移動プロセス工学講座 トピックス

二重拡散対流とは…


二重拡散対流は分子拡散係数が異なった2つの拡散する物質、或いは1つの物質と熱が同時に流体に浮力として駆動力を与える場合に生じる複雑な対流です。条件によっては乱れの無い静止流体中に不連続密度成層を形成することがよく知られており、近年、その興味深い特徴に大きく関連して海洋学、地学、冶金学等の多くの分野で研究されています。



Double-Diffusive Convection
図 2層系二重拡散対流現象
Experimental Apparatus
図 実験装置図

水溶液の2層系二重拡散対流現象

高濃度流体に低濃度流体を重ねて封入された容器について、例えばその右壁が加熱、左壁が冷却されるとき、熱・物質の二重拡散により上層低濃度流体、下層高濃度流体のそれぞれにおいて独立した反時計回りの対流が生じます。その後異濃度流体は不思議な流体挙動と共に混合します。

左図はこの2層系二重拡散対流の発生から消失までの様子について、当研究室の実験により得られた写真を連続的に示すものです。実験では下層流体を白色染料にて着色し、下層流体が上層へ移動する様子を可視化しました。更に温度場と流れ場の関係を見るために上層流体には感温液晶を少量懸濁させてあります。右図は装置図です。

感温液晶を懸濁した上層について、初期均一温度29.7℃として緑色であった流体のその上部に加熱壁側より青色の高温域(30.1℃以上)が、下部に冷却壁側より赤色の低温域(29.3℃以下)が拡大していき、間もなく等温線は水平方向に一様となります。これは上層においての熱対流の発達を意味します。上層と下層の流れは容器中心に対して点対称であり、下層についてもこれは同様です。つまりこのとき系内に反時計回りの2つの対流(セル)が積み重なって存在しています。

層間に薄い境界を伴った2層系の状態は比較的長い間持続しますが、層間濃度差の減少(境界面を通しての分子拡散による)を原因として、やがてこのセル構造は不安定挙動(境界の波打ち)を示すようになります。 急激な境界面の傾きの増加と共に、それは壁面に近い部分から崩壊し、下層(上層)の流体が上層(下層)に流れ込み、上下層の混合が始まります。このとき対流は3次元的であり、その流れに伴って等温線は大きく乱れます(ソルトフィンガー現象)。その後流体の濃度は均一化し、一つの熱対流に支配されるようになります。


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