結晶成長とは


結晶成長
上の写真は、北極海・スバールバル諸島で観察した「雪結晶」です。雪結晶は「六花(ろっか・りっか)」とも呼ばれ、その美しい「かたち」から、我々の生活に最も身近な結晶として観察されてきました。雪結晶、すなわち氷は「六方晶系」と呼ばれる6回対称性を持つ構造を持っているため、六花のかたちになります。

雪結晶のような原子・分子などが規則性のある配列を持つ固体を「結晶」と呼びます。結晶は、気体中、溶液中、融液中、そして固体中から成長します。さきほどの雪結晶は、上空の雲の中で、水蒸気から成長したものです。

この結晶が「どのように成長するか」は、原子・分子の供給や熱の放出などの「拡散」、界面の曲率による「界面張力」、そして界面での原子・分子の取り込み過程「カイネティクス」の三者が関わって決まります(下図)。

拡散、界面張力、カイネティクス

例えば、拡散と界面張力を考慮した場合、界面の曲率の応じた成長速度v0を求めることができます。一方、拡散とカイネティクスを考慮すると、結晶のかたちは成長速度の遅い面で囲まれ、その成長速度はv0にkinetic係数βを乗じたものになります。実際の結晶では、例えば過冷却水から成長する氷結晶の形態は、これら3つの要素がすべて関わっていることが明らかになっています。
界面カイネティクス

さて、「拡散」、「界面張力」に比べて「カイネティクス」とはどういうことか良くわからない方も多いと思います。「カイネティクス」とは、結晶が成長する表面や界面での原子の取り込み過程、すなわち取り込み抵抗を言います。表面・界面に原子が到達し、すぐに結晶に取り込まれれば取り込み抵抗はゼロになります。しかし、実際の表面・界面では原子が表面・界面に到達しても安定な吸着位置に到達するまでには時間がかかり、表面・界面を拡散すると考えられています。このような過程が存在するため、kinetic係数βは一般に1よりも小さ くなります。

さらに、近年の表面科学の急速な進歩により、金属や半導体の表面の原子配列が明らかになってきました。その表面原子配列は、上の図で示したような「理想表面」ではなく、表面付近だけの「表面再配列構造」になることが明らかになっています。例えば、シリコン(Si)の(111)面では、理想表面に比べて7倍×7倍の長周期構造が存在しています。

2000年12月まで在籍した九州大学では、私はこの構造に注目し、この構造が「どのように形成するか(表面相転移)」「この構造上でどのように成長が起こるか(ホモエピタキシャル成長)」を研究しました。


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