たなべ未来創造塾
未来デザイン

たなべ未来創造塾 第3期 事業レポートReport

「超高齢社会ビジネスの可能性」

2018年11月10日
日時 :平成30年11月10日(土)14:00〜17:00
会場 :シリコンバー(高垣工務店1階)

田辺市における地域課題の重要な視点の一つである「高齢化」をテーマに、地域はどのように変化するのか、どこにビジネスチャンスがあるのかを探った。

講義 「超高齢社会ビジネスの可能性~地域包括ケア時代の生活支援サービス市場~」

講師 三菱UFJリサーチ&コンサルティング/社会政策部長 上席主任研究員 岩名礼介 氏
たなべ未来創造塾 9日目 超高齢社会ビジネスの可能性

これまで日本の企業は、一番の人口のボリュームゾーンである「団塊の世代」をターゲットにし、常にその世代が何を求めているかということを考えながら、サービス開発を進めてきた。

「団塊の世代」は、70歳となり、何を求めているのだろうか。
今の70歳は、見た目も若く、元気で、しかも十分な貯蓄のある層が増えており、旅行や食事などによくお金を使う。

しかし、私たちが考えなければならないのは、10年後、「団塊の世代」が80歳半ばになった時、何にお金を使うのか予測することである。

80歳となり、生活への支援や介護が必要となるケースが急速に増え、旅行や食事など趣味嗜好にお金を使うことが少なくなる。今後、「団塊の世代」が求めるものは短期間で大きく変化する。75歳以上の後期高齢者は2030年頃に向けて増加し続け、さらに後期高齢者の平均年齢は上昇していくため、支援や介護を必要とする人は2040年に向けて増え続けていく。一方、15~64歳の生産年齢人口は大幅に減少し、少ない人数で75歳以上の後期高齢者を支えなければならない状況が生じる。

そのため、専門職の世界では、医師や看護職、介護職がそれぞれの役割を少しずつシフトさせ、専門職でなくても担えることは積極的に民間市場に任せていくことで担い手不足を補う必要がある。「ロールシフト(タスクシフティング)」という考え方だ。これまで介護職が中心に担ってきた買物、調理、掃除などの生活支援については、介護の専門職以外の担い手が積極的に支えていく必要がある。そこにビジネスチャンスが生まれる。

寝たきりなど重度の要介護者は、生活のために必要なサービスの範囲が多岐にわたるが、軽度者の場合は生活の中で支援を必要とする困りごとは、重い荷物を動かしたり、ゴミ出しといった些細なことも多く、ビジネスになりにくい点が指摘されてきた。また、こうした小さなニーズに「なんでもお世話します」という形で過剰なサービスを提供していくと、結果として、これまで自分でしてきたことをやらなくなることで、身体能力が低下してしまうという点も指摘されている。

したがって、こうした小さな支援を必要とする部分をみんなでどう支えていくかが問われており、そこには、民間サービスに加え、住民同士の助け合い(互助)の必要性も認識されるようになっている。民間サービスにせよ、互助にせよ、住民同士が「つながり」、地域の課題に「気づく」ことがスタート地点になる。行政にはこのような「つながる」場をつくり、「気付き」の土壌を作ることが求められている。こうした考え方は、ボランティアとしての互助だけでなく、地方で新しいビジネスを生み出すのも同様であり、異業種が交わる場所としての、「たなべ未来創造塾」がまさにその役割を担っている。また、日々の仕事や活動での関わりを通じて、「自ら」がその課題に気付けるか、身近なものの中で何に気付くかが新しいビジネスを創出するポイントとなる。

超高齢社会とビジネスとの両立。介護保険の枠組みだけの対応には限界がある。担い手が不足するこれからの時代において、生活支援サービス市場における潜在的な需要がますます高まることが予測され、そこにビジネスチャンスが潜んでいる。

ポイントは、「つながり」と「課題への気付き」。これは高齢化に限ったことではなく、地方で新たなビジネスを生み出すためには重要なファクターなのである。