文部科学省 知(知)の拠点

その他

第2期TOYAMA採用イノベーションスクール第5回ワークショップ・講演③「採用のための体制づくり」

2019/10/21(月)
第2期 TOYAMA 採用イノベーションスクール

第5回ワークショップ
講演③「採用のための体制づくり」

開催日時:令和元年10月10日(木)
開催場所:農協会館 801会議室 

 「人材要件と募集手法・選考手法のブラッシュアップ」をテーマとするワークショップも今回で5回目。今回は、前回行った富大生5人に行ったヒアリングで特に印象に残った内容、学生の意見をもとに検討した手法等についてディスカッションしました。

各グループを代表して、最初に北栄電設(株) 渋谷辰則さんが「ヒアリングを通して感じたのは、インターンシップで課題を与える場合、あまり緩すぎても学生はやりがいを感じない。むしろ少し厳しめにし、難しそうであれば声をかけたりすることで、社風や社員の人間味も伝わると思う」と発表。具体的な手法として、「例えば、入札をゲーム化し、勝負がはっきりするプログラムを作っていきたい」と提案しました。
 神戸大学大学院経営学研究科 服部泰宏准教授は、「採用担当者がくだけすぎると学生が引いてしまうこともあるが、やり方次第ではひじょうに面白いものになりそう」とエールをおくりました。


続いて、(株)ワシントン靴店 中沖祥子さんが「学生全員に共通していたのは、『働くイメージが湧かない』ということ。そこで、具体的な対応として、従来行っていた個別説明会を見直し、売り場や事務仕事などが体験できるよう検討したい。また、採用担当者と学生の座談会には、若手社員や活躍がめざましい社員も巻き込んで実施していきたい」と発表しました。
 長岡工業(株)糸岡樹里さんは、女子学生が発した「私は文系だから人と関わる仕事の方がいい」という言葉に着目。「実はこういう学生は意外に多い。当社は高圧ガスの専門企業のため、理系の仕事と思われがちだが、入社してから勉強すれば充分できるということをアピールして、文系の学生にもどんどんアプローチしていきたい」と語り、「スキルアップ、キャリアアップをキーワードに、入社後に資格を取得し、頑張っている社員を紹介することも考えている」と発表しました。
 これを受け、服部准教授は「言葉にすると“文系コンプレックス”という言い方になるが、それは確かにあると思われる。その不安感をうまく払拭することはとても大事なこと」とアドバイス。最後に、富山大学地域連携推進機構地域連携戦略室COC+統括コーディネーター・尾山真特命准教授が「皆さんにはぜひ、オリジナリティあふれた募集手法・選考手法を考えていただきたい」と挨拶し、午前の部は終了しました。


講演③「採用のための体制づくり」

午後からは、神戸大学大学院経営学研究科の服部泰宏准教授が「採用のための体制づくり」と題して、近年の採用事情と学生の志向などについて紹介。「TOYAMA 採用イノベーションスクール」の受講生を含む約80人が聴講、企業の採用戦略について考えました。

まず服部准教授は、新潟市内に本社を置く米菓子メーカー「三幸製菓」の事例を紹介。

・出前全員面接会:5人仲間を集めて会場を準備してくれたらどこへでも行く(人を巻き込む力、調整能力、段取り力を見る)

・ガリ勉採用:「学生時代は勉強した」という人を採用(就活巧者ではなく、勉強に対しての継続力と集中力を評価)

・ニイガタ採用:「新潟が好き」な人を採用(地方企業であるという発想を逆転)

・おせんべい採用:おせんべいへの愛を語ってもらう(おせんべいへの愛を重視して採用)

 三幸製菓は、新潟という地域性や米菓子を扱う企業であるという独自性を生かした採用活動で成果を上げています。このことから服部准教授は、「自社のポジショニングを知り、採用基準を導くという戦略を持つべき」と提言。超人気業界の人気企業と同じ発想で学歴や協調性などにこだわるのではなく、そういう視点をあえて棄てて「見ない勇気」を持ち、独自の方法で採用すべきであると伝えました。

 また、採用と育成をどう関連付けて考えるかなどの方針や、米国の採用シーンで起こっていることなどを紹介。「魅力的なサイトは、魅力的でない休職者も引き付ける」「確実にSNSの活用が広がっている」などと述べました。「組織(企業)と個人の関わり合いは、それぞれに特異なものとなり、かつそれが個人と組織の双方にとって理想的な物になりつつある」と紹介し、それぞれの企業独自の採用のあり方を考える必要性を示しました。


続いて行われたワークショップでは富山大学 COC+統括コーディネーターの尾山真准教授が司会進行を務め、それぞれの企業での就活について実態を紹介、意見交換しました。

「うちは絶対に転勤がないというと、立ち止まって話を聞いてくれる」

「どの就活サイトに載せると効果があるか」

「本当のことを伝えた方が、学生は関心を持ってくれる」

 これらの意見交換により参加者からは「気づきがいっぱいあった」「定期的にこういう場があるといい」などの声が挙がっていました。


尾山准教授は、近年の学生の傾向について「求人が多いから安泰だとは思っていない。むしろ『自分が社会人として通用するか』『失敗できない』『会社の雰囲気になじめるか』などの不安を感じている」と紹介。また、インターンシップを複数企業が合同で実施している事例などを示し、「オール富山で人を育てる雰囲気づくりを期待したい」と締めくくりました。