診断基準|呼吸器
IgG4関連呼吸器疾患診断基準
A.診断基準
- 画像所見上,下記の所見のいずれかを含む胸郭内病変を認める
肺門縦隔リンパ節腫大,気管支壁/気管支血管束の肥厚
小葉間隔壁の肥厚,結節影,浸潤影,胸膜病変 - 血清IgG4高値(135mg/dl以上)を認める
- 病理所見上,呼吸器の組織において以下の①~④の所見を認める
a:3項目以上,b:2項目
①気管支血管束周囲,小葉間隔壁,胸膜などの広義間質への著明なリンパ球,形質細胞の浸潤
②IgG4/IgG陽性細胞比>40%,かつIgG4陽性細胞>10cells/HPF
③閉塞性静脈炎,もしくは閉塞性動脈炎
④浸潤細胞周囲の特徴的な線維化* - 胸郭外臓器にて,IgG4関連疾患の診断基準を満たす病変*がある
〈参考所見〉低補体血症
*自己免疫性膵炎診断基準の花筵状線維化に準ずる線維化所見
*硬化性涙腺炎・唾液腺炎,自己免疫性膵炎,IgG4関連硬化性胆管炎,IgG4関連腎臓病,後腹膜線維症
B.診断
- 確定診断(definite):1+2+3a,1+2+3b+4.
組織学的確定診断[definite (histological)]:1+3.①~④すべて - 準確診(probable):1+2+4,1+2+3b+参考所見
- 疑診(possible):1+2+3b
C.鑑別診断
Castleman病(plasma cell type),膠原病関連肺疾患,granulomatosis
with polyangiitis(Wegener肉芽腫症),eosinophilic
granulomatosis with polyangitis(Churg-Strauss症候群),サルコイドーシス,呼吸器感染症,Rosai-Dorfman病,inflammatory
myofibroblastic tumor,悪性リンパ腫,肺癌 など
付記:IgG4関連呼吸器疾患診断基準の解説
1.画像所見
- 肺門・縦隔リンパ節腫大や気管支壁/気管支血管束の肥厚は頻度の高い所見である
- 小葉間間質や胸膜を含む,いわゆる広義間質に病変を認める
- 胸郭内の結節性,腫瘤性陰影や浸潤影として認められることがある
- 画像所見は非特異的であるので,感染症や悪性疾患など鑑別診断に掲げた疾患を除外する必要がある
2.臨床所見・検査所見
- アレルギー性鼻炎や気管支喘息などのアレルギー症状の既往や合併を伴うことがある
- 高IgG血症,高IgE血症を伴うことが多いが,血清IgAおよびIgMが同時に上昇することは稀である
- 抗核抗体陽性,リウマチ因子陽性,低補体血症を認めることがある
- 白血球増加やCRP上昇などの炎症所見は認めないが,もしくは軽度異常にとどまる
3.病理所見
- 気管支血管束周囲の間質,小葉間隔壁,胸膜および連続する肺胞隔壁などの広義間質に,リンパ球,形質細胞の浸潤を伴う線維化巣を認める
- 線維化の典型は「花筵状線維化」であり,リンパ球・形質細胞の浸潤を伴う紡錘形細胞の増生からなる.その方向性は無秩序で時に渦巻き状を呈する
- 著明な細胞浸潤と線維化のため,肺胞腔を埋めるような腫瘤性病変が形成されることがある
- 好酸球浸潤が散見されるが,好中球浸潤や肉芽腫は通常認めない
- 病理診断には,外科的生検材料が望ましい
4.胸郭外病変
- 胸郭外病変は,確立された臓器別診断基準を満たす病変(膵臓,胆管,腎臓),あるいは病理所見にて著明なリンパ球・IgG4陽性形質細胞浸潤と線維化を伴い特徴的な臨床・画像所見を示す病変(涙腺・唾液腺,後腹膜)である