15年前に育休取得を切り開く!父親たちよ、赤子と一対一のプレッシャーから学ぶべし!
vol.0 米田 哲 先生(医学系 産科婦人科学講座)
育児休業を取得してよかったことは?
私は、突然、妻に「あなた、育児休暇とってよ。私、働きたいから。」と言われたことをきっかけとし、娘が4カ月のとき育児休業を取得することになりました。この言葉がなければ取得することは無かったと思います。一ヵ月間だけだったので、今から考えると短かったような気もしますが、たくさん良かったことがあります。小さい娘も一緒に過ごすと色々と変化が分かるもので、ちょっとした成長を目の当たりにできることがとても嬉しかったこと、ミルクの準備をして、ドライブして実家まで遊びに行き、祖母に「妻のほうが仕事できるんけ?」と心配していただいた些細なこと、まあ、いろいろと良かったことはあるのですが、やっぱり一番良かったことは、父親としての自覚がしっかりと持てたことだと思います。
育児休業中に大変だったこと
大変でしたねえ。特に最初の一週間は。赤ちゃん、泣きますからねえ。おむつ換えても、抱っこしても、ずっとうるさく泣いているときが一番大変でした。泣くのが仕事というだけありますよね。そんなとき、ふと、おんぶ紐があるのを思い出し、試しにおんぶしてみたんですよ。そしたら人が変わったかのように泣き止んで、笑っている(写真)。感動的でしたねえ。医学的データ解析で大きな有意差が出る時も感動しますが、それ以上の感動でした。また、男性は母乳が出ないので、哺乳瓶を使ってミルクをあげることになりますが、これがまた簡単にはいかない。母乳に慣れた赤ちゃんは、哺乳瓶、すごく嫌がるんですよ(逆も然り)。娘は頑固なのか、2時間泣きまくって、いったん泣き疲れて寝て、また起きて泣いて、再び哺乳瓶でミルクあげてもまったく飲まずに嫌がって、また寝て、2時間後、再度起きたときには、ついに観念したのか、哺乳瓶でがぶがぶ飲んでくれました。これも感動的でしたね。以降は、ママはおっぱいくれる人、パパは哺乳瓶でミルクくれる人、と認識したようで、ママの帰りをすごく喜んで、すぐにおっぱい飲んでいました。やっぱりママには勝てないと実感したときは、ちょっと悔しかったなあ。
育児休業を取得するにあたり、休業前に職場で取り組んだこと
大学病院でも初めてなので、当然、医局内でもはじめての男性育児休暇取得ということもあり、気を遣いましたね。後輩の日直や当直を積極的に代わったりもしましたね。最大の難関は、教授の理解だったのですが、あっさり「取ったらええやん。」で済みました。ただ、私が休む分、妻が同職場で復帰するということもあり、比較的みんなの理解を得やすかったと思います。もしも妻が職場復帰なしで、夫も育児休業するということであると、なかなか取りにくい気がしますし、取る意味も薄くなるでしょうね。妻が一緒だと、おそらく父親としての自覚が持てなかった気がしますね。一対一で娘と向き合えたことはいろいろな意味で大きかったと思います。
育児休業から復帰後、身に起きた変化は
私の場合は、父親の育児休業終了と同時に、院内保育園でみてもらうことが決まっていたのですが、それはもう心配でしたね。他の人にみてもらうわけですから、責任もってみて頂けるのだろうか?と要らぬ心配の毎日でした。日が経つにつれ、その心配も安心に変わっていきました。また、寂しい気持ちも強く感じましたね。
これからどんな社会(職場)になってほしいか
日本は人口減少真っ只中、富山県も年間分娩数が7,000人を下回っている状態です。やはり社会は、職場は、育児している人を支える度量が必須でしょうね。その分、ちゃんと復帰するということが大前提だと思いますし、育児休業中であってもできる仕事はこなすことも必要なのかもしれません。復帰しても、子供が熱出したら、早退しなきゃいけませんからねえ、持ちつ持たれつ、お互い、子供のためにやっていく環境が必要かと思います。
子育て中にあると嬉しい制度は
本当に病気になれば、しっかり親がみるべきですが、ちょっとした風邪とか、発熱とか、下痢とか、やっぱり預けるところが限られるんですよね。最悪、仕事休んで自分でみるしかない。ちょっと具合の悪い子供をみてくれるベビーシッター制度とか、病児育児が簡易にかつ安心して利用できる制度とかがあると、ずいぶんと助かると思うんですが、風邪は流行がありますので、なかなか現実的には難しいのかなあとも思ったり。
これから出産をひかえているパパたちに、メッセージなど
昔を振り返って考えると、育児休業の究極の目的は、父親としての自覚を持つ、ということなんだろうと私は思っています。自覚というのは、子供を育てる覚悟です。今、娘は15歳になりましたが、ごはんを作ったり、塾の送り迎えをしたりしていますが、これもやはり子供をしっかり育てなければという覚悟がベースにあるからできるのだと思います。最初は食事の準備は苦でしかなかったのですが、最近は、楽しみながら作れていて、さらには弁当まで作れるようになりました(写真)。仕事と育児、両立はけっこう大変ではありますが、子育てを通じて、価値観だったり、忍耐力だったり、いろいろと自身も成長できているので、ワークライフバランスも充実していると思います。パパさん、是非、育児休業を所得してみましょう。妻が働いていたほうがベターかと思います。一対一のプレッシャーから、実に多くのことを学ぶことができます。そして、その後の育児なり仕事なり、生活がより充実することは間違いありません。


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