たなべ未来創造塾
未来デザイン

たなべ未来創造塾 第3期 事業レポートReport

「地域活性化論②」

2018年12月1日
日時 :平成30年12月1日(土)14:00~17:00
会場 :田辺市役所 3階 第一会議室

人口減少のメカニズムを解明しながら、民間企業が人口減少の歯止めにどう関わることができるか、子育て世代の移入とビジネスをどう両立させることができるか、舟橋村の取組事例などを通じて、考え方を学んだ。

講義 「地域活性化論②~新たな地域づくり、ケーススタディ(富山県舟橋村)~」

講師 富山大学地域連携戦略室長 金岡省吾 教授
たなべ未来創造塾 10日目 地域活性化論②

どうすれば人口減少に歯止めをかけることができるのだろうか。
人口減少が進む理由には、大きく「社会減」と「自然減」があげられる。

年齢別の人口移動状況を見ると、高校を卒業し、大学や就職で都会に転出する「社会減」が大きい。しかし、一度都会に出ることはむしろ重要なことであり、それよりも、学生の頃にいかに地域にふれ、将来帰ってきたいという人材を育成できるかが大切なのである。
また、30歳代前後になったときに「社会増」がみられる。つまり、地域に帰ってきていることを表しており、さらに0~4歳の移動を生み出している。子供を連れて帰ってきているのである。

そして、この世代に対し、もう一人産んでもよいと思える環境を作ることで、「自然増」につながり、人口減少に歯止めをかけることができるかもしれない。
そのため、子育て世代の移入が人口減少の歯止めの大きなカギを握っているのである。
千葉県流山市、長野県下條村では、子育て世代に焦点を絞り、子育て賃貸住宅の提供や子育てしやすい環境づくりなどの施策に取り組むことで、その移入に大きな成果をもたらしている。

しかし、それは補助金施策により人の取り合いをするのではなく、重要な視点は「共助」。旭化成や積水ハウスの取組を参考にしながら、地域がみんなで子供を見守るコミュニティを形成することで、ここに住みたいという感情が生まれるのである。
次に、富山県舟橋村の事例。公共投資がトリガーとなり、民間の動きが活発になったことで、住宅開発が進み、子育て世代を中心に人口増加が進んでいたものの、当初は周辺自治体よりも地価が安かったことから進んでいた住宅開発が、近年、それが逆転したため、住宅開発が大きく鈍化しており、将来的には高齢化が進むであろうことが明らかとなった。

こうしたことから、舟橋村では、産学官金が連携した子育て宅地開発に着手。地価に左右されるのではなく、安心して子育てできる環境・仕組みを作ることで、子育て世代を誘導しようと、モデルエリアを設けて、子育て賃貸住宅と認定こども園、公園を一体的に整備するプロジェクトが進行している。
特に、公園整備については、こども公園部長を認定し、子供たち自身が公園づくりに取り組むとともに、大人たちがクラウドファンディングなどを通じて支援することで、地域が一体となった公園づくりに取り組み、「第34回都市公園等コンクール」で最高賞の国土交通大臣賞を受賞した。

この公園ができたことで、「こんな公園があるくらいだから、ここはきっといいまちだ」という期待感が人を呼び込み、「この公園があるからここに住みたい」ということにつながりつつある。
子育て世代の移入とビジネスとの両立。地方創生が叫ばれる中、人口減少という課題に立ち向かい、この課題を解決できる企業は必ず地域から必要とされる。

そのために重要な視点は「共助」。一見、手間がかかり、コストが合わないと思われがちな「コミュニティ」の形成が、人を動かし、地域を救い、結果として企業利益につながるのである。