合成燃料製造技術の核となるFT反応において、高活性触媒の開発や、生成物の選択性制御と言ったことに取り組んでいる。バイモダル触媒の利用や、超臨界場での反応、接触分解とのハイブリッド化によるLPG合成など、これまでに見られなかった展開により数々の成果を上げつつある。
原料から直接燃料を合成するのではなく、中間生成物として一酸化炭素と水素の混合ガスを得た後、金属触媒を用いて液化炭化水素、アルコールなどを効率よく合成することで、環境汚染の元凶といわれる硫黄や重金属を含まない合成燃料を得ることが出来る。
当研究室が開発したFT触媒およびFTオイル合成反応プロセスは、現在、国家プロジェクトとして工業化プラントへ向けてスケールアップ中である。
化学品製造原料、MTBE原料、自動車燃料、特に最近燃料電池の化学原料として、世界で年間約3000万トン消費されているが(ICI法、523-573
K、5-10 MPa)、しかしこの反応は激しい発熱反応であるため、熱力学平衡制限によって転化率は著しく低い。
合成ガスからの低温メタノール合成について、現在までいくつかの研究例があった。しかしこれらの方法は全て液相均一系反応で、アルカリ金属アルコキサイド触媒を使用した。したがって、炭酸ガスと水に被毒されやすい。原料ガス中の炭酸ガスと水を徹底的に排除しないといけない。コストが高すぎるため、実用化に至っていない。
我々の提案としては、CO、CO2、H2の混合ガスから低温メタノール合成のプロセスと固体触媒の開発である。全体の反応経路は以下の通りである。
CO+H2O=CO2+H2 (1)
CO2+H2+C2H5OH=HCOOC2H5+H2O (2)
HCOOC2H5+2H2=CH3OH+C2H5OH (3)
(1)から(3)式まで合わせると、CO+2H2=CH3OHである。
現在開発された固体金属触媒は炭酸ガス、水蒸気を含む原料ガスを使っても極めて高い活性を示し、触媒寿命も長いことを見出した.。
当研究室では石炭液化において、無触媒でも水の添加効果を確認した。さらにATTMというモリブデン塩から高性能MoS2触媒を発見し、石炭液化の反応活性を著しくアップさせた。
このように、資源と環境問題の両立がを目指した我々の研究であるが、表向きの華やかさと地道な努力が並存し、一筋縄ではいかない、やりがいのあるテーマが多いと感じます。近年、資源の逼迫と環境の保全という課題をクリアしつつ、人類・経済の発展というバランスのとれた成長が望まれています。そのためには、我々の研究が実を結び、世のため人のためとして大きく羽ばたいてくれる事を祈念します。