A1202)内部標準併用−迅速共沈法
迅速共沈法は優れた方法ですが,これに利用できる共沈剤には,
1)試料に含まれていないこと。
2)完全に沈殿すること。
3)簡便に定量できること。
などの条件が必要で,これが本法の適用範囲を狭めていました。例えば,水酸化鉄,水酸化アルミニウム,水酸化マグネシウムなどを共沈剤として用いる共沈法は優れた微量元素の分離濃縮法ですが,上記1)の条件を必ずしも満たすとは限りませんので,本法を適用できませんでした。また用いる共沈剤量は,微量元素量に比べ極めて多いことから正確に計測するためには希釈が必要となり,結果として操作が煩雑となる場合もありました。
Fig.1 内部標準併用−迅速共沈法の概要
この点について我々は研究を重ね,内標準法を併用することで改善できることを見出しました。共沈剤の添加時に内標準元素も併せて添加し,この内標準元素量を計測することで共沈剤量を見積もる,という原理の本法は,内標準元素が上記1)〜3)の条件を満たせばよいことから,原理的にはこれまで提出されている共沈法すべてに適用できることになります。現在,我々は本法を微量元素定量に精力的に応用しています。
【関連研究】
B1101> 河川水中超微量カドミウムの迅速濃縮・定量法
B1202> 内部標準併用迅速共沈濃縮・原子吸光分析による微量鉛および微量鉄の定量法
B1204> 排水中規制元素の同時定量法
【関連論文】
◇ Shigehiro Kagaya, Yusaku Hosomori, Hidekazu Arai, and Kiyoshi Hasegawa, Anal. Sci., 19(7), 1061-1064 (2003).
◇ Shigehiro Kagaya, Zanariah Abdul Malek, Yasuko Araki, and Kiyoshi Hasegawa, Anal. Sci., 18(8), 923-926 (2002).