富山大学工学部 知能情報工学コース 臨床光情報工学研究室 laboratory for Clinical Photonics and information Engineering

  • 臨床

基本情報

臨床光情報工学研究室は、手術中の診断法の確立や、病気の診断、治療法についての研究を、情報工学と光を用いて行っています。 私たちの研究室では、ラマン分光法や光線力学療法などの最先端技術を駆使し、がんなどの病気に対する新しいアプローチを探求しています。 私たちの目標は、情報工学を活用し、より効果的で精密な診断・治療方法の開発を行うことです。

News & Topics

研究紹介

術中診断への応用に向けた消化器疾患のラマンスペクトル解析

Research thema

私たちの研究室では、消化器がん(食道・胃・腸など)のリンパ節転移に対する新たな診断方法の開発を行っています。 リンパ節転移の診断は、がんの進行状況を把握し、最適な治療方針を決定する上で不可欠です。 しかし、従来の診断方法では正確な判定が難しく、多くの場合、がんの手術時に周辺のリンパ節を広範囲にわたって切除するリンパ節郭清が行われます。 これにより、患者さんの負担が増し、リンパ浮腫や感覚異常などの合併症が生じるリスクがあります。 そこで、患者さんの負担を軽減しつつ、リアルタイムで診断を行う手法としてラマン分光法に着目しました。 ラマン分光法は、光を物質に照射した際の散乱光を解析することで、分子レベルで物質の特性を評価できる分光法です。 生体組織の化学的情報を非侵襲的に取得できることから、医療診断への応用が期待されています。 本研究では、特に手術中の迅速な診断への応用を目指し、ラマン分光法を用いたリンパ節の良悪性判別技術の確立に取り組んでいます。 具体的には、ラマン分光データを用いた統計的解析や機械学習を活用することで、高精度な判別モデルの構築を進めています。 また、ラマンプローブの設計や測定環境の最適化を行い、臨床現場での実用化に向けた検討を進めています。

転移性肝癌におけるFUT8の役割の解明と外科治療への応用

Research thema

癌細胞の肝臓への転移は様々な癌で起こる可能性があり、特に消化器系の臓器から肝臓への転移が多いです。 大腸癌から転移したがん細胞の内、56%が肝臓に転移していることが判明しています。 癌の特徴の1つとして糖鎖修飾の異常が挙げられます。 これは、糖転移酵素の発現の変化によって引き起こされ、FUT8もその酵素の1つです。 このFUT8は肺癌、膵癌、乳癌、前立腺癌および甲状腺癌で発現量の増加が見られ、癌の転移、浸潤に関連していることが報告されています。 私たちの研究室では、未だ報告されていない転移性肝がんとFUT8との関連性について調べ、FUT8の役割を解明することを目的として研究を行っています。 この研究では、バイオインフォマティクスを用いてコアフコシル化されたタンパク質の解析を行っています。 これにより、がん細胞がどのようにして他の臓器へと転移しているかを解明します。 研究の結果、リンパ節転移とFUT8の高発現は関連していることが示唆されました。

近赤外超短パルスレーザーを用いた多光子励起によるALA-PDD/PDTのin vitroおよびin vivo解析

Research thema

癌細胞が腹腔内に撒き散り、腹膜に定着・増殖した状態である、胃癌腹膜播種。 その治療法としては主に抗がん剤による化学療法ですが完治することは難しく、有効な治療法がないのが現状です。そこで新たな治療法として、光感受性物質と光を用いる光線力学療法。PDTが注目されています。 光線力学診断(PDD : Photodynamic Diagnosis)および光線力学療法(PDT : Photodynamic Therapy)は、侵襲性が低いことから癌の診断や治療において優れた方法の1つとして考えられています。 PDTに関する研究の多くは、新規化合物による光感受性物質の開発例が多数報告されていますが、新規薬剤は生体応用の可否や薬剤としての認可が厳しいという懸念点もあり、実用化まで非常に多くの時間がかかります。 そこで、我々の研究室では光に着目し、2光子励起を利用したPDTの実用化を目指しています。 2光子励起の特徴を踏まえ、PDTに応用することで、腫瘍細胞のみに照射が可能で正常な周辺組織への影響が軽減することや、近赤外光を使用出来ることで生体安全性や組織深達度の向上が期待されます。 本研究では、光感受性物質の励起過程で多光子励起現象を利用し、生体安全性や治療深度の向上を検証し、PDDおよびPDTの適用拡大の可能性を調査しています。

メンバー紹介

大嶋 佑介

大嶋 佑介 教授

Oshima Yusuke, Professor

略歴

2017-2018年 愛媛大学医学部附属病院助教

2018-2019年 東北大学大学院医工学研究科学術研究員

2020-2024年 富山大学学術研究部工学系准教授

2024-現在 富山大学工学部特命教授

学位・資格等

博士(理学)

専門分野

ライフサイエンス/医用システム

医用光学/バイオイメージング/生体情報学

竹谷 皓規

竹谷 皓規 未病研究センター特命助教 (杉谷キャンパス所属)

Taketani Akinori, Associate Professor

略歴

2018年-2019年 関西学院大学理工学部 助教

2019年‐2021年 理化学研究所 研究員

2021年-現在 富山大学未病研究センター 特命助教

学位・資格等

博士(理学)

専門分野

生体機能光学解析/生物分析化学

M2

戸田 航輔

プロフィール

出身地 兵庫県

研究内容 軟骨・靭帯のラマンスペクトル解析と関節鏡への応用

M2

布目 遼平

プロフィール

出身地 富山県

研究内容 術中診断への応用に向けた消化器疾患のラマンスペクトル解析

M2

三宅 龍馬

プロフィール

出身地 石川県

研究内容 マウス組織のラマン解析による皮膚の老化メカニズム解明

M2

村上 祐樹

プロフィール

出身地 石川県

研究内容 ラマン分光法を用いたAQP1の機能解明

M1

加藤 慧希

プロフィール

出身地 愛知県

研究内容 多光子励起顕微鏡を用いた大腸がん遠隔転移モデルの解析

M1

布施 光翼

プロフィール

出身地 新潟県

研究内容 多光子励起と5-ALAを用いた光線力学療法の適用拡大

M1

松本 千寛

プロフィール

出身地 岐阜県

研究内容 ラマン分光法による新たな病理診断技術の開発

B4

石黒 哲己

プロフィール

出身地 富山県

研究内容 医療用ラマンプローブの開発

B4

近藤 直輝

プロフィール

出身地 愛知県

研究内容 光イメージング技術によるがん転移メカニズムの解明

B4

谷原 遥

プロフィール

出身地 京都府

研究内容 がんのリンパ節転移を術中に判別するアルゴリズムの開発

B4

村家 啓太

プロフィール

出身地 富山県

研究内容 ラマン分光法による大動脈瘤診断マーカーの同定

B4

MUHAMMAD HELMI BIN ROZAIN

プロフィール

出身地 マレーシア

研究内容 疾患検出のためのリアルタイム・ラマン分光分類ソフトウェアの開発

研究業績

アクセス Access

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共同研究先リンク

富山大学 和漢医薬学総合研究所 未病分野 こちら

大分大学 医学部消化器・小児外科学講座 こちら

愛媛大学 大学院医学系研究科 整形外科学講座 こちら

富山大学工学部 知能情報工学コース

臨床光情報工学研究室

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