とやま呉西圏域共創ビジネス研究所 第3期
地域課題と企業課題を解決する地域プロジェクトの創造 いざ未来形魚津へ!

事業レポートReport

とやま呉西圏域共創ビジネス研究所第3期7日目
圏域の地域課題とビジネスチャンス④

日時:令和元年12月26日(木)15:00〜18:00
会場:富山大学高岡キャンパスH282演習

とやま呉西圏域共創ビジネス研究所の7日目が開講。中新川郡舟橋村から講師を招き,人口減少歯止めへの合計特殊出生率向上へ向けた子育て共助の取組である舟橋村創生プロジェクト「子育て共助のまちづくりモデル事業」について説明を受け,人口減少・少子高齢化という社会課題への先駆的取組から地方創生のビジネスへの可能性を探った。

情報提供

提供者:富山大学 金岡教授・宮本学氏

講義前に金岡教授と事務局宮本氏からこれまでの復習を兼ねて人口減少はなぜ起こるのか,各地の公営住宅や公園の縮小廃止の状況について,子育て層へターゲットを絞ったシティセールスを展開した千葉県流山市の事例,役所の意識改革から住民意識を変え市民協働による道路工事などで捻出した予算で村営住宅を建て子育て層の転入を増加させた長野県下條村の事例,子育て共助コミュニティ賃貸住宅を商品化した旭化成ホームズの「ヘーベルメゾン母力」や積水ハウスの埼玉県子育て共助のまち普及モデル事業について紹介し,今回講義内容となる「子育て共助のまちづくり」の国内的背景や国内取組を示した。

講義 圏域の地域課題とビジネスチャンス④
講義:舟橋村の取組〜子育て共助コミュニティ〜

講師:舟橋村生活環境課長 吉田昭博氏
圏域の地域課題とビジネスチャンス④

最初に舟橋村の立地や面積など概要について紹介。村の幼少人口不足から宅地造成開発に舵を取り急激な人口増となった経緯やその後に生じた課題を説明。平成19年の村民憲章制定から始まった富山大学と連携による地方創生への道のりを紹介。

平成24年に若手職員研修でまちづくりの行政主導ではなく民間・住民主導への行政の在り方を学び,25年に社会課題である人口問題についてプロジェクトチームを立ち上げ,村の現状と課題を分析し,先駆事例を研究し新たな村のビジョンをつくりあげて取り組んできた経緯を紹介した。

舟橋村の人口増となったメリットとデメリットについて紹介し,徳地造成による村の急激な人口増加により核家族の増加による自助機能の低下,地域格差,コミュニティの断片化による住民の共助機能の低下などの地域課題が生じたことや近隣地価の低下による村内新築転入の低迷と村の年齢構成の歪な形について説明し,村で独自推測した将来人口予測や国推計の合計特殊出生率の現状との乖離など独自での人口動向調査をもとに舟橋村環境総合整備計画を策定。持続可能な村として生き残るために,子育て世帯の減少に対応した子育てサービス充実とエイジレス世帯の急激な増加に対応した地域信頼の醸成,生きがいづくり地域の居場所づくりに取り組み,「子供を育てるなら舟橋村!住み続けるなら舟橋村!」を目標に掲げていると話し,具体的取り組みへむけての先駆事例となった全国の自治体や企業による取り組みを紹介。

舟橋村におけるアンケートとヒアリング調査をもとに子育て世帯流入に必要なサービス機能や施設,出生率の向上につながる地域共助について考察し,平成26年度に舟橋村官民連携子育てモデル造成事業として子育て共助・公園整備・宅地造成のハードとソフトを組み合わせた事業実施の産官学金による勉強会を実施し意見交換をしながらプロポーザルの仕様提案書案を作成。「子育て共助のまちづくりモデル事業」実施に向けた「子育て環境づくり事業」「コミュニティ空間等整備活用事業」「宅地造成事業」の3つのプロポーザルを実施したと説明した。

個人ワーク・発表・質疑

ここまでの講義内容を受けて,舟橋村が何故この取組をやったのか,この先どのような展開となるのかを研究生各自の考えをまとめ意見発表をおこなった。研究生から人口減少や子育て共助,適正人口数や人口移動,まちづくりや地域環境づくり・地域コミュニティについてなど質問や各自の考えを発表し,講師が研究生の質問に回答した。

講義後半

事業の優先交渉権者との意見交換や情報提供を重ねる中で,商品企画力や資金力・コミュニティ形成力不足という地方の壁があり「自ら学び,考え,動く」人づくりの必要性を認識。平成27年度に異業種の産と官学金連携プラットフォームとして舟橋村創生プロジェクト総合推進会議を設け,施策提案から情報意見交換・事業内容の決定,事業実施,事業検証といったPDCAサイクルを回し事業を進めていると説明。

舟橋村が目指す地方創生のイメージを示し,核になるのはコミュニティで,子育て世代を繋げ住み続けてもらうことICTを活用したコミュニティづくり,パークマネジメント,地域に支えられ・支えるこども園,コミュニテイという新しいビジネスを創出することで転入と出生をしていく内容で,集積したモデルエリアで事業が進んでいると紹介。

プロジェクトの状況として,平成27年に開設した子育て支援センターについて,利用者が関わりながら「繋がる安心感」を提供することで利用者が増加している状況や活動内容を紹介。オレンジパークの造園業者の取組として,都市公園の在り方について村・富山大学・造園団体と「舟橋村における公共空間の整備利用に関するコミュニティづくり事業に係る連携協力に関する覚書」を締結し,勉強会の開催を通じ新たな公園利用の試みをおこなってきた状況・取組みを紹介し,プロポーザルで決定した業者の取組経過や内容について紹介し舟橋村型パークマネージメントの特徴を説明,村の公園の取組は第34回都市公園等コンクールで最高賞の国土交通大臣賞を受賞するなど評価を受けたと話した。転入者アンケートでの舟橋村選択理由に、子育て支援センターや公園があげられるようになり取り組みが転入に繋がり成果が出てきた。

繋がる安心と期待感が選ばれるまちづくりになるというのが舟橋型子育て支援であると話した。舟橋村地域優良賃貸住宅の取組についてプロポーザルから業者決定までの経緯や概要について説明。地域の課題は行政だけの課題ではなく住民や民間企業の課題として解決できる民間企業が求められ,新しいものを提案する民間企業や行政の性能発注,課題解決型PPPが実現できたら持続可能な地域ができると考えていると話した。

討議
テーマ:子育て共助のまちづくり

圏域の地域課題とビジネスチャンス④ 討議

個人ワークとして各研究生が講義への感想・質問をまとめ,2グループに分かれた研究生間で,舟橋村の取組は人口減少に歯止めをできるのか?公園や子育て支援センターの取組についてや子育て賃貸住宅について,子育てコミュニティは武器となるのか?
子育て共助とは何かなど互いに意見や感想・見解をグループ内で討議した。

舟橋村の取組み事例の議論から持続可能な地域経営についてや地域プレイヤーが主体的に動く仕組みや持続可能なアイディアなど各研究生の地域や仕事の観点からの相互意見を交換,グループ討議後、各グループ代表者が討議内容を発表して全体で討議内容の共有化が図られた。全体の討議を受けて講師の吉田氏は,村の子育て共助の目標は合計特殊出生率が上がることで,産まれるかどうかが最終ゴール。その環境づくりを仕事としてやることが狙い。造園も高い評価を受けているが補助金依存でなくビジネスとして成立しなければ失敗である。コミュニティは転入に繋がっていることが見えてビジネスになりそうな気配はしていると話し,コミュニティビジネスの可能性を研究生へ伝えた。