発光スペクトル測定システム

 物質が発する光の中にはさまざまな波長(エネルギー)の光が含まれています。これを光の波長に対して強度を図にしたものが発光スペクトルです。発光スペクトルを解析すると、励起状態の分子構造が分かります。また、物質が吸収した光子数と発光光子数の比を表す発光量子収率という量がありますが、この数値が1に近いほど優れた発光体ですので、正確な発光量子収率を決定するのは非常に重要な光物性測定の1つです。ところが、正しい発光スペクトルの測定は吸収スペクトルほど簡単ではありません。正確で信頼できるスペクトルを得るためには、測定装置の感度校正を厳密に行う必要があります。我々の装置は、特に長波長域(350〜1700nm)の 発光スペクトルを正しく観測するために設計し製作したものです。光学素子の経年劣化を補正するために、年一度、標準ランプを用いて感度校正を行っています。装置全体は2重の暗室の中に置かれており、励起光は暗室の外にあるXeランプの光を改造した古い蛍光計(MPF2、日立)で分光し、液体ライトガイドを通して導入しています。また市販の装置のように試料室というものがないので、大きなクライオスタットなどを置くこともでき、どのような条件下の測定も行うことができます。更に、マブチモーターと黒いフイルムケースで作ったKasha型ホスホロスコープを使うと、有機化合物のリン光スペクトルを蛍光スペクトルから分離して観測することができます。