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講義内容(シラバス)2011

先端生命工学特論(生命工学の現状と未来)

授業科目名
(英文名)

先端生命工学特論(生命工学の現状と未来)
Present and Future of Life Science and Bioengineering

担当教員(所属)

《富山大学大学院理工学研究部(工学系)・
理工学教育部修士課程物質生命システム工学専攻》
篠原寛明、宮部寛志、中村真人、森 英利、川原茂敬、豊岡尚樹、磯部正治

授業科目区分

 

授業種別

 

時間割コード

 

対象所属

PEコース、理工学教育部修士課程

開講日程

4月−6月 木曜日6・7限
(18:30〜21:40)

対象学年

 

単位数

連絡先(研究室、電話番号、電子メール等)

代表:篠原寛明
(生物棟5階6506号室、TEL:076-445-6832,
hshinoha@eng.u-toyama.ac.jp)

オフィスアワー(自由質問時間)

随時(できるだけ毎回の講義終了直後が望ましい)

授業のねらいとカリキュラム上の位置付け(一般学習目標)

バイオ分析、医用工学・創薬科学に関わる生命科学と工学技術に的を絞り、生命工学の現状と今後の発展を理解する。
ホームヘルスケア、遺伝子診断、バイオ分析、再生医療、臓器移植、生体材料、医用機械、認知症、ブレイン-マシンインターフェイス、新薬開発、糖尿病合併症、遺伝子工学、抗体医薬など、健康な生活を支える生命工学の基礎から最新研究まで、講義やゼミ形式で、時には簡単な実習を通して学ぶ。受講者の生命工学に関する専門知識や技術力のアップ、および学際的知識と応用展開力のアップを図る。

達成目標

1.医療や創薬、食品検査などに寄与するバイオセンサの開発と発展について理解する。
2.高速液体クロマトグラフィーの基礎理論とバイオ分野への応用について理解する。
3.再生医療や人工臓器医療の基礎と最前線について理解する。
4.医療・介護・福祉分野に貢献する医用材料や医用器械の開発と発展を理解する。
5.脳科学の最前線について理解する。
6.創薬研究における有機合成化学の寄与および役割について理解する。
7.抗体医薬の基礎と展望について理解する。
8.本講義を通して進歩する生命工学と社会・企業との関わりについて理解する。

                      

授業計画(授業の形式、スケジュール等)

Part 1 生命計測工学・分離分析工学の発展

第1回

講義概要(この講義で何を学ぶか、また何を期待するか)と予定説明の後、
  バイオセンサって知っていますか?(バイオセンサの基本構成から実用まで)

篠原

第2回

バイオセンサの発展と応用(遺伝子工学・細胞工学の利用から生体模倣センサまで)

篠原

第3回

分離挙動解析理論の新展開(モーメント解析法)

宮部

第4回

新規分離技術(ぺリキュラー材料、HILIC、生体分子間相互作用解析等)

宮部

Part 2 生体医工学の進展

第5回

先端医療に利用される工学技術

中村

第6回

細胞から組織を作る組織再生医工学

中村

第7回

生体材料1(生体材料と医用器械の開発現状)

第8回

生体材料2(ソフトアクチュエータとしての人工筋肉の開発現状)

第9回

複雑な脳のしくみ(学習・記憶メカニズムを中心として)
−制御機器の活用とコンピューターシステム−

川原

第10回

脳と機械をつなぐ技術(Brain Machine Interface)

川原

Part 3 医薬品開発の生命工学

第11回

新規医薬品創製の有機合成化学1(ニコチン受容体をターゲットとした新規医薬品の開発)

豊岡

第12回

新規医薬品創製の有機合成化学2(ポリオール経路をターゲットとした新規医薬品の開発)

豊岡

第13回

抗体医薬とは?

磯部

第14回

抗体作製の新技術

磯部

キーワード

生命工学、バイオセンサ、バイオ分析機器、再生医療、医用機器、脳科学、新薬開発、遺伝子工学、抗体医薬

履修上の注意

生物学を大学で学んでいる必要はないが、できる限り自己予習(教養の生物学程度)をされることが望ましい。

教科書・参考書等

各講師が初回の講義時に指示します。

成績評価の方法

出席点、講義時の小テスト及びレポート提出の総合点で6割以上を合格とする。

関連科目

 

リンク先URL

 

オープン・クラス

 

単位互換

 

備考

生物学、生命科学を大学で履修していない異分野の受講者でもわかるよう基礎から教授し、一方、学部で履修した専門分野の近い受講者にも十分最新の知見が修得できるように配慮する。

先端生命工学特論(生命工学の現状と未来):授業計画

主題と位置付け

学習方法と内容(講義概要)

講義概要と予定説明
バイオセンサって知っていますか?(バイオセンサの基本構成から実用まで)

(篠原)

この講義の概要と予定を説明するとともに、受講生のバックグラウンドや何を期待して履修されたかを聞き、より関心を持てる講義になるよう相談する。
その後続けて、医療診断、創薬スクリーニング、環境計測、食品管理などで役立っているバイオセンサの基本構成、計測原理から実用までを紹介する。血糖値センサによるグルコース測定、アミラーゼモニターによるストレス評価などの演示実験も入れて説明する。

バイオセンサの発展と応用(遺伝子工学・細胞工学の利用から生体模倣センサまで)

(篠原)

遺伝子工学や細胞工学などのバイオテクノロジーの発展と半導体技術・光学計測技術などのエレクトロニクスの進展がドッキングした新規なバイオセンサの開発、さらには味覚や嗅覚など生体機能を模倣したパターン認識型バイオセンサの開発について紹介します。

分離挙動解析理論の新展開(モーメント解析法)

(宮部)

高速液体クロマトグラフィーは、バイオテクノロジー、医学薬学やファインケミカルなどの様々な分野で幅広く使用されている。その分離挙動を解析する場合、従来から「段理論」と「速度論」が利用されてきた。現在では新たに、モーメント理論がクロマト分離系の保持平衡や物質移動速度の定量的な解析に利用されている。本講義では主に、モーメント解析理論の概要を解説し、クロマト分離系への適用について紹介する。

新規分離技術(ぺリキュラー材料、HILIC、生体分子間相互作用解析等)

(宮部)

高速液体クロマトグラフィーには、現在も更なる高性能化、高速化とミクロ化が要求されており、これに対応した新規分離システムおよび、様々な構造的特徴(形状や多孔性)を有する分離材が開発されている。本講義では新規分離系の具体例として、ぺリキュラー分離材と親水性相互作用クロマトグラフィー(HILIC)を採り上げ、その分離特性を解説する。またクロマトグラフィー系を利用する生体分子間相互作用の解析法について、その概要を紹介する。

先端医療に利用される工学技術

(中村)

診断機器、治療機器など医療の現場においては様々な工学技術が応用されている。そのしくみや原理を通して、工学技術がいかに医療の進歩と関わり、貢献しているかを解説する。

細胞から組織を作る組織再生医工学

(中村)

疾病や外傷などによって失われた組織や臓器機能を細胞の力を用いて修復・置換・再現・増強する再生医療や組織工学。その基礎と現状、問題点を概説し、最先端の研究について紹介する。

生体材料1(生体材料と医用器械の開発現状)

(森)

生体硬組織および軟組織の代替を目的とした生体材料開発の現状を、金属、セラミックスおよび高分子材料に分類し、その特徴と問題点を解説する。また診断・治療等に利用される医用器械の現状に関し、機構学および材料科学の観点からの問題点にも触れる。

生体材料2(ソフトアクチュエータとしての人工筋肉の開発現状)

(森)

筋肉は化学エネルギーを伸縮運動に変換するソフトアクチュエータである。分子レベルの筋肉階層構造を人工的に作ることは不可能であるが、分子レベルの構造変化をマクロレベルで利用することはできる。導電性ポリマーやヒドロゲルベースの人工筋肉開発を中心に、その現状を概説する。

複雑な脳のしくみ
(学習・記憶メカニズムを中心として)

(川原)

脳の機能は、様々な神経細胞がお互いに結合して神経回路を形成することにより発揮される。したがって、脳研究では、個々の要素の性質と集団のマクロな性質がどのように関わっているかを良く理解することが重要である。本講義では神経細胞の電気的性質から、それらが構成する神経回路の性質、そして、脳の中の様々な領域が関わる学習・記憶に関して概説する。

10

脳と機械をつなぐ技術 (Brain Machin Interface)

(川原)

近年、様々な身体的障害を持つ人の機能を補完するために、脳の神経活動を測定し、それに基づいて補助器具や機械を動かす技術の開発が試みられている。この技術は障害福祉のためだけではなく、人間の脳機能(情報処理能力)を拡張させる可能性も秘めている。本講義では、動物を用いた研究を中心に脳神経活動の測定技術と人への応用や問題点を概説する。

11

新規医薬品創製の有機合成化学1(ニコチン受容体をターゲットとした新規医薬品の開発)

(豊岡)

ニコチン受容体は、記憶、学習をはじめとする様々な生理機能に重要な役割を果たしていることが、近年明らかになりつつある。中南米、マダガスカル島に生息しているカエルの皮膚には、ニコチン受容体に作用する化合物が存在することが示唆されているが、天然からの供給量が極微量であることから、有機合成による供給および詳細な生物活性評価が強く求められている。これらの話題について、最近の研究成果について紹介する。

12

新規医薬品創製の有機合成化学2(ポリオール経路をターゲットとした新規医薬品の開発)

(豊岡)

糖尿病は、現在極めて深刻な生活習慣病であり、その患者数は加速度的に増加している。それに伴い、糖尿病合併症で苦しむ患者数も増加している。この合併症発症の有力なメカニズムであるポリオール経路の活性化阻害について、最近の研究成果について紹介する。

13

抗体医薬とは?

(磯部)

現在、抗体医薬と呼ばれる医薬品が注目を集めている。人は本来、体内に侵入・発生した異物や微生物(抗原)から体を守るため、「抗体」を産生している。この抗体を薬として用いることで、これまで有効な治療法がなかったリウマチや癌に対して優れた効果を持つ抗体医薬が開発されつつある。本講義では現在どのように抗体医薬が利用されているのかについて解説する。

14

抗体作製の新技術

(磯部)

抗体医薬は、本来ヒトが産生する生体防御分子を利用することから、副作用が少なく大きな効果が期待できる。しかし、治療効果の高い抗体を開発するには、有益な抗体をできるだけ効率的に単離し、生産に結びつける必要がある。本講義では現在どのような手法で抗体のスクリーニングが行われ、どのように生産されているかについて解説する。