富山大学 組織制御工学講座 理工学教育部ナノ新機能物質科学専攻(博士)・材料機能工学専攻(修士)/工学部材料機能工学科/都市デザイン学部材料デザイン工学科

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研究紹介

金属材料の組織制御関係

アルミニウム合金

Al-Mg-Si合金

用途:押出特性に優れ様々な形状に加工できることから、住宅用サッシ材等に使用される。
特徴:アルミニウム合金中では中程度の強度であり、耐食性、加工性に優れるので、汎用アルミニウム材料として多用される。
目標:優れた加工性を保ったまま、更なる強度の上昇を図り、構造用材料としての用途開発を行う。

Al-Mg-Si合金中の強度を担う微細な析出物
微細析出物の原子配列
微量のAg添加により、強度と延性の同時改善に成功した合金中の微細析出物

Crystal structure of the β’’ phase in an Al-1.0mass%Mg2Si-0.4mass%Si alloy
Matsuda, Naoi, Fujii, Uetani, Sato, Kamio, Ikeno : Materials Science and Engineering A, 262(1999)232-237
Ag添加したAl-Mg-Si合金における中間相のHRTEM観察
中村, 松田, 川畑, 里, 中村, 池野 : 日本金属学会誌, 75巻(2011)179-187

Al-Zn-Mg合金

用途:強度、剛性を求められるスポーツ用品、金型部材、車軸 など
特徴:超々ジュラルミンといわれ、アルミニウム合金中では最も強く、溶接性に優れるが、強すぎるため、脆いのが難点である。
目標:脆さを克服し、優れた延性とアルミニウム合金中で最高強度を併せ持つ材料の作製を目指す。

微量のCu添加で、結晶粒界近くに析出物を 生成させて破断の主因であるPFZ
(Precipitates Free Zone)を消失させた。
結晶粒界近くで発見された析出物の原子配列
左の析出物の模式図

Effect of Copper Addition on precipitation behavior near grain boundary in Al-Zn-Mg alloy
Matsuda et al. : Materials Transaction, Vol.60(2019), 1688-1696

Al-Cu-Mg合金

用途:若干の延性と高強度を要求される、航空機用部材、ねじ・ギア部品、成形用金型、油圧部品 など
特徴:超ジュラルミンと呼ばれ、7000番系より強度を少し下げて延性を持たせ、航空機用に開発されたアルミニウム合金。
目標:更なる強度の向上と軽量化を行い、優れた部材を提供することで航空機や自動車産業の発展を目指す。

CuとMgの成分比を上昇させると、析出物が微細になり、同時に析出量が増加することから強度の上昇が得られる。

Al-Mg-Ge合金

用途:Al-Mg-Si合金の時効析出物の構造解析のための研究用材料
特徴:Al-Mg-Si合金と比較して高温の時効においても硬さが低下しない。
目標:高温でも時効軟化しない、耐熱性アルミニウム合金の開発を目指す。

Al-Mg-Ge合金の硬さ
Al-Mg-Ge合金でみられる析出物析出物の構造解析を行っている。

Al-1.1%Mg2Ge合金における時効析出物の高分解能透過型電子顕微鏡観察
松田, 宗像, 川畑, 上谷, 池野 : 軽金属, 56巻(2006), 680-684

Al-Si-Mg合金

用途:鋳造しやすく、膨張性も少ないことから、鍛造ピストン材料等自動車部品などに使用される。
特徴:Siの添加により、熱膨張率が抑えられており耐熱性に優れると同時に耐摩耗性も付与されている。融点が低いことから、鋳造特性が特に優れている。
目標:微量のMg添加により時効硬化して強度上昇を図るときの機構を解明する。

α-Al相と板状の共晶Si相
時効処理により、α-Al相中に析出が起こり、
強度上昇が発生する。

鋳造用Al-7%Si-0.3%Mg合金の473Kにおける時効析出物の透過型電子顕微鏡観察
土屋, 牧田, 李, 才川, 池野, 松田 : スマートプロセス学会誌, 8巻(2019), 155-159

Mg-RE合金

用途:金属元素中ではアルミニウムより軽いことから軽量材料としての用途開発が期待されている。
特徴:レアアース元素の添加により、高温強度が高く、クリープ特性に優れる。時効処理により強度上昇が得られる。
目標:強度上昇の主因である規則相(異種原子が規則正しく配列した析出物)の結晶構造を明らかにし、強度上昇のメカニズムを解明する。

Mg-Gd-Y合金の原子像
本研究室で発見したMg-Gd-Y合金中にみられる新たな原子配列

Precipitation sequence in the Mg-Gd-Y system investigated by HRTEM and HAADF-STEM
Matsuoka et al. : Materials Transaction, Vol.55(2014), 1051-1057

Mg-Zn合金

用途:軽量材料として自動車分野などの一部構造材として使用。
特徴:Znを添加すると、耐食性は良くなり、またZn原子の固溶強化と熱処理による析出強化で高い強度が得られる。
目標:時効硬化特性を明らかにするために、結晶構造の解明を行い、析出強化の機構を明らかにする。

Mg-Zn合金中の析出物
析出物の原子配列
原子配列の構造解析

Mg-Al合金

用途:エアーバッグ装着用ステアリング・ホイール芯材 等
特徴:鋳造性、耐食性に優れ、ダイカスト用マグネシウム合金として広く用いられている。
目標:時効硬化性に対する添加元素量の影響の解明を目指す。

Mg-Al系合金の光学顕微鏡像結晶粒内と粒界の析出物
ラメラ構造を持つ結晶粒界の析出物
強度に寄与することが明らかになった結晶粒内の析出物

473Kで時効したMg-6%Al合金の時効硬化挙動に及ぼすMn濃度の影響
土屋, 李, 會田, 才川, 池野, 松田 : 軽金属, 68巻(2018), 480-486

銅合金

Cu-Zn合金

用途:黄銅と呼ばれ古くから使用されてきた。管楽器、貨幣、船のスクリュー、仏具など使用範囲は広い。
特徴:鋳造しやすく、加工性や耐食性が良いため、銅合金中では最も使用量が大きい。
目標:Pb使用禁止に伴い、失われた切削加工性の良さを再現するべく、材料にさらなる強度上昇を付加して加工性の復活を目指す。

ベイナイト反応により生成した強度上昇をもたらすα相
α相中の微細縞状のコントラストがさらなる強度上昇をもたらす。

Ge添加した60/40Cu-Zn合金におけるα相のHRTEM観察
松田, 加藤, 川畑, 上谷, 池野:銅と銅合金, 49巻(2010), 21-28

Cu-Ni-Si合金

用途:米国のオーリン社により開発された合金、リードフレーム、コネクタ用等に使用。
特徴:コネクタの小型化と電流値の増加に伴う通電時の温度上昇を抑えるために、優れた導電性、ばね性、曲げ加工性および耐熱性を併せ持つ車載用、家電用、情報機器用などの各種コネクタの中でも、特に大電流を通電する用途に最適。
目標:時効処理の適切化を行い、実用材より高強度かつ高導電性を持つ合金の開発を目指す。

Cu-Ni-Si合金の光学顕微鏡像
Cu-Ni-Si合金中の析出物の構造解析

Cu-Ni-Si合金の時効析出に対するNi及びSi量の影響
土屋ら : 銅と銅合金, 59巻(2020), 64-69

超電導材料

Nb3Sn超伝導線材

用途:超電導コイルなどを適用したNMR(核磁気共鳴:元素分析装置)やMRI(医療用診断装置)など
特徴:数少ない実用超電導材料。
目標:超電導材としての線材化、薄膜化などをさらに促進するために、添加元素の影響を明らかにすることを目指す。

7771本のNb3Snフィラメントで構成される超伝導線材
Nb3Snフィラメント断面の構造解析結果

Cu基三元系合金を用いて作製した超電導Nb3Sn線材のミクロ組織に対するTi添加の影響
李ら : 銅と銅合金, 58(2019), 1-5

研究開発による新素材開発

多機能複合材料

用途:軽量・高剛性・高減衰性を活かし、機械・装置内で、高速駆動する部位に採用、工作機械、検査装置等の部品に使用
特徴:一般には、金属とセラミックスなどを組み合わせて、高強度材料を開発する。
目標:特化された単一機能の材料ではなく、幾つもの機能を併せ持った材料の開発を目指す。

Alと発光粒子の複合材料(光学顕微鏡像)
発光している複合材料(ブラックライト下)
磁性を持つ複合材料

機能性薄膜

用途:通常の基盤材料の表面にコーティングすることにより高強度を持たせる。切削工具、金型、機械部品などに使用
特徴:CrAlN/BN膜は鉄鋼の表面に薄膜として貼り付けることにより、優れた工具となる。
目標:薄膜コーティング技術は特殊な研究分野であり、研究開発と実用材製造に開きがあるので、それを解消することを目指す。

断面TEM像微細柱状組織
表面付近ではアモルファス化している
全体的にコロニーの集合体である。

Self-hardening effect of CrAlN/BN nanocomposite films deposited by direct current and radio frequency reactive cosputtering
Nose, Chiou, Kawabata, Hatano, Matsuda : Thin Solid Films, 523 (2012) 6-10.

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