以下は学生と量子コンピューティングの話をしている時に思いついたものです。1)。
話の発端はあるSF短篇である2)。この小説では宇宙が無限に広いことになっている。さらにすごい事には宇宙のいろんな惑星には知的生命体が住んでおり、当然、こちらも無限にいる。この世界では、ねずみ講は、正しい。つまり、ねずみ講の連鎖は無限に続き、誰もが儲かる。我々の世界でねずみ講が失敗するのは世界が有限だからであり、無限の世界があればねずみ講はうまくゆくのである!
さて、我々の世界は本当に有限だろうか?宇宙はもしかしたら無限かもしれないが、知的生命体が見つかる速度は遅すぎるし(実際、まだ見つかってない!)、さらに、もし見つかっても、そこに行くには時間がかかりすぎる。我々にとって、実質的に宇宙は有限である。ではやはりねずみ講は成り立たないのだろうか?
そこに量子コンピューティングが関わってくる(どこが?^^;)。量子コンピューティングの提唱者、推進者の一人、David Deutschは量子力学の観測問題について多宇宙解釈をとっている(「世界の究極理論は存在するか」参照)。これに従えば、宇宙は非常に多数存在し、今現在、量子力学の確率に従ってさらに多数の世界に分裂しつつある。
量子コンピューティングは通常とてつもない長い時間がかかる3)因数分解等を非常に短い時間で出来ることから注目されている4)。量子コンピュータは量子力学の重ね合わせの原理を用いて超並列演算を行ない、こう言った問題を超高速に処理出来る。では、重ね合わせの原理による並列演算とは何か?
Deutschの多宇宙解釈に従えば、これは多くの世界5)で同時(並列)に計算し、その結果をまとめるというものである。つまり、量子コンピュータは多数の並列宇宙に自分自身のコピーを持っており、それがみんな一緒に計算を行なうので速いのである。
うーむ、それならこれらの並列宇宙にねずみ講を広げたら!?無限に分裂しつつある並列宇宙があるんだから、これを使えばねずみ講もうまくいくはずだ!量子コンピューティングが出来るなら、「量子ねずみ講」もできる!?
この話を学生にしたところ、「そのうち、名古屋大学助教授詐欺で逮捕って言う記事が新聞に出ますね」と言われてしまった。その時のコメントはもう考えてある。「もう少し、コヒーレント時間が長ければ間違いなく儲かったんですが...」うーむ、あまり一般受けしそうもない落ちだな...