A. 二酸化炭素の触媒的な転換

 二酸化炭素転換はC1化学の最重要分野である。二酸化炭素と水素から,椿研は六段階の反応を一括進行できるカプセル触媒を開発し,世界初でパラキシレン(PX)の一段合成に成功した。

世界初,COあるいはCO2からPXの一段合成

パラキシレンは,酸化して高純度テレフタル酸(PTA)を経由してポリエステル繊維やPETペットボトル用樹脂などに加工される化合物で,工業上極めて重要な基礎化学品である。その組成上,他の化学品に比べて製造時に必要な水素原料が少なくて済むため,より低コストで多くのCO2を固定できる。パラキシレンの世界需要は約4,900万トン/年あり,仮に全てをCO2原料に切り替えた場合のCO2の固定量は約1.6億トン/年に上る。
  椿が発明したCO2からパラキシレンの一段合成カプセル触媒および反応プロセスをNEDO事業として2028年まで実用化(50万トン/年生産規模)する。

当室発明した世界初のCO2からのPX/PET直接合成技術は現在スケールアップ中であり、千代田化工建設株式会社の横浜パイロットプラントで生産された低炭素PX/PETは現在高級服装ブラントThe North Faceを生産している富山起業のGoldwin株式会社によって世界初の低炭素ユニフォームとして市販され、日本代表チームの服装としても2024年7月開催のパリ五輪のスポーツクライミング項目に出場している(日本時間8月5日午後5時競技開始)。更に同試合に参加する米国代表、韓国代表、オーストリア代表も同じThe North Face低炭素ユニフォームを使用している。(下記図1−図5)
https://about.goldwin.co.jp/news/page-36620


図1.世界初の低炭素PETユニフォーム(パリ五輪日本代表チーム)


図2.世界初の低炭素PETユニフォーム(パリ五輪日本代表、米国代表、韓国代表、オーストリア代表チーム服装)


図3.世界初の低炭素PETユニフォーム(パリ五輪日本代表チーム、The North Faceブランド)


図4.グローバル開発チーム


図5.椿研発、日本発の世界初の低炭素技術


現在、The North Face東京原宿店、東京恵比寿店、大阪グランフロント店などにて市販されている。子供仕様もある。ネット販売もある。(図6−図9)
https://www.goldwin.co.jp/tnf/special/wallhuman/2024/article/international-collection-for-2024/


図6.世界初の低炭素製品


図7.NEDO X SNS報道


図8.日本経済新聞報道


図9.新聞報道


参画機関:
富山大学椿研究室,日鉄,日鉄エンジ,ハイケム,千代田化工建設,三菱商事

関連論文:
Chemical Science, 2017(合成ガスCO+H2→PX)Zn-Cr-O/ZnZSM5@S-1カプセル触媒 Chemistry - A European Journal, 2019(CO2→PX簡便触媒製造法) TEOS加水分解被膜によるカプセル触媒製造
ACS Catalysis, 2019(CO2→PX)CrOx/HZSM5@S-1カプセル触媒

その他:
CO2水素化からのガソリン合成用カプセル触媒,Catal. Sci. Tech. 2019, ChemComm 2016
CO2水素化からの軽油合成用触媒,ACS Sustainable Chem. Eng., 2019
CO2水素化からのLPG合成用カプセル触媒,ChemSusChem, 2020
メタンとCO2から合成ガス製造用Ni触媒(Chemical Science, 2019)
CO2水素化からのオレフィン合成用触媒,ChemComm, 2020
CO2水素化からの芳香族合成用触媒,App. Catal. B, 2020

B. 革新的なFT(Fischer-Tropsch)合成技術等

  Co/Al2O3@H-betaカプセル触媒を開発し,合成ガスからのイソパラフィン(プレミアガソリン)の直接合成に成功した。Angew. Chem., 2018

 世界初の方法として,Co/Ymeso-La触媒を発明し,合成ガスから一段で航空機ジェット燃料の直接合成に成功した。合わせて,反ASF分布数学モデルも提出した。Nature Catalysis, 2018. Nature (editorial), 2018。




合成ガスから軽質オレフィン(エチレン、プロピレン、ブテン)を直接合成できるZn-Cr-O@SAPO34カプセル触媒を開発した。Chemical Science, 2020.

C. CO,CO2からの新規低温メタノール合成

 メタノール合成反応は激しい発熱反応であり、転化率に厳しい平衡値の制限がある。しかし低温では反応停止になる。椿氏が発明した新規低温合成法ではメタノール自身を含む諸アルコール溶媒が触媒として働き、二酸化炭素と水を含む合成ガスを130℃の低温でも高い速度と転化率でメタノールに転換できた。Acc. Chem. Res., 2013. J. Catalysis, 2001.


 現在鉄鋼企業と共に、CO2と水素からの新規低温メタノール合成国家プロジェクトを推進している。

D. BTL (biomass to liquid)実用化プラント等

D-1 天然ガスから合成ガスを経由するFT軽油生産プラント


 ベンチプラント、北海道苫小牧勇払の10BPD (Barrel per Day)パイロットを経由して、新潟の500BPD(日産8万L軽油)デモプラントまでスケール・アップされた。


 D-2 山梨県山梨市において、果物の木の剪定枝などからガス化を経由してバイオFT軽油小型プラントを建設・運転した。




 D-3 秋田市において、秋田こまちのもみ殻からガス化を経由してバイオFT軽油プラントを建設・運転した。生産能力4.5BPD。





 D-4 三菱重工長崎において、スギ、トドマツからガス化を経由して同社MRJ飛行機用バイオジェット燃料生産プラントを建設・運転した。バイオマス処理量240kg/日。




 D-5 JICA-JSTのODA事業(SATREPS事業)として、タイのサラブリ郡において、タイのバイオマスから軽油、ガソリン(カプセル触媒)、LPG(カプセル触媒)、メタノール(新規低温メタノール法)の実証プラントを建設・運転した。



D-6 GEI社、出光興産、日本航空と連携して、廃棄衣類を微生物で分解し、得られたバイオイソブタノールから低炭素ジェット燃料(SAF: Sustainable Aviation Fuel)を製造し、日本航空株式会社の商業飛行を実現できた(国産SAF、日本国内初の例)。2021年2月4日JL319便東京羽田空港から福岡空港までのボーイング787-8型機であった。


 https://press.jal.co.jp/ja/release/202101/005933.html

E. 新規触媒調製方法の開拓と応用

スパッタリング法による触媒の調製。Science Advances, 2018. Scientific Reports, 2013. ACS Catalysis, 2014. Chemical Science, 2019

自己燃焼法触媒による還元不要な金属触媒の調製。Journal of Catalysis, 2013

SiCモノリス 3D触媒 Applied Energy, 2013

中空球状触媒 Journal of Materials Chemistry A, 2013

グラフィン触媒 ChemSusChem, 2014

カーボンナノチューブ触媒 Chemistry?A European Journal, 2017. ACS Catalysis, 2012

バイオマス成分を利用して調製した触媒 Chemistry?An Asian Journal, 2017. ChemCatChem, 2015

バイモダル触媒 ChemComm, 2002. AIChE Journal, 2005

F. カプセル触媒の調製と新規化学合成反応の開拓

 CO+CO2+H2から一段でDME(ジメチルエーテル)を合成するCu-Zn-Al-O@HZSM-5カプセル触媒。J. Am. Chem. Soc., 2010
グリセリンの選択的な水素化分解によるジオールの合成を実現したRu/Al2O3@Pd@S-1カプセル触媒。Chemical Science, 2013
 DMEと合成ガスから一段でエタノールを合成できるCu-Zn-O@Cu-mordeniteカプセル触媒。ACS Catalysis, 2020。(2009年DMEと合成ガスからエタノールを合成できる方法を世界初で報告し、現在数か国が実用化している。Energy and Fuels, Vol.23, 2843-2844, 2009.)
 カプセル触媒の展開版であるスイカ型触媒Co@mesoSiO2:従来のFT合成鉄則を打破し、粒子径の小さい金属ナノ粒子は逆に連鎖の長い炭化水素を生成する。既存のFT工場商業触媒のコバルト使用量を大幅に削減できる。Nature Communications, 2018

G. 3Dプリント技術の新展開

 金属3Dプリントによる触媒充填不要な自己触媒反応器の作製に成功し、高温高圧でもコンパクトなマイクロリアクターとしてCO2の転換、メタンの転換に安定した高活性を示し、反応工学と触媒工学の新しい分野を開拓した。メタンハイドレートの洋上生産・触媒化学転換へ向けて企業との大規模展開を準備している。Nature Communications, 2020

H. 天然ガス、メタンの直接転換

 メタンからベンゼンを合成用中空MoCx/HZSM5触媒。Journal of Materials Chemistry A, 2017
プラズマ放電による液体天然ガス(LNG)の直接転換。Applied Energy, 2013

I. 二酸化炭素からの低炭素タイヤの合成

 我々は、世界初の新低炭素技術として、二酸化炭素と水素からのブタジエン、および低炭素タイヤを合成する技術に成功した。東洋タイヤ(株)らとスケールアップしている。まずパリーダカールラリーに参戦する。下記スライド1-4をご覧ください。





椿研関連参考論文:
CO2からのエタノール合成、ACS Catalysis, 2021
CO2からのエタノール合成、Chem. Soc. Rev., 2022
エタノールからブタジエンへ、Applied Catalysis B, 2022
エタノール合成用ゼオライト触媒、Nature Comm., 2022
CO2からのエタノール合成、Angew. Chem., 2023
CO2からのオレフィン合成、Angew. Chem., 2024
CO2からのLPG、オレフィン合成、Nature Comm., 2024
CO2からのブタジエン、Chem, 2024

 


[TOP]