COC+キックオフシンポジウム

COC+ レポート

富山大学coc+ パネルディスカッション

テーマ:富山全域の連携が生み出す地方創生
・雇用創出・若者地元定着
・大学の知の活用による地域課題の解決
・地域の求める人材育成
パネラー
富山市長/森雅志氏     富山県商工会議所連合会会長/髙木繁雄氏 
富山県機電工業会会長・YKK株式会社取締役副社長/大谷渡氏
富山県立大学副学長/松本三千人氏  富山国際大学・富山短期大学学長/中島恭一氏  富山大学学長/遠藤俊郎
コーディネータ
富山大学理事・副学長 鈴木基史
コーディネータ
「富山全域の連携が生み出す地方創生をテーマに議論していきます。最初に富山市長から地方創生の考え方をお聞かせください」
森市長

しっかり将来を見据えて,若い世代も安心して将来への展望がみえるようなまちづくりをしなければならない。ソコが見えてくる地域と見えてこない地域とではこれから加速度的に差が開いてくる。富山市は12,3年前からそのことを視野に入れ,若い世代も年配世代も安心して暮らせるまちづくりに取り組んできている。公共交通へ積極的に投資し,年配者も車に頼らないで外出できる街にすること,おしゃれ感のある街にして若者が外出したくなる都市空間にすることで,雇用も生み出すことになる。

雇用の無いところには人は定住しない。様々な取り組みを総合的・包括的に全体の水準を上げていくことが地方創生だと思っている。東京には無い魅力,地方でも光って見える都市の魅力を創ることが大事だ。

人を動かす要素は「楽しい」か「おいしい」か「オシャレ」だと思っている,これを意識してまちづくりに取り組んできた。富山市の人口は転入増が8年連続続いており,減少率は全国平均より低い。これをしっかり維持するためにこれからも様々な施策をすすめていきたい。

コーディネータ
「地方創生を考えた時,経済界としてどのようなことが一番インパクトがあることかを含め,地方創生についての考えをきかせてほしい」
大谷会長

モノづくりから考えると全てを一緒に考えることはできない。短期視点と長期視点でやることをきちんと整理し実効性のあるものにしなければいけない。富山県のモノづくりの会社一社一社が強みと特徴を持っている。強みを認識してさらに強くすること,その強い部分を富山県外へ訴えていくことが大事だ。

学生にも知ってもらうことが大事と考え,富山大学と富山県立大学で今年から特別講義を開講している。富山県の学生の定着率を上げるには,県内にどんな会社があり魅力があるのか知らせることを地道にやっていかなければいけない。長期的には富山県の強みをきちんと知ってそれをどう発展させる人材を育成しなければならない。足下の課題をきっちりやり遂げることが地方創生として一番大切なことである。

コーディネータ
「本事業の取り組みにあたり初期段階でのアイディアやヒントをいただいた木会長からお話を伺いたい」
髙木会長

富山県の人口は1990年をピークに減少し続けて,生産人口はもっと減っている。近代産業社会の職業分離の進行から子どもたちが親の働く姿を見る機会が減少し,将来の職業観に影響している。豊かな自然と文化に育まれた富山は,豊富で廉価な電力や薬業資本の投資などにより工業が発展してきた。

富山には多くの観光資源があるにもかかわらず,隣県に比べ旅行消費額が半分にもならない。地域の特性を活かす自然・産業・文化に加え,ライトレール等の2次交通網の整備をすれば富山の新しい観光の切り口になる。一般の観光客だけでなく県内に住む大学や企業関係者に焦点を絞り,出張などで県内を訪れた人に産業・企業を見てもらうツールとして県内全商工会議所が連携して「富山産業観光図鑑2015」を発刊した。夏型の富山の観光を通年型にし,天候に左右されない産業観光を中心に,祭り・文化・大自然を公共交通がつなぎ,モノづくり地域の特徴を活かすことがこれからの富山の観光である。

今考えているのは産業観光を一般観光客の受け入れ,社会見学や生涯学習の受け入れ,学生就職活動や企業活動に関連した受け入れに体系化することだ。新しい文化をつくり出すことを気概にもち,産業観光を切り口に考えていくことがいいのではないか。

コーディネータ
「遠藤学長から富山大学としての地方創生の考え方を伺いたい」
遠藤学長

COC+は一人一人が作りあげるものであり,大事なのは連携である。大学を中心にして産官学金で様々な形で連携してものをつくる時に,生活の舞台をつくるのか・生活の道具をつくるのかに分けられる。

生活のバックグランドとして人が楽しく元気で暮らすのに必要なのは教育と医療だと思う。また次につくる新しい社会には女性の感性が必要だ。女性が元気に雇用できる職場が富山にもっとあればいい。男性中心の分野にもっと女性が入るかたちをつくっていかなければならない。

子どもたちの学びの環境と医療があり,そこに日々の生活を楽しめるものがあり,その中に仕事が生み出されていればいい。それをどう集約していくのか我々共通で考えてくことが地域の創生ではないだろうか。

コーディネータ
「COCの採択された富山国際大学の中島学長から一言お願いします」
中島学長

富山国際大学もCOCの認定校になり嬉しく思うと同時に責任の重大さを感じている。富山県の特性・伝統文化・資源を活用して経済が地域の中でまわっていくようなコミュニティづくりが大事でそのための人材育成をやっていかなければならない。

県内私立大学では県内就職率が非常に高く,地域密着型の大学になっている。私立大学の特性として今,学生確保という入り口の問題がある。富山県内への大学残留率が低く4分の3は県外へ進学してしまうことを改善していく必要がある。地元で学ぶ学生を増やすことが大切で,魅力を感じられる教育が必要だ。学生時代に地元の課題をしっかり把握させ,解決できる人材を育成するプログラムを進めていく。

コーディネータ
「COCの先輩である富山県立大学の松本先生さんから一言お願いします」
松本副学長

県内産業の人材供給と若者地元定着に貢献して地方創生の一翼を担えるよう,学科拡充・新設準備を進めている。各産業界のニーズを反映させる形で,28年・29年に学科新設・定員増員を予定している。若者の県内定着の推進をはかり県内就職率10%アップを目標に取り組んでいる。県内高校からの入学者を増やすことが大切だ。県内企業の魅力を学生に伝えていく取り組みや県内企業への長期的なインターンシップなどで県内企業への就職を促進させ県外出身者の学生を富山に定着させる取り組みを充実させていく。若者の定着促進させるには地域の愛着を抱かすことが重要だ。

大学では地域が抱える課題を中心に協力して,学生と地域・企業との対話や協働を通して解決策を学生自ら考える授業を少人数ゼミで取り組んでいる。地域協働を自主的に学生が取り組むグループも設立されアクティブに活動している。こうしたCOC事業の活動を通し学生の課題解決力・社会参画力が育成できる考えている。一方で学生が地域を理解して愛着を持つことで県内就職につながっていく。

コーディネータ
「富山県知事からのメッセージをいただいております」
富山県知事からのメッセージ

このたび,富山県の高等教育機関が,県や市町村,企業・団体と連携し,地域の人材育成や魅力ある職場の創出による雇用の確保,若者の県内定着に取り組まれることは,富山県の活性化に大きく資するものであり,大いに期待申し上げる。県としても,このたびの協定締結を契機として,皆さんとの連携を一層強化し,ともに努力していきたい。若者の定着率の10ポイント向上という高いハードルを掲げていただいているので,しっかりと進捗管理をされ,成果を上げていただけるよう期待申し上げる。また,今回の事業に参加される県内7高等教育機関で構成される大学コンソーシアム富山におかれても,これを機に地方創生に向けた取組をより充実していただけるようお願いしたい。 富山県知事 石井 隆一 

コーディネータ
「この事業の進捗管理をしてプラットホームを確実にこなしていきたい。高等教育機関に地方創生のプレイヤーとして何を望むか,どんな人材育成をしてほしいのか,仕事をしていく上での取組など我々の方へヒントや提言を伺いたい」
森市長

7割ぐらいの人が高校を卒業して県外へ出る。最近はその6割ぐらいは戻ってくる。30歳ぐらいになってからも戻ってくる。それだけ魅力がある地域なんだといえる。県内の高等教育機関で学ぶ人が県外の人が多くてもその人たちが富山に卒業後も定着していくよう取り組んでいただけることはいいことだ。スーパーカミオカンデの研究者たちは富山に住んでいる。富山に住むことが研究にも家族にも役立っている。富山は雇用の流動性がきちんと維持されているのが強み。プラスして暮らしの楽しさ快適さを加え,魅力あるライフスタイルを実現すれば県外学生の定着,県外学生が帰ってくる数が増えるだろう。富山の暮らし,遊びをアピールして体感させ,小さな仕掛けでも成功体験を積み上げることが必要だ。

髙木会長

日本の学生の勉強時間は一日30分以下が70%,アメリカ・中国は60%は2時間以上だという。大学の授業を魅力的にしてレベルをあげていただきたい。県内産業界も地方に拠点を置いても海外へ出て行く時代。富山の学生はグローバルな視野を持つことに弱い。海外との交流や研修など大学のゼミ・学部単位でもっとやって欲しい。富山にいてもグローバルな視野とローカルな視野が両方もてるよう協力していきたい。

大谷会長

地域を担うリーダーは,地域の魅力・特徴をきちんと知って,それをどう活かして発展させるかを考えられる人が大切になる。この人材育成を大学に期待したい。また女性の活躍が期待されるが,北陸では女性は支える者という考えがある。女性が主となっていいという考えに変えなければならない。大学だけでなく社会・企業すべてがそういう意識に立たないと,女性の活躍の実現にならない。

遠藤学長

北陸の女性は自立性が高く,視野も広い。男性を支えながら自分も大切にしている。支えて引っ込んでるとは思わない。

中島学長

学習時間が短いのは気になっており,授業の中身を魅力的にする試みをおこなっている。地域について学ぶなど協働機関の協力を得て魅力ある授業にしていきたい。グローバル人材の育成を強化して,日本の地域と海外の地域との交流を強めるような人材を養成することが重要となっている。地域課題とグローバルな課題とを結びつける教育を展開していきたい。

富山大学coc+ パネルディスカッション

鈴木理事

高等教育機関・企業・自治体が協力しまして地方創生に結びつくような活動をこれから具体的に展開していきたいと思います。これからもご協力お願い申し上げます。