研究内容

このページで紹介されている研究テーマに関連した物理解析や検出器開発を行っています。


Super-Kamiokande


Super-Kamiokande検出器を用いて太陽ニュートリノに関する研究を行っています。

博士論文では、低エネルギー領域(3.5-5.0 MeV(kin))におけるバックグラウンドの同定と低減、イベントの検出効率を精密に評価しました。 これらの研究により、低エネルギー領域の太陽ニュートリノイベントを観測し、精密にエネルギースペクトラムを測定しました。

右の図は、SKにおける太陽ニュートリノフラックスの観測結果です。


Phys. Rev. D 94, 052010 (2016)

Phys. Rev. D 109, 092001 (2024)

太陽自身のg-mode振動による周期的なニュートリノ放出強度変動に関する研究を通して、世界初のg-mode振動の発見を目指しています。

太陽に代表される恒星は、天体中心で生成される核融合起源の熱エネルギーが運動エネルギーに変換されることにより、天体自身の振動現象をおこします。太陽では重力によるg-mode振動によって、太陽核領域で局所的な密度(温度)変化が周期的(~200μHz)に生じていると考えられています。特に、Super-Kamiokande検出器で主に観測される8B(ボロン)ニュートリノの生成率は温度の18乗程度(最近だと24-25乗)に比例すると考えられているため、g-mode振動由来の局所的な温度変化により放出強度が周期的に変動していると予想されます。
Super-Kamiokande検出器で実際に観測された太陽ニュートリノ事象の時刻情報に周期的な変動があれば、g-mode振動を間接的に観測できる可能性があります。これらの研究における解析を担当しています。


科研費 若手研究(B) 「太陽ニュートリノの観測時刻情報を用いた太陽g-mode振動の探索」

科研費 若手研究「太陽g-mode振動を起源とする太陽ニュートリノの周期的な強度変化の探索」

発表資料 (英語)

ポスター発表 (英語)

Super-Kamiokande検出器を用いて、宇宙における様々な天体現象起源のニュートリノ探索(研究)を行っています。

右の図は、LIGO実験によって観測された重力波(GW150914,Phys. Rev. Lett. 116, 061102 (2016))の前後+/-500秒の間に、Super-Kamiokande検出器で観測されたイベントの時間分布(左)とエネルギー分布(右)です。

BH-BH merger: Astrophys. J. Lett. 830, L11 (2016)

NS-NS merger: Astrophys. J. Lett. 857, L4 (2018)

発表資料 (英語) or Universe 5 (2019) 7.


最近、太陽フレア由来のニュートリノ探索を始めました。

Solar Physics 295, 133 (2020)

arXiv: 2210.12948

地球には宇宙から多数の宇宙線(主に陽子)が飛来します。このような宇宙線の到来方向、到来数の時間変化を調べることで、 宇宙線が宇宙空間でどのように伝搬するかを研究しています。
Super-Kamiokande検出器のような地下実験では、高いエネルギーを持つ2次宇宙線(ミューオン)を観測することができます。 これらの宇宙線ミューオンの到来数が周期的に変動しているかを研究しています。
特に、大気中の密度や太陽活動との相関に関して研究を進めています。

Pos (ICRC2023) 444, 212

Pos (ICRC2023) 444, 214

Phys. Rev. D 110, 082008 (2024)



低放射能分析技術


最先端のニュートリノ実験やダークマター実験では宇宙線起源のバックグラウンドを低減するために地下で行う必要があります。 地下実験では検出器及びその周辺に存在する環境放射性物質が最後まで悩ましいバックグラウンドになります。 その中で希ガスのラドンは、検出器の内部に混入しやすく、また半減期(3.8日)が長く、完全に取り除くことが難しいことで知られています。
これらのバックグラウンドの起源を理解するために、高感度でラドンを分析する必要があり、その技術開発を進めています。 私は開発を行ったラドン検出器を応用して、Super-Kamiokande検出器で製造している「キレイな空気」中のラドン濃度を分析、モニターを担当しています。


解析記事

Prog. Theor. Exp. Phys. 033H01 (2015)

Nucl. Instrum. Meth. A 867 (2017) 108-114

arXiv:2112.06614

Super-Kamiokande検出器を用いて太陽ニュートリノ観測を行う際に、純水中に溶け込んだ放射性物質がバックグラウンドとして観測にかかります。このうち、ラドン(222Rn)の娘核種であるビスマス(214Bi)のベータ崩壊が主要なバックグラウンドになります。

バックグラウンドになる純水中のラドンを取り除くことでエネルギー閾値を下げ、低エネルギー領域のエネルギースペクトラムを測定できるようになります。

そのためには純水中のラドン濃度を精密に測定し、ラドンの入り込む場所を特定する必要があります。純水中のラドン濃度を精密に測定するシステムの開発に従事しました。

Nucl. Instrum. Meth. A 977, 164297 (2020)

解析記事

J. Phys. Conf. Ser. 888 (2017) 012191

太陽ニュートリノ観測においてラドンは主要なバックグラウンドになります。 純水中のラドン濃度を測定するだけでなく、他の手法を用いてラドン濃度を見積もる研究も進めています。
右図はSuper-Kamiokande検出器にラドンを注入したときに、観測されたイベントの時間経過を示しています。 このような実験手法によって、通常の太陽ニュートリノ観測時のバックグラウンドの理解を進めています。

ポスター発表 (英語)

J. Phys. Conf. Ser. 888 (2017) 012191 (Link)

(1) ラドン除去を目的とした吸着部材開発
気体中に含まれるラドンガスを除去するために、多孔質な物質が広く利用されています。ガスの種類、化学的な特性により適切な吸着材を選択する必要があります。
安価でありながら、高いラドン除去効率を持つような多孔質物質を選定する基礎研究を行っています。

Prog. Theor. Exp. Phys. (2020) 113H01

Prog. Theor. Exp. Phys. (2022) 023H01

ポスター発表 (日本語)

AIP Conf. Proc. 2908 (2023) 060002


(1) 放射能データベースの開発研究 (こちら)
極低バックグラウンド環境下での地下実験では、検出器の構成要素となる構造物や光電子増倍管に含まれる放射性物質も慎重に精査する必要があります。 部材の放射性物質含有量に関する測定結果を共有する目的で、データベースの開発を行いました。 現在、神岡宇宙素粒子研究施設と東北大学ニュートリノ科学研究センターの2か所で運用しています。

詳細 (発表資料ダウンロード (PDF))

発表資料 (LRT2017)

AIP Conf. Proc. 1921 (2018) 040002


(2) フッ素 (F) を用いた太陽ニュートリノ観測
フッ素 (F)はスピンの特性から暗黒物質探索に利用されますが、MeV領域のニュートリノに高い反応断面積を持ちます。
特に、電子ニュートリノの原子核吸収反応は、同時遅延計測を可能にします。このような特性を利用したニュートリノ測定の基礎研究を実施しています。

JINST 16 P12033 (2021)

ページのトップに戻る