第9回富山応用数学セミナー
講演情報
確率遺伝子発現の厳密解とデータ解析への架橋
概要
本講演では、点過程を用いた確率遺伝子発現モデルの厳密解析と、その単一細胞データ解析への応用について紹介する。 対象とするモデルは、オン・オフ機構をともなうバースト型生成と消滅からなる確率過程であり、遺伝子発現のゆらぎを記述する基本的枠組みである。 まず、一般化Fokker–Planck方程式を導出し、そのラプラス変換が一般超幾何微分方程式に帰着されることを示す。 この方程式を厳密に解析することにより、定常確率密度関数が一般超幾何級数を用いて明示的に表されることを示す。 さらに、解析接続を用いることでラプラス逆変換を実行し、確率分布の閉形式表現を得る。 後半では、得られた厳密解を用いた単一細胞RNAシークエンスなどの実データの解析への応用について議論する。 特に、ベイズ推定を通じて、実験的に直接測定することが困難な遺伝子発現制御パラメータの推定が可能となることを示す。 これにより、遺伝子発現のダイナミクスをデータから定量的に解釈するための新たな手法が得られる。 最後に、応用数学とオミクスデータ解析の接点における今後の課題と展望について述べる。