たかおか共創ビジネス研究所第3期
高岡市/富山大学

事業レポートReport

たかおか共創ビジネス研究所 5日目第9・10限講義&座談会

2016年8月19日
基礎講義 地域課題とビジネスチャンス①
県外事例:実家の水産加工会社と地域を変える
日時:平成28年8月19日(金)15:00〜18:00
会場:高岡市役所801会議室

たかおか共創ビジネス研究所の5日目が開講。鹿児島県枕崎市から中原水産株式会社代表取締役中原晋司氏を招き,企業と地域の変革,事業承継,地域の活性化をキーワードに事業展開や取り組みについてヒアリングし,地域課題からのビジネスチャンス創出への先進事例を学んだ。

たかおか共創ビジネス研究所 5日目第9・10限講義&座談会

第9限

特別講義
地域課題とビジネスチャンス①
「出汁(だし)」による地域活性化 〜観光客受け入れと物販の好循環作り〜
講師 :中原水産株式会社 代表取締役 中原晋司氏

県外事例ヒアリングとして,かつお節生産量日本一の鹿児島県枕崎市で水産卸・水産加工品販売業を営む,中原水産株式会社代表取締役中原晋司氏から事業内容や地域活性化への取り組みなどの話を伺った。

中原水産はカツオ漁業の町として知られる鹿児島県枕崎市で60年以上前に祖父の代に創業。枕崎港に水揚げされる魚を仕入れ,鮮魚・冷凍魚として漁船・メーカー・小売店に卸販売とかつお節の加工製造を営んでいた。3代目となる中原氏は,大学卒業後,世界最大手の経営コンサルティング会社,新規事業育成会社を経て中原水産へ入社,日本の出汁文化の良さを世界へ発信し,出汁による地域活性化と企業経営に務めている。冒頭動画で和食の基本である出汁について,かつお節製造について,中原水産についてを紹介。枕崎の地域産業であるかつお節の需要について,一般家庭でのかつお節を削り出汁をとる習慣の減少や出汁パックや出汁調味料の普及により一般販売量が減少していると説明。

日本の食文化の基本である「出汁」をテーマにした物販の取り組みとして,最高級かつお節「本枯れ節」,水産物品評会にて県知事賞を受賞したかつお節のせんべい「かつおせんべい」,鹿児島県内のグルメグランプリで2連覇殿堂入りした出汁が主役の地元グルメ「枕崎鰹船人めし」といった新商品の開発に携わってきたことを紹介。

中原氏が発起人の1人となり2012年に発足した「出汁の王国・鹿児島プロジェクト」について説明。日本の食文化の重要な要素である出汁をテーマに戦略的産業おこしを行い地域ブランド化を目指し,結果として様々な社会課題・地域課題を解決しようとするプロジェクトで県内の食品製造・卸・小売販売業者,飲食業,ホテルなど17社でインターネットや様々なイベントを通じ世界へ情報発信をしていると話し,出汁イベント風景や枕崎おだし教室の様子を紹介した。様々な業種が集まったことで新たな発見や気付きがあったとし,「枕崎おだし教室」の誕生は観光客受け入れのキッカケとなり,作り方を教えることも観光になり,人がきて商売になること・見せることが商売になることを気づかせたと話し観光客受入が本格化するまでの経緯を説明。

一般だけでなくプロの料理人向けや修学旅行生向けなどの受け入れた「枕崎おだし教室」の取り組み,個人観光客に向けた出汁を飲んでもらう「枕崎おだしバー」や「おだしカフェ」の取り組み,JR指宿枕崎線での「おだし列車」の運行などイベント風景を紹介。また,海外観光客(インバウンド)の受入について説明。2014年からシンガポール・香港から定期的にツアー受け入れ,これまで800人以上,受け入れたほか,タイ・上海・台湾・香港でのメディア・雑誌取材の反響もあり個人客としての受け入れも増えており,旅行代理店向けデモツアーを受け入れたりと今後も増加していく見込みと説明し,海外客はコミュニケーションに苦労するがキチンと納得するまで商品説明すると商品を購入してくれると話し,シンガポール観光客のインバウンド受け入れ事例として,地元の焼酎メーカとコラボして枕崎市内の古民家を改修した食育施設で催した枕崎おだし教室の様子を伝えた。

さらに,鉄道を使ったもてなし・ふれあいをテーマにした地域活性イベント「夢たまプロジェクト」の取り組みを紹介。2014年2月から2016年8月まで開催した5回のJR指宿枕崎線の指宿・枕崎間をイベント列車が走るイベントの様子やホテルでの「出張出汁ライブ」の様子を紹介。シンガポールの展示会における「出汁ライブ」と展示風景を紹介し,「インバウンドで引き寄せた客がアウトバウンドでコアな客になっている」と話し,「一歩ずつ積み上げていくことで大きな評価につながっていく。進んで海外へ出ていくことが大切で、出て行かないと分からない。意外なモノが売れたりもする」とアウトバウンドへの取り組みについての感想を述べた。最後に個人観光客から団体まで対応可能な「おだしサロン」で自社商品販売もする直営店舗「枕崎おだし本舗かつ市」を枕崎駅から徒歩3分の場所にオープンさせたことを紹介し,観光客や地元の人が利用している様子や,団体向けの「出汁ライブ」を実施していることを説明,「観光客受け入れ」と「物販」の好循環作りを実現している様子を伝えた。

第10限

座談会/質疑応答&ディスカッション
テーマ :企業・地域を変えるには
論点1 :どんな活動がどのような活性化を生んだか 地域資源,イベントとCSV
論点2 :地域活性化を実現するには

本日の講義についての質疑応答と講師・研究員間でのディスカッションがおこなわれた。

取り組んだプロジェクトでの国内・海外での反応についてや海外観光客へのPR法,枕崎の地域経済についてや企業をとりまく状況について,出汁をピックアップさせた事業展開に舵を切った理由や今後の展開,家業へ戻った理由やキャリアについて,地域観光への社内理解についてや経営についてなど研究生からの様々な質問に答えながら相互理解を図った。

中原氏は最後に企業経営者について「危機を先に感じて手を打つのが良い経営者。自律的に危機感を持ち好調な時にどれだけの期間で対応できるか・どこにゴールを置くかを考えるコトが大切」で,自身は「同族がハッピーになり枕崎・鹿児島がハッピーになることをゴールに置いている」と話した。