富山大学 ダイバーシティ推進センター

富山大学 ダイバーシティ推進ボス宣言 (2024年度版)

富山大学は、性別、性的指向と性自認(略称SOGI)、障がいの有無、年齢、文化、宗教、信条、国籍などの多様性を尊重し、それぞれが自らの能力を発揮し、皆が生き生きと活躍できる教育・研究・職場環境づくりを進めることを宣言しています。(参照:富山大学ダイバーシティ推進宣言)

この度、学長・ダイバーシティ推進担当理事・各部局等の長に、「ダイバーシティ推進ボス宣言」として、本学もしくは各部局等において目指す多様性推進と、それに向けた具体的取り組みや課題についてお話ししていただきました。是非ご一読ください。

齋藤 滋 学長

富山大学学長 齋藤 滋

 国際的にみて日本の教育はトップレベルですが、ダイバーシティに関しては、若干の向上は認めていますが、現時点において最低レベルにあります。富山大学のみならず、国を 挙げて改善に取り組む必要があります。富山大学は地域と世界に向かった開かれた大学として「教育」に貢献していますが、この点をより改善するため、多様性を尊重し、それぞれが自らの能力を発揮し、皆が生き生きと活躍できる教育・研究・職場環境づくりを進めています。
 学問には多様性があり、多様な人材による総合的見地からの研究が望まれています。富山大学では、多様な教職員による教育、研究、社会貢献を実施したいと強く願っています。今後も富山大学は多様な人材を積極的に活用し、ダイバーシティ推進の視点に立った社会への貢献や、国内外の教育機関や社会との協調・連携を進めていきます。ただし、女性教員比率は富山大学の掲げた中長期計画・中期目標の目標値に大きく遅れており、積極的な女性教員の雇用を進める必要があります。また理系の学部や大学院に進学する女子学生の数がOECD加盟国の中でも最低レベルにあるので、これらの点も改善していく必要があります。富山大学に在籍する女性教員が活躍する姿を発信し、学生のロールモデルになっていただきたいと思っています。富山大学が更なる発展を遂げるために、皆様のご支援とご協力を心よりお願いします。

井上 将彦 ダイバーシティ推進担当理事

富山大学 井上 将彦理事

 本学は、教員・職員・学生個々人の多様性を尊重し、その力を最大限に引き出す組織であり続けたいと思います。異なる背景、経験、視点を持つ人々が共に学び働くことで、私たちは新たな教育・研究・社会貢献を創生し、持続的な成長を実現していけるからです。わかりやすい例として、研究に関しては、異文化や異なる専門分野の知識が融合することにより、今までにない展開が生み出されることは皆さんもよく経験していることでしょう。すなわち、各メンバーが持つユニークな視点が相互に刺激し合い、新しい発想やアプローチが次々と生まれる環境を構築することが、研究に限らず大学の成長の原動力となっていくはずです。
 私自身も60歳を超え、多くの経験を積んできましたが、同時にそれが固定観念を生むリスクとも感じています。その経験は、あくまで「昭和中期生まれの理系の男性教員視点からだけの狭量なものではなかったのか」と。時あたかも生成 AI の圧倒的で破壊的な出現を目にして、自らの持つ常識や経験を超えた考え方や手法を受け入れ、それを常に吸収し続けることの難しさを痛感しています。だからこそ、異なる世代や文化、価値観を持つメンバーから学び、共に成長することが、大学のそして社会の発展にとって欠かせないと感じています。私たちのダイバーシティへの取り組みと、その結果として生まれる無限の可能性をご理解いただければ幸いです。



*各部局長によるダイバーシティ推進ボス宣言は、①部局でのダイバーシティ推進において目指すもの、②部局でのダイバーシティ推進に向けた具体的取り組みや課題、の構成となっています。

大西 宏治 人文学部長

富山大学 大西 宏治先生

①構成員それぞれが実感を持ったダイバーシティの理解と推進を目指します。人文学部ではダイバーシティへの理解は得られていると感じています。女性教員率や女子学生比率が高く、多様な文化的背景を持った留学生が所属することなどが、多様性や働き方を考える機会になっていると思います。ただ、多様性に対する表面的な理解と実感を伴う理解には、構成員の中にも差があると思います。多様な教職員、学生がいることから、具体的な場面を通じて実感をともなったダイバーシティの理解が深まる取みを創り出したいです。

②ダイバーシティの推進にあたって、所属教員の発案により、富山大学人文学部ダイバーシティ&インクルージョンカフェが設置され、誰でも安心していられる場所として、多様性を考える取り組みが行われてきました。これをけん引してきた教員が急逝し、教員の個人任せで重要な取り組みを行ってきたことが課題として突き付けられました。このカフェの運営に多くの教員に関わってもらうことでダイバーシティ推進に取り組みます。また、コロナ禍で下火になっていた留学の推進にも取り組み、学部の国際化推進に力を入れていきます。

徳橋 曜 教育学部長

富山大学 徳橋 曜先生

①学校現場、特に小学校や幼稚園は女性の多い職場です。将来、そうした職場で働くことになるであろう学生達には、ジェンダー平等を強く意識してもらいたいと思っています。また教職員に対しては、可能な限り多様な働き方をしてもらえる余地を作ることを目指していますが、人手の不足もあってなかなか十分な形にはできません。しかし、産休・育休が取得しやすい職場の雰囲気はあると思いますし、また育休を取った男性教員もいました。教職員が多様な働き方をお互いに認め合いながら働ける職場を目指したいと思います。

②採用人事では女性研究者を積極的に採用するように努めていますが、女性の応募が相対的に少ない傾向にあり、学部教員の内部での女性比率がなかなか増えません。一方、教職員の産休・育休については積極的に推進し、男性教職員の産休取得も促しています。また、事務職員・教員共に削減されている状況において、一人当たりの仕事量は男女を問わず増えています。その中で仕事に追われることなく、余裕をもって家庭生活や子育てに関われる職場環境を作っていくことが大きな課題です。

森口 毅彦 経済学部長

富山大学 森口 毅彦先生

①経済学部では、すべての学生・教職員が、互いの多様性を尊重し合いながら活躍できる教育・研究・職場環境づくりを目指し、主に以下の3つの取り組みを推進しています。
1.多様性をもった人材の積極的な受入れ促進
2.教職員一人ひとりの生活環境を尊重した働き方の実現
3.様々な障害のある学生が快適に授業を受講できる環境の整備

②経済学部では、①に対応し、具体的に以下の3つの取り組みを行っています。
1.採用人事において、若手研究者ならびに多様な人材の積極的な応募を歓迎している旨の記載を行うことで、
  多様性をもった人材の採用を促しています。
2.育児・子育てを抱える教員の働き方に対して、夜間主授業や昼夜開講の大学院授業、1限目の授業担当に関して必要に応じて配慮を行っています。
3.これまで、①聴覚障害、②肢体障害、③発達障害、④社会不安障害(視線恐怖症)等の様々な障害のある学生に対して、ICTを有効に活用することで
  授業を実施してきています。

松田 恒平 理学部長

富山大学 松田 恒平先生

①ダイバーシティ教育の推進:学生や教職員に対してダイバーシティに関する啓蒙と意識向上のための取り組みを推進したいと考えています。学部改組を活かす面からも、例えば国際コースの設置により異なるバックグラウンドや文化、思考を尊重し、国際的に開けた教育・研究環境を提示したいと思います。これらを通して学生が多様性を理解しつつ柔軟な思考力を養える人材育成を目指します。

②ダイバーシティ推進のための取り組みとして、オープンキャンパスなどのイベントの際にダイバーシティ支援策など全学的な施策を対外的にPRしています。また、実際に支援を必要とする学生を受け入れた際には本学アクセシビリティ・コミュニケーション支援室と連携しながら学習環境にアクセスしづらい学生に対して様々な支援を提供してきました。これらの実績を積みつつ本学部のダイバーシティ強化を推進し、さらに学生と教職員が共に成長し発展できる場を提供したいと考えています。

関根 道和 医学部長

富山大学 関根 道和先生

①現代の医学や医療が抱える課題は複雑化しており、課題解決のためには専門知と総合知のベストミックスが求められる。そのため、様々な属性や専門性を持つ教職員の連携と協働による総合性が、医学部の教育・研究・社会貢献において重要であると考える。ダイバーシティの推進により、医学部のさらなる発展を目指したい。

②・会議体における構成員の多様性の確保:
  医学部執行部会議をはじめとした会議体における構成員の多様性を確保することで多様な意見を医学部運営に反映。
 ・業務組織や業務方法の改善:
  業務組織や会議体の統廃合、業務方法の効率化等による実労働時間の減少とワーク・ライフ・バランスの向上。
 ・若手・女性活躍の制度化:
  部局長リーダーシップ経費により若手・女性教員の研究支援制度を構築。また「富山大学医学部長賞」を創設し、若手・女性教員を顕彰。

松谷 裕二 薬学部長

富山大学 松谷 裕二先生

①薬学部は、理系学部の中では女子学生の割合が高い部類に入りますが、対して女性教員比率はなかなか向上しません。ジェンダーはもちろん、年齢や国籍など、多様な背景を有する教員組織を構築して、発想力や問題解決力の向上を目指します。また、外国人留学生の積極的な受け入れを推進することで、国際性豊かな教育研究環境をつくりあげ、相互刺激によってワールドワイドに活躍できる人材育成を目指します。

②教員採用人事においては、女性や外国人を含めた多様で優秀な人材登用・昇任に努めています。特に、女性教員比率に課題が残されていることから、今後は必要に応じて、女性限定公募の活用も視野に入れています。海外大学との部局間交流協定などを通じた相互交流により、学部全体の国際化を推進しています。また、教授会ではダイバーシティ関連イベントの周知に努め、教員薬学部長 の意識向上を図っています。

小熊 規康 工学部長

富山大学 小熊 規康先生

①工学部の留学生数は比較的多いものの真のダイバーシティの観点からは欧米からの留学生を増やして学生同士の文化交流を図る方向にもっていきたいと考えています。教員については女性と外国人の割合が小さく、徐々にでも増加するよう今後も教員選考で考慮していきます。また、教員の働き方は個々人のワーク・ライフ・バランスが十分意識されながら教育研究に携わって欲しいですし、多くの教員がそれを実践していると感じています。

②課題の一つであります女性教員比率の向上につきましては、より多くの女性研究者の育成が必要であり、そのために女子学生入学者比率の向上が不可欠です。工学部では、令和5年度入試から、女子学生の少ない3つのコースに対して女子特別推薦枠を新設し、優秀で熱意があり将来のリーダー・研究者を夢見る女子学生の入学を推奨しています。また、構成員にはダイバーシティ研修への参加を促すことでジェンダーバイアス等がかからないよう改めて認識していただいております。

長柄 毅一 芸術文化学部長

富山大学 長柄 毅一先生

①芸術文化は、多様性の推進や社会包摂に向けて重要な役割を果たしています。ですから、本学部で学んだ学生が卒業後、社会で活躍していく際には、世界中のあらゆる背景の様々な人々と共生、共働していくためのスキルが特に重視されると考えます。性別だけではなく、性自認や性的指向、障害の有無、国籍、年齢ほか、あらゆる違いを受容し、ともに生きていく社会を築けるような人材を社会に送るための教育・研究を支援できるよう留意したいと考えています。

②芸術文化学部の学生の女性比率はおよそ80%程度ですが、女性教員の比率はようやく20%を超えたばかりです。教授職になると10%(1名)となり、改善する必要があります。なお、芸術文化の世界においては、高等教育機関の学生は女性が圧倒的に多いにも関わらず、教授は男性が多いといった点や、主要な賞の審査員と受賞者は男性が多数を占めている点など、ジェンダーバランスの不均衡があることが報告されており※、この領域の深刻な問題だといえます。芸術文化学部では、このことを改善するために女性限定公募のような積極的差別解消措置を一部検討しており、学生に対しても“多様性”と“受容”の大切さをきちんと説明できる組織構成にしていきたいと考えています。

※表現の現場 ジェンダーバランス白書2022, https://www.hyogen-genba.com/gender

安永 数明 都市デザイン学部長

富山大学 安永 数明先生

①ダイバーシティ推進においては、性別や国籍にかかわらず、個々の特性を認め合うことで、全員が能力を最大限に発揮できる環境づくりを大切にしています。特に教職員に関しては、ダイバーシティ推進を通じて様々な視点を確保することによって、個々の活動が部局全体で単なる足し算以上の効果を生むことを目指しています。また学生に関しては、学部教育の特徴から議論する場面が多いのですが、価値観の衝突や意見の違いを尊重するだけでなく、それらを建設的に活かすインクルージョンを視野に入れた指導を行っています。

②ジェンダーバイアスの解消に向けて、教員の採用では女性限定の公募を行うことで、多様な視点を強制的に確保する試みを行っています。また、海外の大学や研究機関との連携を強化し、共同研究や交流プログラムを推進することで、国際化にも積極的に取り組んでいます。さらに学生に関しては、単に多様性を認めるだけでなく、価値観の違いや意見の衝突を建設的に解決するためのスキルの修得・向上を目指す授業科目を開講しています。

早川 芳弘 和漢医薬学総合研究所長

富山大学 早川 芳弘先生

①当研究所には外国人教員をはじめ、多くの留学生や外国人客員研究員など、多様な文化、民族、宗教的な背景を持ったメンバーが在籍しており、また海外研究機関との国際交流も盛んに行なっている。このような国際的な環境では、教育研究活動だけでなく、生活の中で食事や文化宗教的な配慮が必要であり、これらの多様性に配慮した研究活動や交流事業におけるダイバーシティ推進を目指している。また会議等の時間短縮や定時勤務時間内での開催など、ワーク・ライフ・バランスの推進によって多様な働き方の実現を目指している。

②現状、多様な背景を持つ外国人留学生や研究員にとって富山大学での研究生活には様々な課題があるが、これらに対してサポートできるように心がけている。研究所の国際交流活動においては、相手の文化宗教的な背景に配慮する取り組みを心がけている。一方で課題としては、大学内では特に食事の面で宗教的な配慮が難しいことが多く(ハラル対応等)、これらの環境の改善への取り組みが全学的に必要であると考えている。また多様な働き方において男性教員も含めた育休の積極的な取得についても推奨している。

林 篤志 附属病院長

富山大学 林 篤志先生

①附属病院では、医師、看護師、薬剤師をはじめ、専門性の高い多様な職種の職員が働いています。部局としては、女性比率が高く、勤務形態も様々であるという特徴があります。最近では、医師の働き方改革の一環として、変形労働制の導入や勤務パターンの増加等に取り組んだ結果、以前より柔軟な働き方が可能になりました。今後も、多職種連携による高度な医療を提供するとともに、職員のウェルビーイング向上に努め、一人ひとりが誇りと自信を持っていきいきと働く魅力ある職場の実現を目指します。

②院内保育所や病児保育体制など、職員が安心して勤務できる環境を整えています。また、「医師のダイバーシティ推進室」を設置しており、学生や研修医も参画し、講演会や座談会などの活動を行っています。更に、次世代のリーダー人材を育成するLDP(Leadership Development Program)事業に、女性枠を設けるなどの取り組みも行っています。現状としては、時間外労働の一層の縮減が課題です。病院全体でのタスク・シフト/シェアを進め、全職員の時間外労働を短縮させることにより、職員のワーク・ライフ・バランスの向上につなげていきたいと考えています。