富山大学 ダイバーシティ推進センター

富山大学 ダイバーシティ推進ボス宣言 (2025年度版)

富山大学は、性別、性的指向と性自認(略称SOGI)、障がいの有無、年齢、文化、宗教、信条、国籍などの多様性を尊重し、それぞれが自らの能力を発揮し、皆が生き生きと活躍できる教育・研究・職場環境づくりを進めることを宣言しています。(参照:富山大学ダイバーシティ推進宣言)

この度、学長・ダイバーシティ担当理事・各部局等の長に、「ダイバーシティ推進ボス宣言」として、本学もしくは各部局等において目指す多様性推進と、それに向けた具体的取り組みや課題についてお話ししていただきました。是非ご一読ください。

齋藤 滋 学長

富山大学学長 齋藤 滋

 国際的にみて日本の教育はトップレベルですが、ダイバーシティに関しては、若干の向上は認めていますが、現時点において最低レベルにあります。富山大学のみならず、国を挙げて改善に取り組む必要があります。富山大学は地域と世界に向かった開かれた大学として「教育」に貢献していますが、この点をより改善するため、多様性を尊重し、それぞれが自らの能力を発揮し、皆が生き生きと活躍できる教育・研究・職場環境づくりを進めています。
 学問には多様性があり、多様な人材による総合的見地からの研究が望まれています。富山大学では、多様な教職員による教育、研究、社会貢献を実施したいと強く願っています。今後も富山大学は多様な人材を積極的に活用し、ダイバーシティ推進の視点に立った社会への貢献や、国内外の教育機関や社会との協調・連携を進めていきます。ただし、女性教員比率は富山大学の掲げた中長期計画・中期目標の目標値に大きく遅れており、積極的な女性教員の雇用を進める必要があります。また理系の学部や大学院に進学する女子学生の数がOECD加盟国の中でも最低レベルにあるので、これらの点も改善していく必要があります。富山大学に在籍する女性教員が活躍する姿を発信し、学生のロールモデルになっていただきたいと思っています。富山大学が更なる発展を遂げるために、皆様のご支援とご協力を心よりお願いします。

北島 勲 ダイバーシティ担当理事

富山大学 北島 勲理事

 ダイバーシティとは、「年齢や性別、国籍、人種、教育、職歴、価値観など、属性が異なるさまざまな人々が共存している状態」と定義されています。多様な人材を登用し、それぞれの能力や個性を活かすことで組織の競争力が高まります。富山大学でも異なる背景や経験を有する学生・教職員の個性や意見を尊重し、ともに学修し協働できる環境を整備しています。この活動の中核を担う組織が富山大学ダイバーシティ推進センターです。
 私は今から35年以上前、米国サンディエゴにあるスクリプス研究所に留学しました。私の所属していた研究室には、世界中から医学、薬学、分子生物学、生化学、化学、工学の異なる背景を持つポスドクが多数(男女同数)集い、日夜切磋琢磨しながら世界トップレベルの研究を展開していました。その経験が私の人生に大きな影響を与えてくれました。イノベーションを起こす優れた研究成果は、異なる専門分野を有する多様な人々による異分野連携が重要です。多様な人々が相互に刺激することで新しい発想や一歩前に進むアイデアが生れてきます。富山大学では、異分野連携をめざした大学院博士課程を再編成し、医薬系と理工系を融合した「医薬理工学環」を創設しました。また、文理を融合することでSDGsを推進する「持続可能社会創成学環」も設立しました。富山大学の「総合知」を社会のウエルビーイングに展開する一翼をダイバーシティ推進センターが担ってゆきたい所存です。



*各部局長によるダイバーシティ推進ボス宣言は、①部局でのダイバーシティ推進において目指すもの、②部局でのダイバーシティ推進に向けた具体的取り組みや課題、の構成となっています。

伊藤 智樹 人文学部長

富山大学 伊藤 智樹先生

①人文学部では、人間の社会生活や文化を研究・教育で扱っており、人間社会におけるさまざまな生き難さや不利益の存在に気づける人材の育成を行っています。しばしば問題の根は深く、にわかに解決・推進するのは難しいケースも多いですが、見逃されやすい問題の存在に気づき、まずは問題の存在を認識することが重要といえます。

②女性学生の比率が高いことから、ジェンダーに関するテーマが卒業研究等で取り上げられやすいほか、病いや障害とともに生きる社会生活に関わる研究・教育も一部に組み込んでいます。他にも、性的多様性に関わる書籍の展示(多様性ライブラリ)や共用スペースの設置を行っています。課題としては、性的多様性以外の多様性に取り組みを広げることと、近年女性教員の比率が低下傾向にあることです。対策として、性的多様性以外のテーマを設定した研究の推進と、女性教員公募において一定の積極的措置を行っています。

片岡 弘 教育学部長

富山大学 片岡 弘先生

①教育学部の本質は多様性にあります。児童・生徒や保護者が多様であるように、教員も専門分野や背景はさまざまです。多様な教職員が安心して協働できる環境を整えることで、学生の学びが充実し、多様性を理解し尊重できる教員を養成できます。異なる価値観を受け入れ、多様性を力に変える力を育み、地域や学校と連携して共生社会の実現に貢献します。

②以下のような取り組みを通じて、多様性を尊重し合えることに加えて、教職員も学生も、孤立することなく組織の一員として受け入れられ、能力を最大限に発揮できる組織文化を育んでいくことが課題であると考えています。
・採用人事においては、若手研究者や女性研究者の積極的な登用の推進
・男性職員の育児休業取得率の向上。また、それぞれの育児や介護といったライフイベントに応じた柔軟な働き方の支援
・学生に対しても、支援が必要な状況や留学等の多様な背景に配慮し、一人ひとりの状況に寄り添った支援

森口 毅彦 経済学部長

富山大学 森口 毅彦先生

①経済学部では、すべての学生・教職員が、互いの多様性を尊重し合いながら活躍できる教育・研究・職場環境づくりを目指し、主に以下の3つの取り組みを推進しています。
1.多様性をもった人材の積極的な受入れ促進
2.教職員一人ひとりの生活環境を尊重した働き方の実現
3.様々な障害のある学生が快適に授業を受講できる環境の整備

②経済学部では、①に対応し、具体的に以下の3つの取り組みを行っています。
1.採用人事において、若手研究者ならびに多様な人材の積極的な応募を歓迎している旨の記載を行うことで、
  多様性をもった人材の採用を促しています。
2.育児・子育てを抱える教員の働き方に対して、夜間主授業や昼夜開講の大学院授業、1限目の授業担当に関して必要に応じて配慮を行っています。
3.これまで、①聴覚障害、②肢体障害、③発達障害、④社会不安障害(視線恐怖症)等の様々な障害のある学生に対して、ICTを有効に活用することで
  授業を実施してきています。

松田 恒平 理学部長

富山大学 松田 恒平先生

①ダイバーシティ教育の推進:学生や教職員に対してダイバーシティに関する啓蒙と意識向上のための取り組みを推進したいと考えています。学部改組を活かす面からも、例えば国際コースの設置により異なるバックグラウンドや文化、思考を尊重し、国際的に開けた教育・研究環境を提示したいと思います。これらを通して学生が多様性を理解しつつ柔軟な思考力を養える人材育成を目指します。

②ダイバーシティ推進のための取り組みとして、オープンキャンパスなどのイベントの際にダイバーシティ支援策など全学的な施策を対外的にPRしています。また、実際に支援を必要とする学生を受け入れた際には本学アクセシビリティ・コミュニケーション支援室と連携しながら学習環境にアクセスしづらい学生に対して様々な支援を提供してきました。これらの実績を積みつつ本学部のダイバーシティ強化を推進し、さらに学生と教職員が共に成長し発展できる場を提供したいと考えています。

中川 崇 医学部長

富山大学 中川 崇先生

①現代の医学や医療が抱える課題は複雑化しており、課題解決のためには専門知と総合知のベストミックスが求められる。そのため、様々な属性や専門性を持つ教職員の連携と協働による総合性が、医学部の教育・研究・社会貢献において重要であると考える。ダイバーシティの推進により、医学部のさらなる発展を目指したい。

②医学部の執行部や各種委員会において女性や若手、外国人、学生などを構成員として登用し、多様な意見を取り入れることで、それらが医学部の運営に反映されるようにしています。また、外国人留学生や海外医学生・看護学生を積極的に受け入れ、本学学生との交流を進めるなど国際的な視野が身につく教育研究環境を提供しています。さらには、学生のダイバーシティ活動を教員が支援するなど、学生・教員の意識向上に取り組んでいます。

松谷 裕二 薬学部長

富山大学 松谷 裕二先生

①薬学部は、理系学部の中では女子学生の割合が高い部類に入りますが、対して女性教員比率はなかなか向上しません。ジェンダーはもちろん、年齢や国籍など、多様な背景を有する教員組織を構築して、発想力や問題解決力の向上を目指します。また、外国人留学生の積極的な受け入れを推進することで、国際性豊かな教育研究環境をつくりあげ、相互刺激によってワールドワイドに活躍できる人材育成を目指します。

②教員採用人事においては、女性や外国人を含めた多様で優秀な人材登用・昇任に努めています。特に、女性教員比率に課題が残されていることから、今後は必要に応じて、女性限定公募の活用も視野に入れています。海外大学との部局間交流協定などを通じた相互交流により、学部全体の国際化を推進しています。また、教授会ではダイバーシティ関連イベントの周知に努め、教員の意識向上を図っています。

小熊 規康 工学部長

富山大学 小熊 規康先生

①工学部の留学生数は比較的多いものの真のダイバーシティの観点からは欧米からの留学生を増やして学生同士の文化交流を図る方向にもっていきたいと考えています。教員については女性と外国人の割合が小さく、徐々にでも増加するよう今後も教員選考で考慮していきます。また、教員の働き方は個々人のワーク・ライフ・バランスが十分意識されながら教育研究に携わって欲しいですし、多くの教員がそれを実践していると感じています。

②課題の一つであります女性教員比率の向上につきましては、より多くの女性研究者の育成が必要であり、そのために女子学生入学者比率の向上が不可欠です。工学部では、令和5年度入試から、女子学生の少ない3つのコースに対して女子特別推薦枠を新設し、優秀で熱意があり将来のリーダー・研究者を夢見る女子学生の入学を推奨しています。また、構成員にはダイバーシティ研修への参加を促すことでジェンダーバイアス等がかからないよう改めて認識していただいております。

沖 和宏 芸術文化学部長

富山大学 沖 和宏先生

①芸術文化は、多様性の推進や社会包摂に向けて重要な役割を果たしています。ですから、本学部で学んだ学生が卒業後、社会で活躍していく際には、世界中のあらゆる背景の様々な人々と共生、共働していくためのスキルが特に重視されると考えます。性別だけではなく、性自認や性的指向、障害の有無、国籍、年齢ほか、あらゆる違いを受容し、ともに生きていく社会を築けるような人材を社会に送るための教育・研究を支援できるよう留意したいと考えています。

②技能系だけでなく論理系の入学者も受け入れる柔軟な入試制度や、自律的かつ柔軟な履修設計が可能な教育課程の導入により、多様な学生が学びやすい修学環境を整備しています。複数の地域連携型授業では、社会貢献にとどまらず、境遇の異なる人々と協働する機会が生まれ、発信力の弱い人々の知見が、制作や企画を通じて社会とつながる文化的包摂の実践として積み重ねられています。ユニセックス・トイレの設置など、環境整備も随時進行中です。一方で、女性教員比率や多様な教職員登用の推進は、今後も継続的に取り組むべき重要課題です。


安永 数明 都市デザイン学部長

富山大学 安永 数明先生

①ダイバーシティ推進においては、性別や国籍にかかわらず、個々の特性を認め合うことで、全員が能力を最大限に発揮できる環境づくりを大切にしています。特に教職員に関しては、ダイバーシティ推進を通じて様々な視点を確保することによって、個々の活動が部局全体で単なる足し算以上の効果を生むことを目指しています。また学生に関しては、学部教育の特徴から議論する場面が多いのですが、価値観の衝突や意見の違いを尊重するだけでなく、それらを建設的に活かすインクルージョンを視野に入れた指導を行っています。

②ジェンダーバイアスの解消に向けて、教員の採用では女性限定の公募を行うことで、多様な視点を強制的に確保する試みを行っています。また、海外の大学や研究機関との連携を強化し、共同研究や交流プログラムを推進することで、国際化にも積極的に取り組んでいます。さらに学生に関しては、単に多様性を認めるだけでなく、価値観の違いや意見の衝突を建設的に解決するためのスキルの修得・向上を目指す授業科目を開講しています。

東田 千尋 和漢医薬学総合研究所長

富山大学 東田 千尋先生

①和漢研では、教員20名中、女性比率25%、外国人比率15%であり、研究員まで含めると女性比率36%、外国人比率20%にまで高まる。現在7か国から留学生が集まっており外国人学生比率は博士前期課程で50%、博士後期課程では89%である。また学部生・院生を通して継続的に女性学生も多い。和漢研は多様性の高い環境である。 真のワーク・ライフ・バランスは、限られた時間の中で効率よく高いパフォーマンスを発揮できてこそ得られる。個々人が意識を高く持ち工夫しながら仕事をしていくことが求められると考える。そういった環境の醸成を目指し、所内での新たな取り組みを計画しているところである。

②会議等の時間短縮・定時勤務時間内での開催など、ワーク・ライフ・バランスの推進に配慮した働き方を進めている。また、男性教員も含めた育休の積極的な取得について推奨している。和漢研では全職位の教員に5年の任期制が導入され、正味4年間の業績で審査がなされるが、再任審査書類に備考欄(任期中に長期休暇を取得された等特別な事情)を新たに設け、ライフイベント事情を考慮できるようにした。

山本 善裕 附属病院長

富山大学 山本 善裕先生

①附属病院では、医師、看護師、薬剤師をはじめ、専門性の高い多様な職種の職員が働いています。部局としては、女性比率が高く、勤務形態も様々であるという特徴があります。最近では、医師の働き方改革の一環として、変形労働制の導入や勤務パターンの増加等に取り組んだ結果、以前より柔軟な働き方が可能になりました。今後も、多職種連携による高度な医療を提供するとともに、職員のウェルビーイング向上に努め、一人ひとりが誇りと自信を持っていきいきと働く魅力ある職場の実現を目指します。

②院内保育所や病児保育体制など、職員が安心して勤務できる環境を整えています。また、「医師のダイバーシティ推進室」を設置しており、学生や研修医も参画し、講演会や座談会などの活動を行っています。更に、次世代のリーダー人材を育成するLDP(Leadership Development Program)事業に、女性枠を設けるなどの取り組みも行っています。現状としては、時間外労働の一層の縮減が課題です。病院全体でのタスク・シフト/シェアを進め、全職員の時間外労働を短縮させることにより、職員のワーク・ライフ・バランスの向上につなげていきたいと考えています。



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