関数を「級数」で近似するという手法は、数学的にも重要であるのみならず、「測定誤差」から逃れることの出来ない実験系の諸分野においては、「真の値の近似値を求める」という意味で極めて重要な意味を持っている。
級数の代表的なものは、ベキ級数展開(Taylor 級数)であろう。関数
f(x)
の x=a
における Taylor
級数は、x
が a
に近い場合には、近似する次数が低い場合であっても、 f(x)
の値の極めて良い近似値を与えることが多い。例えば、以下に示す
exp(x)
の x=0
における Taylor
展開では、exp(0.1)
の真の値が、Taylor 級数の 5
次の項までの和で、小数点以下 7 ケタまで近似されている。
exp(0.1)
の真の値 = 1.1051709...exp(x) = 1 + x + 1/2 x^2 + 1/3! x^3 + 1/4! x^4 + 1/5!
x^5 +...
の x=0.1
での値:
n |
n 次の項までの和 |
1 |
1.1000000... |
2 |
1.1050000... |
3 |
1.1051666... |
4 |
1.1051708... |
5 |
1.1051709... |
このように、Taylor 級数は x
が a
に近い値の場合には良好な近似を与えるが、x
が
a
から離れるに従って近似の精度は一般に非常に悪くなっていく。このことは、
f(x)
には何の制限もないため、全ての
x
において良い近似を求めること自体、もともと無理であるx
→±∞ のとき、必ず ±∞
に発散する。という2点からも当たり前のことであると言えよう。
では、f(x)
に何らかの制限を与えて、多項式以外の適切なものの級数で
f(x)
の近似式を与えることは出来ないだろうか?
その答の一つが、Fourier 級数である。
Fourier 級数は、f(x)
が周期関数であるときに、代表的な周期関数の cos
や
sin
を用いた級数で f(x)
を近似する手法であり、自然現象にあらわれる様々な周期的現象(音波、振動、心電図、脳波など)を記述する際に極めて有用なものと言えよう。