2023年11月15日

AIを用いた富山県道路カメラ画像の積雪判定 


富山大学都市デザイン学部地球システム科学科

准教授 立石 良

ryo@sus.u-toyama.ac.jp


1.概要

2023年現在,富山県は道路の積雪状況を確認するためのカメラを159台設置している

・このカメラの画像は富山県のホームページ(https://www.toyama-douro.toyama.toyama.jp/index.html)で公開されており,10分ごとに更新されている

・本研究では,このカメラ画像から,積雪の有無を判定するAIモデルを構築した

・このAIモデルを用いた積雪判定結果は20231115日より,前述のホームページ上で公開されている

・本ページでは,このAIモデルの解説を行う


2.手法

2022年11月~2023年2月の富山県道路カメラ画像を用いて,雪あり・雪なしの画像パターンを学習したAIモデルを構築した

・学習と推論にはMask R-CNN (He et al., 2019) を使用した

・モデルの良さは「雪あり」と「雪なし」の画像に対する正解率で評価した

 ・「雪あり」と「雪なし」の画像に対する正解率を両立することが望ましい

・推論・検証

 ・構築したAIモデルを用いて,学習用画像を含まない検証用画像の推論(積雪判定)を行った

 ・道路の全面に雪がある画像・道路の一部に雪がある画像・道路に雪のない画像の正解率を比較した


3.結果

・学習用画像

 ・雪あり・雪なし合計427枚

・検証用画像

 ・雪あり:全面100枚,部分的100枚(昼夜画像)

 ・雪なし:200枚(昼夜画像)

・評価

 ・平均的に85%程度の正解率が得られた(表1)

 ・雪あり・なしに関わらず,道路の輪郭を概ね正確に抽出できている(図1)


表1 推論の結果

正解率

平均

雪なし

雪あり・全面

雪あり・部分的

85.5%

100.0%

72.0%

70.0%


Examples of Mask R-CNN

1 推論の結果の例


4.今後

・今年度の判定結果を踏まえ,来年度以降もAIモデルの精度向上に務める

・同様の手法を用いて,積雪以外の道路状況を把握できないか検討する


5.謝辞

 本研究を進める上で,多くの方々にご協力いただいた.富山県土木部道路課雪対策係殿には,道路カメラ画像の使用を快諾いただいた上,本研究で構築したAIモデルを公開する機会をいただいた.㈱NTTデータ北陸殿には,AIモデル構築にあたり,多大な技術的助言をいただいた.

 本研究は,富山大学都市デザイン学部地球システム科学科 西嶋音々さんが卒業研究として行ったものである.


6.引用文献

He, K., Gkioxari, G., Dollár, P., Girshick, R., Facebook AI Research (FAIR), Mask R-CNN, ICCV, 

(https://doi.org/10.48550/arXiv.1703.06870)