「奇妙な論理I、II」

「奇妙な論理I、II」

M. ガードナー 著、市場泰男 訳
社会思想社

 これは疑似科学と疑似科学者を扱った本である。では、疑似科学とは何か。それは、思い込みと奇妙な論理によって正統な科学から逸脱したマッドな科学である。本書には地球が平らであることや中空であることを信じる人たち、不思議な霊的治療法の伝導者、進化論に反対する人々など、奇妙な理論を携えた様々な「奇人」達が登場する。

 面白いのはこうした奇人達には共通した特徴があることだ。彼等は自信満々で、自らを不遇の天才と確信している。世の中で彼等の理論が受け入れられないのは、「正統な」科学者が彼らを不当に差別しているからだと信じている。彼等の理論が間違っているからなどとは思いつきもしない!大抵、彼等は自分をガリレオになぞらえる。確かに、地動説も最初受け入れられなかったが、ガリレオ一人に対して数えきれない「本当に間違っていた人」がいるのである。

 本書の中で特に印象に残っているのはウイルヘルム・ライヒである。彼はもともと精神病理学者で初期の精神分析学に貢献のあった人なのだが、その後、「性的エネルギー」を発見し、「生物物理学者」になった。彼は赤血球が「性的エネルギー」を吸収して青く光るのを観測している。思い込みはなんでも見えるようにしてしまう!(この辺は我々も肝に命じておく必要がある。実験に過度の思い込みは禁物である)彼の理論は生物物理にとどまらず飛躍し、宇宙論にまで到達する。彼は星雲の成り立ちも「性的エネルギー」による宇宙的抱擁!のためだと説明している。(こうした疑似科学に特徴的なのは説明と証明の区別がつかないことである。)

 さて、この本はアメリカの奇人しか扱っていないし、少々古い。しかし、現在でも怪し気な理屈をふりまわす奇人達は世に満ちあふれている(疑似科学ではないが、疑似科学的な言い回しをする怪し気な新興宗教もこの範疇に含まれる)。この本で奇人達の生態にふれておくことは意味のあることだろう。なお、現代日本の疑似科学者の生態については別冊宝島334「トンデモさんの大逆襲」がお勧めである。

(この文章は名大ジャーナル1998年5月20日号「教官お勧めの一冊」に掲載された文章に手を加えたものです。)


なんかうまく書けなくて”証明”なんて書いてしまったんだけど、当然、科学は演繹的な学問ではないので”証明”はできない。でも、科学的理論は実験的に検証(これも100%の検証はできないわけだが)がされなければならない。それが、できない、あるいは、まったくない理屈を、アナロジー的に説明ができただけで正しいと思ってしまうところが疑似科学の特徴のようだ。

それでは科学と疑似科学はどこで見分けられるのか?それは
ここを見て下さい。
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