。  A自由競争条件確保のための情報提供   市場メカニズムが効率的資源配分ををもたらすためには要素市場と生産   物市場が競争的であることが必要。由参入と完全情報が前提となる。これ   らの諸条件が保証されるためには、政府の規制その他の手段が必要である。  B市場の失敗に伴なう財の提供   競争市場の全ての障壁が取り除かれたとしても、市場を通じては   供給され得ない一定の財の生産や消費が存在する。  C完全雇用・物価安定・経済成長   市場組織は、必ずしも高雇用水準と物価水準の安定をもたらさない。こ   れらの目標の達成には公共政策が必要となる。  D異時点間の資源配分(社会的割引率)   現在消費に対し将来消費を価値付ける割引率は公的視点と私的視点では   異なる。  E所得・富の再分配   市場組織および遺産を通じての財産権の移譲から生じる所得および資産   の分配は、社会的価値から調整が要請される場合もある。 (2) 公共部門の活動の特徴   現代の先進資本主義諸国の経済社会は、民間部門と公共部門からなる混合   経済(Mixed Economy)である。              民間部門      公共部門                                       活動の動機  自己の利益     社会的欲望の充足             効用・利潤極大   社会的厚生の最大化                                       意思決定   私的意思決定    集合的意思決定                                       資源配分様式 市場的配分     非市場的配分                                       制度     自由経済      強制経済             財産権       財政権                                    C.S.Shoup, Public Finance, 1969:『財政学(1)』,p.3   @ 強制性(課税)   A 非個別的規制   B 非市場的サービスの供給・・・郵便   C 市場の不完全性の是正 ・・・公的生産(専売制度) (3) 財政の機能   R.Musgrave    @ 効率的資源配分機能    A 所得分配の平等化機能    B 経済の安定化機能   政府の財政的機能を含むより一般的な政府の役割については、   W.Friedman:寺戸 訳『現代経済と国家の役割』(日経新書)を参照。    @ 提供者としての機能      最低限度の福祉の提供者としての国家の役割    A 規制者としての機能      契約、財産の自由の規制、独占禁止、環境規制、為替管理    B 企業家としての機能      公社、公庫、郵政    C 審判者としての機能      仲裁者・・・部門間の公正 (4) 財政機能の変遷        「夜警国家」======>「福祉国家」=====>「小さな政府」=====>??   「安価な政府」             R.レーガン     アダム・スミス           M.サッチャー      A.Smith, 『国富論』(1776)       「夜警国家」、「安上がりの政府」を主張。       政府の役割は、一般行政、司法、国防、土木に限定される。       政府のサービスを基本的に消費的経費とみるからである。      A. Wagner(1898)       社会政策的観点を重視

参考文献

<現在、学部の講義で使用しているテキスト・資料>  能勢哲也『現代財政学』(有斐閣)  『図説 日本の財政』<各年度版>(東洋経済)  『図説 日本の税制』<各年度版>(財政詳報社) <その他> 石 弘光『財政理論』有斐閣 ,1984. 本間 正明編著『ゼミナール現代財政入門』日本経済新聞社,1990. 山田・中井・他『財政学』有斐閣,1992. 貝塚・石・他編『シリーズ現代財政 1・2・3・4』  有斐閣,1990-91.