平成19年度選定 学生支援GP
「オフ」と「オン」の調和による学生支援
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富山大学PSNS(心理・社会的ネットワーキングサービス)

期待される効果
 1)学生本人にとっての効果

   入試形態の多様化(推薦入学、AO入試、社会人入学等)により高機能発達障害学生、あるいは発達障害傾向を有する学生の入学が可能であるが、入学後の学業やキャンパスライフでその困難さをサポートするシステムはない。入試形態の如何に関わらず大学の授業はこれまでと同じように行われ、その結果、単位を落としたり、授業を受けることができず、留年あるいは不登校、休学、退学を選択せざるを得ない状況になったりする。大学は入学選抜を経てきた学生に対して、その障害による不利益を被ることのないようなサポートをする必要がある。現在までのところ、学生もどうして良いか分からず、どのような支援システムにアクセスしてよいか分からないまま、「生きにくい」大学生活を送らざるを得なかった。そのため、二次的な心理的障害(人間関係によるトラウマ、自己効力感の低下、ひきこもり傾向など)を生じるおそれさえあった。大学生として自分自身が切り開いていくべき社会性や生きる力を獲得することが困難な学生に対して、本プロジェクトが提供するシステムは、人間性豊かな社会人を育成するための包括的な支援体制として今までにはない有効性が期待できる。

 

 2)大学(教職員などを含む)にとっての効果

   発達障害傾向のある学生を直接指導する教職員にとって、その存在を知りそのような学生の特質を理解することは重要である。彼らの存在は教員としての研究や教育指導に関わるアイデンティティを揺るがす場合がある。例えば、学生から、「卒論指導で、一つ課題を出されたら、それに関連する項目も調べてくるのが当然だろうと叱責された。研究する意欲がないなら退学しろと言われた。これは教員による学生へのアカデミック・ハラスメントではないか」という相談があった。発達障害学生にとっては、「必要があるならばはっきり言葉で言ってほしい」と、言語化しない教員が悪いと受けとっているのである。相手の気持ちを察するとか、場の雰囲気を読むとか、ほのめかしの言葉は彼らにとって最も苦手なことであり、それは障害による困難さである。教員が志気をあげるつもりで強く言った言葉が、本人にとっては強い叱責と感じられ、二度とその教員に会うことができなくなる場合もある。あるいは、職員が新入生に対して、「わからないことがあったらいつでも聞きに来ていいですよ」と言うと、ストーカーのようにつきまとわれて困るというケースもある。就職相談は単に就職情報を伝達するだけでなく、本人の特性と困難さを見極めた上で、保護者や指導教員、本人も含むチームサポートが有効である。インターンシップ、介護等体験の見直しの検討も視野に入れたキャリア教育が必要であり、修学支援そのものが学生の自己理解を促進し、自分の将来像を描く教育として機能する。本プロジェクトが提供するシステムは、これらの実践に著しく貢献する。

 

 3)社会にとっての効果

   本プロジェクトの中核となるトータルコミュニケーション支援室を設置し、専属の教職員の配置を行うことにより、大学内での支援ネットワークの核を提供するだけでなく、卒業後のフォローアップまで視野に入れた包括的サポートを行うことができる。オンライン・システムを活用することにより、卒業後の個人的支援まで可能になる。さらに、地域の職業センターや発達支援センターとの連携や情報交換、企業に対するコンサルテーション、コーチング、キャリアコンサルティングを継続的に行うことができる。このことにより、就職後の人間関係のトラブルによる離職を防ぎ、ニートやフリーターの減少や、問題行動の防止にもつながると考えられる。さらに、本プロジェクトの実践と評価から得られた成果は、この領域における先端的研究のデータとして、全国の高等教育機関での同様の学生支援システムの促進に貢献するものと思われる。