A1203)迅速沈殿ー凝集法
迅速共沈法の考え方は,凝集沈殿法にも応用することができます。
例えば,超微量の水銀(II)イオンを含む試料水に少量の硫化物イオンを添加します。溶液中では硫化水銀が生成する可能性がありますが,その沈殿量は微 量ですから,それ自身を沈降させることも,ろ別することも困難です。この溶液に亜鉛(II)イオンを添加し,pHを調整して水酸化亜鉛を生成させることに より,その生成した沈殿と共に硫化水銀が凝集され,沈降します。ここで,わざと沈殿を逃がし,残った沈殿中の水銀量と亜鉛量とを測定すると,それらの割合 は,最初の試料水に含まれていた水銀(II)イオン量と添加した亜鉛(II)イオン量と等しくなることを見いだしました。
Fig.1 迅速沈殿ー凝集法による水銀の濃縮の概要
水銀(II)イオンの捕集機構としては,上述した硫化水銀の水酸化亜鉛での凝集に加え,一部生成する硫化亜鉛による水銀(II) イオンの共沈も考えられ ますが,この点に関しては現在検討中です。
この方法により,試料水に含まれる超微量水銀を簡便に濃縮することができるようになりました。
なお,本研究は文部科学省科学研究費補助金の助成を受けて実施しました。
【関連論文】
◇ Shigehiro Kagaya, Yuka Serikawa, Ryosuke Yashima, Toshiyuki Tanaka, Kiyoshi Hasegawa, Bull. Chem. Soc. Jpn., in press.