1. リボザイム (RNA酵素)


「リボザイム」とはリボ核酸(RNA)を素材とする生体触媒(酵素)(Ribonucleic acids + Enzyme)を意味する造語である。 原始生命の時代から、リボザイムは生命の中心的な役割を果たしていたと考えられている。 現代の細胞システムにおいても、タンパク質の合成(翻訳)や遺伝子の多様化・発現調節(スプライシング)など重要な生命反応がリボザイム(正確にはRNAを主役とする酵素)により行われている。 これらはすべて重要な生命にとって重要な化学反応であるが、その反応の基質の種類は限られており、 天然のリボザイムはいずれもRNAリン酸ジエステル結合の切断・交換反応、ペプチド結合の生成反応のいずれかを触媒する。

任意の反応を促進/制御できる生体触媒を自在に創製することは、化学者や生命科学者が目指す大きな目標です。 RNA研究の分野でも多様な反応を触媒する人工リボザイムを生み出す研究が活発に行われて来た。。 私たちの研究室でも、効率的にリボザイムを創製する「デザイン&セレクション」法を開発し、 RNAの連結反応を触媒する2つのリボザイム(DSLとYFL)を創製しました。 DSLやYFLは、触媒ユニットを除けば立体構造の大部分が既知であることが、従来の進化分子工学法で創製された人工リボザイムとは大きく異なる。 その特色を利用し、立体構造に基づいて機能を改変・向上することが簡便に可能である。 我々はこの「デザイン&セレクション」法を駆使して、 天然のリボザイムと同等またはそれ以上の高度な機能を持つリボザイムを創ることを目指して研究に取り組んでいる。


DSLリボザイムの3次構造モデル:GAAA(赤)-11ntレセプター(緑)と三重鎖(青)により構造が形成される。
これにより、反応点(黄)付近に触媒ユニット(紫)が近接する。

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