大藤研での研究生活マニュアル


一般的な注意書きの後に,各学年の主要な課題と年間研究プラン例を記します.
3年生(プレ卒) 4年生(卒論) 博士前期課程1年生 博士前期課程2年生(修論) 

 以下は,大藤研の学生への研究指針である.研究とは本来自由な環境のもとで行われるべきものなので,以下の指針に必ずしも従う必要はない.(こんなもん,本当は書きたくないっ!) しかし,大学生あるいは大学院生として恥ずかしくない程度の知識と判断力を身につけ,大藤研で満足なプレ卒,卒論,修論(,および博論)を書くためには,おそらく下記の指針に従う程度(プラスα)の努力が必要になると思う.先輩の赤裸々な声を聞くことをお奨めする.

日 常 生 活 一 般

“勤務”時間:せっかく机を与えられたのだから,余程の理由がない限り,月曜日〜金曜日の 9:0018:15(食事や雑談の時間を除いて8時間)は大学で研究に専念すること.

一日一発見:毎日毎日,何らかの小さな目標を持たないと,研究は進展しないものである.そこで,教科書や論文を読む過程で,また野外調査において,一日一発見をして大藤にメールで知らせてほしい.その日に新たに得た知識や,疑問点の考察結果を知らせてくれてもいいし,野外調査での発見を伝えてくれてもいい.一日一発見を積み重ねて,年間 250 以上の発見ができれば,研究は相当進展するのではなかろうか?

2割8割の原則:これから色々と締切に追われることが多くなると思うが,仕事では2割8割の原則を守るよう努力しよう.与えられた時間の初めの2割で,仕事の8割を片づけてしまうのである.雑でも構わないので,2割の時間で仕事の骨組みを完成させ,残りの8割の時間で丁寧に仕上げをする.これは,良い仕事を時間通りに完成させるための原則である.会社に入ってからも,重要な心がけとなる.(書きながら,筆者自身忸怩たる思いがあるが...)

研究計画を立てよう:自分なりに,長期(1年)・中期(3〜4ヶ月)・短期(1ヶ月〜2週間)の研究計画を立てよう.ただし,計画は小修正可能な,余裕を持ったものにすること;ゼミの発表,集中講義や,巡検などが突然入ることもある.計画に余裕を持たせる最善の方法は,仕事を早め早めに片づけることか........?

コミュニケーションを大切に:学生どうしで,自分のフィールドの地質を積極的に紹介しあい,議論をすることが望ましい.他人との議論は,新たな問題点やアイデアの発見につながる.時間があったら,学生間で自主巡検を企画して,色々な地質を見学するのもよい.また,分からないことはその場で解決すること.自分で調べても分からなかったら,恥ずかしがらずに他の人に質問しよう.さらに心配事,相談事,新たなアイデアなど,大藤に遠慮なく聞かせて下さい.兄貴分のつもりで何らかの力にはなります.

3年生の主要な課題(行事)と年間研究プラン(例)

重 要 課 題

プレ卒:進論後の地質調査法実習3単位のこと.進論の上級編で,しっかりした露頭観察と地質図作成ができるようになることが目標.決められた地域を一人(ないし二人:検討中)で調査し,報告書(進論+薄片観察程度)を提出.プレ卒提出締切2月中旬(卒論締切日)

予察報告:5月中〜下旬頃を予定.詳しくは,この辺を参照のこと.
最終報告:4年生の4月下旬頃を予定.詳しくは,この辺を参照のこと.

演 習:地質学演習2単位のこと.英文 100 ページを理解しやすい日本語に訳し,レポートとして提出する.3年次での演習の課題は,平易な一般地質学の教科書になる可能性が大きい.演習提出締切2月中旬(卒論締切日)

演習報告:4年生の5月下旬頃を予定.詳しくは,この辺を参照のこと.

長期巡検:地質学巡検III・3単位の8割.長期巡検とその準備には,1ヶ月弱の時間を取られる.まず,巡検地域の文献調査をしてガイドブックを作り(以上,2〜3週間),10日間の巡検に出かける.平成13年度は,9月下旬に北海道および北上山地へ行く予定である.巡検参加に先立って,地質学の基礎と列島地質の概要はマスターしていて欲しい.

3 月(2年生)

4 月(ここから3年生)

5 月

6 月 〜 7 月

夏 休 み

1 0 月 中 旬 〜 1 1 月 中 旬

1 1 月 中 旬 〜 1 2 月 中 旬

ク リ ス マ ス 〜 冬 休 み

1 月 〜 2 月

 泣いても笑っても,プレ卒と演習を仕上げなければならない.重複するが締切は以下の通りである.自分の仕事が終わったら,ヒィヒィ言っている先輩たちを手伝うこと.

3 月 (前年と同じ)

4 月 (いよいよ4年生)

5 月 G W 後 〜 下 旬 :演習報告が課せられる.

4年生の主要な課題(行事)と年間研究プラン(例)

重 要 課 題

卒 論:卒業論文12単位のこと.しっかりした露頭観察と地質図作成+αのデータを出した上で,自分が見た重要露頭や自分の調査地域が,日本列島の地質あるいは地史の上でどの様な位置を占めるのか十分議論できるようになることが目標.決められた地域を一人(ないし二人:検討中)で調査し,論文を提出する.プラスαのデータについては後述するが,データを出す基礎となる講義や実験を,3年次までに履修していることが望まれる.卒論提出締切2月中旬

予察報告:5月中旬〜6月上旬頃を予定.詳しくは,この辺を参照のこと.
中間報告:10月中旬〜11月上旬頃を予定.詳しくは,この辺を参照のこと.
最終報告:1月中〜下旬頃を予定.詳しくは,この辺を参照のこと.

演 習:地質学演習2単位のこと.英文 100 ページを理解しやすい日本語に訳し,レポートとして提出する.3年次に演習を済ませた学生は免除.4年次での演習の課題は,やや専門的な教科書または卒論調査地域に関する主要論文になる可能性が大きい.演習提出締切6月末日

演習報告:6月中〜下旬頃を予定.詳しくは,この辺を参照のこと.

*卒論のプラスαの例

 例年,下記のようなデータを,卒論のプラスαのデータと認めている.下記以外の内容でも相談に応じる.どれも楽ではない.

  • 微化石抽出・時代決定:チャート,珪質泥岩などの珪質細粒堆積岩が多く分布する地域では,それらの岩石の表面を希フッ酸(3〜5%)で溶かし,放散虫やコノドントなどの微化石を抽出する.抽出した化石の電子像を EPMA で撮影し,自分なりの鑑定をし,専門家に正式な鑑定を依頼する.ここまでを12月中に済ませる.保存良好な化石を多産する試料や,時代決定にもう一歩の試料については,年明け早々に複数回処理して,再度鑑定を依頼することもある.細粒岩 100 試料の処理がノルマ.化石を含まない試料があってもしかたないが,なるべくルーペで化石が見える試料を厳選して処理すること.層序学実験を履修していることが望ましい.
  • 大型化石:大型化石を多産する地域では,化石をクリーニングして写真撮影し,自分なりの鑑定を経て,専門家に正式な鑑定を依頼する.ここまでを12月中に済ませる.大型化石を発見するのは困難なことが多いので,取りあえず 20 個体の処理をノルマとする.層序学実験を履修していることが望ましい.
  • 岩石・鉱物の機器分析:氏家先生を催促して,前期に4年生向けの講義を開講してもらい,履修する.10月末までに,氏家先生や氏家先生の学生(岩石軍団)に相談して,分析の手順を決める.自分の調査地域の新鮮な火成岩試料を XRF で分析したり,火成岩中の鉱物を EPMA で分析したりして,その火成岩の形成場に関する情報を得る.実際に分析が終了するのは,早くて年末.10 試料の分析がノルマ.
  • 古地磁気:調査地域の堆積岩試料を定方位採取し,堆積時の古緯度および堆積後の回転角を求める.これは地球圏物理学講座の機器を使わせてもらうので,広岡先生や酒井先生とよく相談して,必要な講義・実習・ガイダンスを必ず受け,機器の使用許可を受けた上で作業にはいること.地球圏物理学講座の学生の作業を邪魔しないように,10月中に8割の作業が済んでいることが理想.5 地点で議論に値するデータを出すことがノルマ.
  • 変形解析:変形構造をしっかり記載することは,後述のようにプラスα以前の問題だが,次の様な労力のかかる作業については,大藤が有益と認めた場合プラスαと認定する.(1) 調査地域の 200 地点で歪解析を行い,歪分布図を描いた.(2) 調査地域の 200 地点で剪断センスを決定し,流動パターンを解明した.(3) 一つの露頭または試料で,200 地点以上のデータから歪分布図を描き,歪集中の原因を考察した........ 200 がマジック・ナンバーである.

3 月 (3年生)

4 月 (ここから4年生)

5 月

6 月

7 月

夏 休 み

1 0 月 中 旬 〜 1 1 月 中 旬

1 1 月 中 旬 〜 1 2 月 下 旬

ク リ ス マ ス 〜 冬 休 み

1 月 〜 2 月

 泣いても笑っても,卒業論文を書き終わらなければならない.お互い助け合って,がんばって下さい.以下に,主な行事を列挙します.下記以外に,1月中旬にセンター試験があって,2日間構内に入れなくなります.要注意.また2月の第1週には,博士前期課程の院試(2次募集)がある場合があります.その気のある方は受験して下さい.大変,忙しい時期ですけど........

3 月 (前年と同じ)

M1の主要な課題(行事)と年間研究プラン(例)

重 要 課 題

修 論:地球科学特別研究14単位のこと.しっかりした露頭観察と地質図作成+2αのデータを出した上で,日本列島の地質あるいは地史の上での何らかの新知見を出せるようになることが目標.地質図も,岩質分布だけではなく,変形の強さや様式の分布まで図示して欲しい(変形構造は,唯一目に見えるプレート運動の実体!).ただし,「華のM1」にはそれ程重い任務があるわけではない.自分のフィールドだけでなく関連する地域を広く調査・見学しておくとよいであろう.修士研究中間報告2月中旬

予察報告:5月中旬〜6月上旬頃を予定.この辺を参照のこと.
研究報告:10月中旬〜11月上旬頃を予定.この辺を参照のこと.
修士研究中間報告:2月上旬頃を予定.この辺を参照のこと.

演 習:ゼミナール4単位のこと.英文 200 ページを約 100 ページの理解しやすい日本語にまとめ,レポートとして提出する.修士演習の課題は,修論テーマに関連した海外の主要論文になる可能性が大きい.演習提出締切2月中旬(卒論締切日)

演習報告:M2の4月中〜下旬頃を予定.詳しくは,この辺を参照のこと.

必修講義:地球科学特論2単位のこと.地球科学科の全教官が,年毎に決まったテーマに関する話題を1コマずつ提供する形式の講義.院生の方から早めに要請しないと,毎週1コマの時間割を組まれてしまい,フィールド研究中心の院生はフィールドに行きづらくなり不利になる.M1前期

必修実験:地球科学特別実験2単位のこと.修論指導教官以外の教官について行う実験.45時間の実験と,発表会での20分間の発表がノルマ.自分の修論テーマに特に関連した実験テーマを選ぶとよい.大したことないようだが,実際やってみるとかなりの重労働らしい.必修実験発表会7月中〜下旬

発表会:7月中〜下旬頃を予定.詳しくは,この辺を参照のこと.

その他の講義・集中講義:毎年,講義2科目4単位,集中講義2科目2単位くらいの講義を受け,その準備に追われることになる.修士研究との時間のバランスに気をつけて,しかも必要単位数を欠かさぬように,講義を履修しよう.

*修論のプラスα:原則として卒論のプラスαの2倍の作業をもって,修論のプラスαとする(例:微化石抽出なら 200 試料).修論はプラス2αが原則なので,2年間で卒論の4α分の作業が必要となる.まあ,当然といえば当然か........?

3 月 (4年生)

4 月 〜 7 月 (ここからM1)

夏  休  み

1 0 月 中 旬 〜 1 2 月

1 月 〜 2 月

 修士研究の中間報告があります.11月の談話会発表を参考に,15分の話をまとめ上げましょう.演習締切も,2月中旬

M2の主要な課題(行事)と年間研究プラン(例)

重 要 課 題

修 論:地球科学特別研究14単位のこと.しっかりした露頭観察と地質図作成+2αのデータを出した上で,日本列島の地質あるいは地史の上での何らかの新知見を出せるようになることが目標.地質図も,岩質分布だけではなく,変形の強さや様式の分布まで図示して欲しい(変形構造は,唯一目に見えるプレート運動の実体!).修士論文提出締切2月上旬

修論構想:7月中旬頃を予定.この辺を参照のこと.
研究報告:11月中旬頃を予定.この辺を参照のこと.
修士研究最終報告:2月上旬頃を予定.この辺を参照のこと.

その他の講義・集中講義:毎年,講義2科目4単位,集中講義2科目2単位くらいの講義を受け,その準備に追われることになる.修士研究との時間のバランスに気をつけて,しかも必要単位数を欠かさぬように,講義を履修しよう.

*修論のプラスα:原則として卒論のプラスαの2倍の作業をもって,修論のプラスαとする(例:微化石抽出なら 200 試料).修論はプラス2αが原則なので,2年間で卒論の4α分の作業が必要となる.まあ,当然といえば当然か........?

3 月 (M1)

4 月 〜 7 月 (ここからM2)

夏  休  み

1 0 月 中 旬 〜 1 2 月

1 月 〜 2 月

 泣いても笑っても,これが最後.修論を書き上げ修論発表会・修論審査会に挑もう.2月上旬の博士後期課程の2次募集に応募する人は,更に忙しくなるが頑張って下さい.

3 月 (例年と同じ)

以 上  大 藤 でした


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更新日:2000 年 11 月 24 日