文部科学省 知(知)の拠点

イベント

平成30年度ALL富山COC+シンポジウム 分科会2

2019/01/17(木)

地域創生 in TOYAMA 2018

〜地域をマナブこと,地域へツナグこと〜

開催日時
2018年12月18日(火)13:00〜17:30
場  所
富山国際会議場
主  催
ALL富山COC+(富山大学,富山県立大学,富山国際大学,富山短期大学,富山福祉短期大学,富山高等専門学校,高岡法科大学)

ALL富山COC+の取組も終盤の4年目となり,地域志向を高める教育と地域課題解決力の開発が一定の形となった本事業の活動報告とCOC+事業の終了後を見据えた自立化を探ることを目的に,第一部のシンポジウムで基調講演とCOC+の取組状況の報告がおこなわれ,第二部の分科会では「地域企業の採用力向上」「地域協働活動のあり方」「学生の課題解決型人材育成」の3テーマに分かれた活動報告やディスカッションがおこなわれた。

第二部[分科会]15:30~17:30
分科会2
「地域協働のあり方」〜成果と課題〜
会場:多目的会議室204
開会挨拶
富山県立大学副学長 森孝男

地域に貢献する大学としてこれまでにも社会貢献活動に取り組んできました。平成25年度に文科省COC事業に採択され地域との協働に積極的に取り組み,27年度よりにCOC+事業の参加校の一つとして県内の各高等教育機関,企業と連携を取りインターンシップやキャリア形成教育の充実に努めてきました。本分科会では富山福祉短期大学、県立大学からこれまでの地域協働活動の取組状況等についての報告とパネルディスカッションを予定しています。今後とも大学・地域・企業が協働し地域に貢献できる学生を育て,若者の地域定着に向けて努力してまいります。この分科会を契機により一層のご支援ご協力を賜りますようお願いします。

1,報告「大学による地域協働活動の実績」
①富山県立大学の取組
(ア)地域協働授業・学生自主活動
富山県立大学COCコーディネーター 堺 勇人

本学の地域協働活動は平成25年度に文部科学省の地(知)の拠点事業に採択されたことから始まります。工学心で地域とつながる地域協働型大学の構築を目指して,教育・研究・地域社会貢献の分野で全学的に地域課題に取り組んでいます。文科省の事業は昨年度で終了し本年度から独自に継続している状況です。本学の地域協働活動の中心は地域協働授業で,少人数ゼミで様々な地域課題に取り組み,主体性・課題解決力・コミュニケーション力を育んでいます。学生の96%が受講し,平成25年からの受講生は延べ3100名になる。授業以外にも学生が自主的に地域協働活動をおこなっています。学生自らが大学へ企画申請し大学が予算配分し年間10件程度おこなっています。学生が中心となって活動してもらおうと立ち上げた学生団体「地域協働研究会COCOS」では本学の地域協働活動のサポートや地域との自主的活動をおこなっています。地域協働活動についての学生へのアンケート結果には地域課題や解決のための知識が深まり,仲間へのコミュニケーション力や対外的なコミュニケーション力が身についたという回答が多く得られています。

(イ)課題解決型インターンシップについて
富山県立大学キャリアセンター参与 中島 節治

課題解決型と文理融合型の2種類のインターンシップを実施しています。本学ではキャリア形成科目の単位認定でインターンシップを開講しました。院生を対象におこなった課題解決型の狙いは学生が企業の課題を見つけ,グループワーク力と共に自ら解決しようとする力を養うこと,課題解決に取り組むことで学生が達成感を感じて,最終的にその企業に愛着を持って就職につなげてもらうことです。同時におこなった文理融合型インターンシップでは,富山国際大学の学生と共同研究をすることで,互いに刺激を受けることも狙っています。インターンシップは長期間の受入を希望していましたが,10日間ほどの受入が多くなりました。過去3年間で協力企業は延べ12社(実質7社)であり,参加学生は24名うち県外学生は15名でした。過去2年の進路状況は就職者18名のうち5名の学生が受入企業での就職につながりました。。成果として,参加学生は研究への取組や自分の進路に対してより積極的になったことと,一般学生より県内就職率が高くなったことがあげられます。課題として,受入企業側から人員や時間確保が難しく現場の理解が得にくいという話が多いです。大学側では教員や学生への周知を深める必要がある他,研究活動との時間調整やインターンシップ先までの交通の確保など課題があります。また,受入企業と学生双方に合った課題を見つけることも問題となっています。

②ふくたんの地域協働活動の取組について
富山福祉短期大学学事部長・社会福祉学科長 竹ノ山圭二郎教授

本学は「地学一体」を掲げ,地域と一体となって課題に取り組み「共創福祉センター」を立ち上げた。平成30年4月には地域課題解決拠点となる施設(USP)を建設した。地域に学ぶ,地域で学ぶということで1年必修で前期「地域つくりかえ学」で外部講師による講義,後期「富山コミュニティ論」で地域へ出て学ぶ他,年に一回はボランティア体験をして学んだことを発表する仕組みをつくっている。本学と連係をとる行政,社会福祉法人との地域連携会議を開催し,学生に取り組ませる地域課題を検討し,その課題を学内でマッチングして半年間活動し報告会をする形で地域のニーズに沿った学習をとっている。富山コミュニティ論の狙いは幅広い一般的な観点から地域課題について学ぶことで学生の学びの幅を広げている。課題としては、ゼミ単位で取り組むので教員の個々の力量にかかり担当教員の負担が大きいこと,学生と地域の人との時間・日程の調整が難しいことの2点が改善していきたいことで模索しているところである。

2,パネルディスカッション「地域協働から地域定着へ」
【モデレーター】富山県立大学工学部電子・情報工学科 岩本健嗣教授
【パネリスト】〈大学〉富山県立大学工学部電子・情報工学科 榊原一紀准教授
富山福祉短期大学学事部長・社会福祉学科長 竹ノ山圭二郎教授
〈県〉富山県商工労働部労働政策課雇用推進係長 小沼景子氏
〈企業〉株式会社プレステージ・インターナショナル富山BPOタウン人事部 山下鮎美氏
〈学生〉富山県立大学地域協働研究会COCOS代表 山﨑裕貴氏

岩本モデレーター
パネリストの皆さんからポジショントークとして,学生が富山県に定着するために一番必要なことを5分程度でお話しいただきたい。

小沼パネリスト
平成30年4月県内大学入学者の県外出身学生は66.7%,3月卒業県外出身の県内大学生の県内企業就職率は17.9%で前年20.8%から下降傾向にあります。県内出身者の県内定着率は85.8%と高く、県外出身学生をいかに富山県に就職させるかが課題となっています。県では県外出身の県内学生の県内定着をT(Toyama)ターンと名付け、Tターン推進に取り組んでおり,学生によるとやま仕事発見・魅力発信事業,富山のしごと・くらしアピール事業などに取組んでいます。進学で県内に来た学生が,県内での様々な人との出会いをきっかけに県内で就職してもらえればと思います。人と人との出会いの場を意識した事業をおこなっていきたいと思っています。

山下パネリスト
富山県内の企業をもっと知ってほしいと思います。富山には仕事が無いと思っている学生も多いです。大手有名企業や金融業界,公務員しか見えてない学生も多いです。学生の目に見えにくい富山のB to B企業も多く,誰がいつどのように富山の企業・魅力を伝えられるのかを考えなければいけないと思います。住みやすい,働きやすいから富山へというアピールだけでなく,学生に長期的な人生設計を考えさせた上で富山の企業を知ってもらう機会をつくってほしいです。また,学生の主体的活動へ積極的な協力として当社は今年初めて県立大学学園祭に参加させていただき,必要とされるノウハウの提供ができたことは良かったです。今後も学生や地域を応援していく環境づくりをしていきます。

榊原パネリスト
これまで活動の成果としては学生が地域の現状と課題を知る機会を提供できたことで,その中でさらに学生自ら自分の価値を知る機会を提供できました。また,大学教員が地域定着の意義を知ることができました。一方で課題は,短期での課題解決は難しいこと,若者の新たな視点を求められ過剰に若者に期待されることがありました。斬新なアイディアではなく課題の整理をきっちりできることが一つの成果となります。地域の魅力を光らせることが大切です。地域協働授業の継続性を持たせるために教員のグループを形成し課題の共有化を図る必要もあります。

山崎パネリスト
大学は授業数が多く時間が取れません。レポートなどの課題やアルバイト,サークル活動などもあり,企業を知る時間を無駄に感じる学生も多いようです。学生個人のモチベーションにもよりますが授業時間の調整ができれば取組みやすくなると思います。富山県の魅力を再確認するということが必要です。短期間でも異なる環境を体験したいと思っています。県外で富山の魅力を知ってUターンして富山で暮らす人も多いのではと思います。情報発信の改善が必要で学生は富山の企業を意外と知りません。大手有名企業しかわからないので都会にしか良い企業がないと思い込んでしまっています。私も東京には憧れがあります。就職案内などの情報が膨大すぎて,企業を調べる意欲がわかなくなります。

竹ノ山パネリスト
福祉短大の場合,県内就職は80%以上です。県内の学生でも富山のことを知らないと思います。企業だけでなく富山の良いところや魅力について知りません。生活範囲や興味関心の範囲が狭く経験もないので,学生に富山の魅力に触れさせるキッカケが必要です。地域協働学習で地域に連れ出し,どんな人がどんな活動をしているのか知ることが人生の財産となります。大学に進学する県内高校生を県内にどう目を向けさせるのかの活動が大事です。地域協働活動では地域から求められるレベルが高い。地域の人が困って答えが出ないものが学生が半年で答えは出ない。学生に興味関心を持たせることが目的であることを理解してもらいたいです。

岩本モデレーター
地域での出会いが地域定着・愛着になっていくのでしょうか?

山崎パネリスト
COCOSに入っている学生は愛着や財産になっていると思うが,他の学生は人とのつきあいを面倒臭いと思ってたり,バイトの先輩だけ付き合いなど限定的で付き合いそのものをを断っていく人が多い。


岩本モデレーター
学生と地域との出会いの場をつくっていく立場としてはどうでしょうか?

小沼パネリスト
県外出身学生を対象にしたTターンバスツアーで県内企業2社を訪問しました。若手社員や社長の話を聞いて学生の考えが変わったという声が多かったです。県の青年議会に参加した大学生にヒアリングしたら学内での出会いが少ないという悩みも聞きました。

岩本モデレーター
学生が忙しいという状態ですが何かできること,時間とのバランスについて改善できることはあるでしょうか?

竹ノ山パネリスト
国家資格養成課程のカリキュラムはタイトで時間的余裕を見つけるのが大変な現実はあります。調査活動は個々の教員の負担が多く,移動先まで距離があると休日・休暇を返上しています。経済的に苦しい学生も増えアルバイトを休めない場合も多く,解決策がまだ見出せません。

岩本モデレーター
企業側から見たPRや学生への露出など今の状況はいかがでしょうか?

山下パネリスト
当社富山は1000名のキャパシティのうち500名が働き,7割が女性で託児所も併設しています。アウトソーシング事業で当社名が表に出ない事業内容なので知名度は少ないですが,県立大学園祭の協賛は学生に直接PRできたことは良かったです。学校を通した学生へのPRの方法をこれからは考えていきたいと思います。

岩本モデレーター
学生は人生設計や就職についてどのように考えていますか?

榊原パネリスト
私が見る限りあまり考えている意識がないです。就活というイベントゲームをこなしている感があり,その中で自分が主体的に何をしたいかについて見えてこないです。

岩本モデレーター
会場からご質問やパネリストに聞きたいことがありましたらどうぞ。

参加者(学校関係者)
共通体験が定着につながると思います。地域協働活動は学生にとって良い経験で成長させます。また,地域社会にとっても課題を考えるキッカケとなります。取組を継続してもらいたいが,文科省の予算切れ後はどうしますか。

岩本モデレーター
継続していく方向にあります。教員側のモチベーションをどう担保するかが大きな問題となっていると感じています。興味がある人ない人に温度差があり,やっている人が損をしていると思わせないことが必要だと思います。

参加者(企業関係者)
素敵な出会いは魅力的です。大学生は富山県の企業と接する機会が少ないと感じます。競争が厳しいなか自社だけでの対応は難しいです。大学のシーズと企業のニーズとのマッチングをはかる共同研究やインターンシップ,MOTなど学生のうちからもっとプロモートしていただけたら企業としてもありがたいです。

山崎パネリスト
共同研究で企業を知ることは魅力的ですが,実際に取り組めるのは3年生の授業が終わってからとなるので1社か2社ぐらいしか知ることができないのは物足りません。

岩本モデレーター
県の方では企業のニーズを聞いて、マッチングするような取組みはありますか?

小沼パネリスト
県内企業から人材ニーズを聞き、首都圏等で働くプロフェッショナル人材とのマッチング支援をするプロフェッショナル人材確保事業などをおこなっています。

岩本モデレーター
パネリストの皆さんからまとめとして,地域協働と地域定着の今後のあり方についてコメントをお願いします。

榊原パネリスト
授業がタイトで地域活動授業をどうするかについて,研究のフィールド・共同研究を強めることで改善の余地があると思っています。

竹ノ山パネリスト
地域課題に真摯に取り組む人がいてその人たちと触れ合うことで地域の魅力に気づいていけるような教育活動を展開したいです。

小沼パネリスト
大学・学生が大変忙しいなかで地域活動に取り組まれていることがわかりました。企業が学生を育てている状況もわかりました。本日学んだことを政策に反映させていきたいです。

山下パネリスト
企業をもっと知ってもらうことも大切ですが,学生がどんな人生をどう歩んでもらうかの設計を早くから考えてもらう機会をより充実させていただきたいと思っています。

山崎パネリスト
来年やりたいことが見えてきた。地域の方と共同研究の誘致に働きかけたい。富山の企業を知る機会を増やしていきたい。
閉会挨拶
富山県立大学キャリアセンター所長 大島 徹

分科会に多くの産官学の皆さんに参加いただきありがとうございます。学生を主役とした地域協働の芽を育て地域定着へ結びつけていく仕組みができあがってきたと思っています。これまで以上に地域・企業とともに学生を育てていくことが,これまでの共同研究・協働開発より進んだ地方の産学官協働の新しい姿になると期待しています。地域に根ざす学生を育てていくために今後とも長い目でご支援をお願いします。