金融ビッグバンと今後の経済
1998年6月6日
世界で1日に動いているお金の量:外国為替市場
1995年4月(1ドル112円)
ロンドン 約 53兆円
ニューヨーク 約 30兆円
東京 約 18兆円
シンガポール 約 12兆円
日本の国家予算 一般会計 71兆円
T 金融ビッグバン
1.ビッグバン(Big Bang)とは
もともとは宇宙創世の大爆発をいう。
金融関係で「ビッグバン」という場合、
@イギリスで1986年10月に行われた証券制度改革を指す。
・証券売買手数料の自由化
・取り次ぎ業者と自己売買業者の兼業許可
A広義には、
銀行法改正(1987年)
金融サービス法(1988年)
BIS自己資本規制の法制化(1993年)
を含む。
2.日本の金融ビッグバン(金融システム改革)
(1) 3原則
@フリー(自由)
市場原理が働く自由な市場
自由参入、(銀行、証券、信託、保険が子会社で自由参入)
Aフェアー(公正)
透明で信頼できる市場
公正な競争
Bグローバル(国際的)
国際的基準と整合との整合性を保持
制度の国際標準
(2) 主な内容
平成10年4月
@外国為替業務の自由化
平成10年4月1日から改正外為法施行
「外国為替及び外国貿易管理法」から「外国為替及び外国貿易法」に改正
3本柱
内外資本取引の自由化・・・・資本取引と関連した事前許可、届け出制の廃止
外国為替業務の完全自由化
対外直接投資の自由化
具体的内容
・外貨両替業務への新規参入可能
ドルショップ登場、硬貨買い取りサービス
旅行代理店、コンビニでの両替可能
・海外の銀行に口座の設定、外貨預金が自由
・国内の企業、個人間の外貨建て決済自由に
企業は外国の銀行に口座を設け、国際取引の決済、
債務・債権の相殺決裁(マルチ・ネッティング)が可能・・・・為替手数料節約
先物予約、通貨スワップ、通貨オプションが自由
・事前の届け出、許可無しで海外の証券会社で有価証券の売買が可能
A株式売買手数料
自由化対象:売買代金10億円超から 5,000万円超に
B日銀法改正
独立性向上へ政策委員会強化
C金融監督庁発足
(3) 今後の予定と目標
規制緩和
@投信会社が銀行窓口を借りて投資信託販売(1997年12月から)
A損害保険料率の自由化(1998年7月)
B銀行本体が窓口で投信販売(1998年12月)
C株式売買手数料完全自由化(1999年末まで)
D証券業の免許制を登録制に変更(1998年)
E証券・信託子会社の業務制限撤廃(1999年下期中)
F有価証券デリバティブの全面解禁(1998年12月)
G保険会社の銀行子会社化実現(1999年度末まで)
H銀行の保険子会社化実現(2000年度末まで)
I担保不動産を証券化する特定目的会社(SPC)設立解禁
銀行の窓口で保険の販売(2001年以降に一部解禁)
投資者・契約者保護
@投資者保護基金の創設
A保険契約者保護基金の創設
最終目標
平成13年(2001年)までに改革完了
ニューヨーク、ロンドン並にする
相互参入の自由化で次のようなことも可能になる。
銀行系クレジット会社の総合割賦販売
CP(コマーアシャルペーパー)・社債発行による資金調達
クレジット(カード)債権の流動化(証券化)
3.金融ビッグバンの影響
(1) 個人資産1,200兆円の行方
日本の銀行、証券、保険会社と、外国の銀行、証券、保険会社の間で
個人資産の奪い合い。
(2) 銀行、証券、保険の垣根を超えて
一つの金融持株会社の下で、銀行、証券、保険業務が可能
外国金融機関の相次ぐ進出、業務提携、資本提携の目的は、
顧客確保、顧客名簿の獲得。
1998年4月以降のできごと
・日本興業銀行と野村證券の資本提携(1998年5月)
・あさひ銀行とフィディリティ(世界最大の投信会社)と業務提携(5月26日)
・日興證券とトラベラーズとの資本提携
・独ゲーリンググローバル再保険、豪シドニー再保険が進出
・スイス再保険も損保部門に追加して生保部門も開始
・英国HSBCホールディングス(金融持株会社)がリテール(小口金通取引)市場に進出
まず、投資信託部門で営業、預貸金業務も計画
(3) 企業の資金調達の多様化
国内、国際市場で自由に調達
業績、財務内容によっては資金調達に格差が生じる。
(4) 金融機関
自由化、国際化の進展で、預金者を引きつけられない金融機関が生じる。
地方の小さな金融機関は、地域金融に特化することも必要。
北陸銀行も海外から撤退した。
外国為替業務は、人材が必要、外国銀行との競争が激しい
自己資本比率
BIS基準
国際決済銀行が1988年7月に定めた「銀行の自己資本比率の国際的統一基準」
BIS規制
国際市場で取り引きする銀行は、自己資本比率が8%以上
国内業務を行う金融機関は自己資本比率4%以上
自己資金比率=自己資本/危険を考慮した総資産の評価額X100(%)
企業への貸付は 100%危険資産とみなす
担保のある住宅ローン 50%危険資産とみなす
国債 危険資産とみなさない
海外業務を行う金融機関 自己資本比率 8%以上
国内業務を行う金融機関 自己資本比率 4%以上
日本の場合、8%以上の銀行が少ないため、有価証券の含み益を45%
まで組み入れることで諸外国と交渉しやっとのことで認めてもらった。
銀行の貸借対照表
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資産 負債
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現金 銀行間預金
銀行間貸付 小口・大口預金
公的部門向け与信 (普通預金、定期預金など)
家計向け与信 劣後債
企業向け与信 資本(自己資本)
保有株式 (発行株式の価額、内部留保)
設備・建物
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銀行における自己株式購入
発行株式数の減少を伴う
長所:一株当たりの配当(PER)が増大することから、投資家に有利
短所:自己資本の減少から自己資本比率が低下
したがって、自己株式の買い入れは、自己資本の多く財務体質の強い
銀行に限られる。
(5) 世界的な金融再編の動き
スイスユニオン銀行とスイス銀行の合併(1997年)
シティコープとトラベラーズとの合併発表(1998年5月)
(6) 問題
・個人
金融機関の淘汰が進みことに関連したリスクの増大
為替リスク、個人輸入に関わる品質、納期などのトラブル
証券が企業倒産により紙屑になる場合もある。
市場原理が強くなり個人責任が増大
もてる人ともてない人の収益率、危険の差が大きくなる。
望まれること
いろいろなリスクを理解すること
金融機関を選ぶこと
金融資産の分散化
政府には、投資家、預金者保護のルールづくりが必要
・銀行、証券会社
企業の銀行離れが加速
証券会社は個人の顧客を重視すべき
利益相反問題
日本では、今のところ銀行の株式保有に制限がないが、
外国ではある。(独は自己資本の60%以内)
銀行の持ち株制度・・・・企業を助けようと値下がりした株を持っ
預金者に損失を与えることになる。。
問題は、元本の保証が無いこと
・企業
財務体質のある企業は、CP、社債発行で世界中から資金調達が可能、
しかし他方で、財務体質が弱いと、資金調達が困難になる。
今後は、含み益依存体質からの脱却が必要になる
U これからの日本経済
1.日本経済の姿
平成9年度実績見通し
名目 構成比
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民間最終消費 307.6兆円 60.6%
民間資本形成 104.5 (20.6)
企業設備投資 80.4 (15.8)
在庫増 1.0 ( 0.2)
住宅投資 23.1 ( 4.6)
政府支出 88.8 17.5
輸出 57.3 11.3
輸入(控除) 50.4 9.9
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国内総支出 507.8兆円 100%
2.最近の消費者行動
(1) 消費の低迷
・勤労者の平均消費性向
H7年度 72.7%
H8年度 72.3%
H9年(10−12月) 69.9%
(2) 消費が伸びない原因
・負債/資産比率の上昇
バブルのつけが効いている。
家計部門の負債・資産比率
1985年 1990年 1995年
13.6% 12.1% 14.5%
最近の株価低迷、地価下落も一因
・負担の増大
消費税率の2%アップ(1997.4)
医療負担の増大
年金給付の削減予想(現在厚生省が検討)
・将来所得が伸びない予想の下では消費意欲が減退する。
雇用の不安定性
・中流意識の減退
リストラや経済の先行き不安から中流意識の弱まりや
中流階層の分解が部分的に始まっている。・…雇用の不安定性
・耐久消費財型消費から一過性型消費への消費の変化
自動車、大型冷蔵庫、パソコンなど耐久消費財は不振
ガーデニング、低額旅行など一過性の消費形態が増加している。
事例:コンビニの売上に堅調さがみられる。
3.銀行の貸し渋り
貸し渋りの状況
大手銀行ではそれほどなかった
その他の銀行ではあった
信用銀行等が大手銀行の貸し渋りを補完
なぜ貸し渋るのか。
3月期の決算までに資本を確保するため
預金が集まらない
家庭用の金庫が大売れの状態からも理解できる。
リストラの観点から、財務内容の悪い企業に貸さない、あるいは債権の整理
4.最近の北陸経済
(1) 経済状況
3年前は全国最下位
1年前に平均まで上昇
最近の落ち込みが激しい
(2) 原因
富山県 アルミ、医薬品
石川県 観光、繊維
福井県 観光、メガネ
家計の支出に依存する度合いが高い
製造業のウェイトが高く、輸出に依存する割合が大きい。
雇用が全国平均以上に悪化
家計の支出に依存・・消費が伸びない・・所得がのびない・・の悪循環
5.雇用情勢
(1) 全国
総務庁の調べ
1998年4月の完全失業率が4.1%と過去最悪。失業者290万人
1953年以来の4%台
ミスマッチによる失業率は約3%
若年層で多い
非自発的離職・・・・91万人
60〜64才の男性労働者の求人が少ない
有効求人倍率・・・・0.55倍 78年6月以来の低水準
地域別では、北海道、九州の雇用状態が悪化が目立つ
産業別では、鉄鋼、電気などの製造業が悪い
(2) 北陸
北陸では女性の雇用が悪化
共働きが多く、女性のリストラが多いと推察できる
共働きが多く、パートも女性のが減っている
特に、繊維、観光で悪化
6.今後の見通し
(1) 日本経済の今後の展望
消費者心理・・・・Windows98がどの程度
政府の景気政策・・・・ 合わせて16兆円
在庫調整・・・・進みつつある
設備投資がどうなるか
円安・・・・現在139円台
購買力平価は143円程度、これ以上の円安はない
ヨーロッパは比較的好調
アメリカも好調
(2) 求められる政府の政策
将来予想を明確にする
政策の効果を明確に示す
貸し出し債権の証券化
「特定資産流動化法」(SPC)
透明で信頼できる市場の形成
市場の自由化・・・・競争促進のための明確なルール、監視と罰則強化
徹底的な情報開示