たなべ未来創造塾
未来デザイン

たなべ未来創造塾 第3期 事業レポートReport

「小規模多機能自治の取組」

2018年10月13日
日時 :平成30年10月13日(土)14:00〜17:00
会場 :田辺市役所 3階 第一会議室

たなべ未来創造塾7日目の講義では、実践的な教育手法として世界標準となりつつあるPBL(Problem-Based Learning / Project-Based Learning)について学ぶとともに、人口減少など多くの地域課題を抱える地方が生き残るため、現在注目されている「小規模多機能自治」の考え方や事例を学んだ。

講義 「PBLとは何か」

講師 富山大学地域連携推進機構 COC+連携推進コーディネーター 定村誠 氏
たなべ未来創造塾 7日目 小規模多機能自治の取組

知識を習得するだけでなく、現場の状況に合わせて、自分たちで考えて実践していくことが重要であるとして、1960年代から始まった教育手法がPBLで、世界標準となりつつある。

個人ワークやグループディスカッションなどを通じて、解決すべき課題を具体的に抽出し、解決策を見出していくものであることを説明した。

たなべ未来創造塾第三期では、PBL方式を積極的に講義に取り入れている。

講義 小規模多機能自治の取組

講師 南砺市南砺で暮らしません課長 市川孝弘 氏
たなべ未来創造塾 7日目 小規模多機能自治の取組

南砺市の人口は、2010年の54,722人から2060年には23,554人にまで減少すると予測されている。
人口減少は、「町内会の役員のなり手がいない」「婦人会が存続できなくなった」「イベントを開催しても参加する人がいつも一緒」などの地域課題を生み、人口減少がさらに進行することで課題がますます大きくなることが予測される。しかし、これは南砺市だけではなく、多くの地方が抱える課題であり、こうした課題の解決に向け「人口の1%を取り戻す」という考え方が注目されている。

南砺市のある地区を参考にシミュレーションしてみると、地域人口の1%にあたる子育て世帯等12人を毎年増やしていくことで小中学生の2045年の人口は、現状を維持できることがわかる。つまり、市全体で考えるのではなく、小規模の地域ごとに考えていくことによって、地域住民は人口減少対策を具体的にイメージすることができ、住民自らが地域課題を解決しようという「小規模多機能自治」へとつなげていく必要があるのである。

「小規模」とは旧小学校単位、「多機能」とは地域の課題解決に結びつく多面的な活動でありイベントではなくサービスや経営の視点で取り組んでいくこと、「自治」とは行政ではなく住民自治を表しており、こうしたことが持続的な地域づくりにつながっていくという考え方である。

島根県雲南市では、概ね小学校区域で、自治会や消防団、女性グループなど様々な団体を一つの組織に束ね、組織づくりの強化を図っており、水道検針を地域が受託し収益を得ながら高齢者の見守りを行う事例や、住民自らが地域の産直コーナーや憩いのコーナーからなる施設を運営することでコミュニティを強化している事例などが生まれているという紹介があった。その結果、「行政がやってくれない」から「行政がやらしてくれない」へと変化しつつあり、新しい公共の創出へと進展している。

南砺市では、31ヵ所の地域で地域づくり勉強会を実施するとともに、アンケート調査を実施し、課題を分析・把握する中で、小規模多機能自治の取組を推進するため、住民自治の担い手となる住民が参加のもと、全6回からなる市民会議を開催し、市街地や平野部、山間部にグループ分けし、それぞれのグループで議論を深め、最終的には提言書を取りまとめた。

今後は、
 ・従来の自治振興会、公民館、地区社協体制の1本化と課題に応じた部会制の設立
 ・公民館の(仮称)コミュニティセンター化
 ・事務局の強化(地域での職員採用)
 などを具体化し、平成31年度から本格的な取り組みをスタートさせることとしている。
 このまま何もしなければ、間違いなく人口は減少していく。人口減少に歯止めをかけるため、地方にとって「小規模多機能自治」の取組は今後ますます必要になるのだろう。

質疑及びディスカッショ

富山大学地域連携推進機構定村氏がファシリテーターとなり、PBL手法を用いたグループワークを行った。それぞれの地域の課題を明確にするため、まちなかチーム、中山間チーム、郊外チームに分かれ、議論を深め、最終的にはグループごとに発表し、理解を深めた。

地域課題の明確化、解決するための手法を検討することは、これからビジネスプランを作っていくうえで大きな武器になることだろう。

<テーマ①>

・講義を聞いて「知っている(わかった)こと、知るべきこと、思いついたこと」

<テーマ②>

・それぞれのエリア(まちなか、中山間、郊外)では、10年後どうなるか?

・解決するために必要な取組は?