先に紹介したGreen Chemistryは,すばらしい考え方です。
でも,実際に「もの」をつくっている現場では,
廃棄物を減らすことはできても「ゼロ」にすることはなかなか難しいのも事実です。
そんなこともあって,
Organization for Economic Co-operation and Development
(OECD,経済協力開発機構)は,
Sustainable Chemistryという考えを提唱しています。
Sustainable Chemistryでは,
environmentally benign chemicals(環境にやさしい化学物質)を開発するため,
以下に紹介した領域での研究開発を推奨しています。
Sustainable Chemistryの研究開発領域
◆ 代替合成経路の使用
◆ 代替反応条件の使用
◆ 現状の物質より本質的に安全な化学物質の設計
◆ 再生可能な・リサイクルされた原料の使用
◆ 持続性ある,生体内蓄積する,有毒な物質の回避
◆ エネルギー効率の向上
◆ 環境配慮型の分析方法の使用
製品・工程の評価
◆ 人間の健康や環境へのインパクト
◆ 製品のライフサイクルに伴う作業者と使用者の安全
◆ エネルギー消費と資源利用
◆ 新しい技術の経済的な実現可能性
◆ これらのファクターのローカルレベルでの,
国レベルでの,地域レベルでの,そして全世界レベルでの評価
Sustainable Chemistry,
いっていることはGreen Chemistryとかぶる部分が多いですが,
最大の違いは「リサイクル」という概念がある点だと思います。
「リサイクル」はある意味「廃棄物の再利用」を意味しますから,
「廃棄物を出さない」というスタンスのGreen Chemistryでは
盛り込みにくい(盛り込めない?)考え方です。
Green Chemistryは,「将来あるべき姿」的な面が強いような気がします。
学者が考える「理想論」みたいな感じかもしれません。
もちろんその「理想」に向かって,皆がんばっていますが。
Sustainable Chemistryは,
「将来を目指しつつも今あるべき姿」的な面を持っているように思います。
企業人が考える「理想も大事だけど現実もね」みたいな。
あ,リサイクル,必ずしもよいこととは限らないですよ。
リサイクルするために,めちゃめちゃエネルギー必要だったりします。
リサイクルする前提でつくられてない「もの」,
捨てるよりもリサイクルした方が環境にあたえる影響が大きかったりすることも。
「リサイクル」=「地球を救う」という方程式は,
すべてにあてはまらないので注意が必要です。
そういう意味では,
Recycleを盛り込まず,Reduce(削減・抑制)をうたっているGreen Chemistryは,
やっぱり「理想的」かもしれませんね。
Reuse(再利用)も入っているとよかったかもしれませんが。
Sustainable Chemistryを実践することによって得られるメリットの多くは,
Green Chemistryと共通するのですが,
ちょっと違った,なるほど企業っぽいよね,というものも含まれています。たとえば...
☆ 有害廃棄物の処理に係るコストを「削減する」こと,あるいはなくすこと
☆ 潜在的企業責任を緩和すること
☆ 経済的に競争でき,かつ企業にとって有利な技術を供給すること
☆ 前途有望な学生を化学や関連分野に引きつけること
...など。
前途有望なあなた,だんだん引きつけられてきましたか?
【引用】
- OECD, "Sustainable Chemistry"
(http://www.oecd.org/dataoecd/16/25/29361016.pdf)
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