たなべ未来創造塾-地域から必要とされる新たな仕事を創りだす-
未来デザイン

たなべ未来創造塾 第5期 事業レポートReport

2日目 地方創生から考える地域課題と地域活性化
    ケーススタディ:人生参加型工務店・高垣工務店

2020年8月22日
日時 :令和2年8月22日(土)13:30~16:30
会場 :tanabe en+

今回のテーマは、「地方創生」とは何か。
地域課題の根っこである「人口減少」を深く掘り下げ、「人口減少」で地域はどうなるのか、自分の企業にどのような影響を及ぼすのか、こうした中で、ビジネスチャンスはどこにあるのかを探った。またケーススタディとして、たなべ未来創造塾修了生から、人口減少に歯止めにつながる企業行動について学んだ。

①講義 地方創生から考える地域課題と地域活性化

講師 :富山大学地域連携戦略室長 金岡省吾 教授
  :田辺市たなべ営業室    鍋屋安則
たなべ未来創造塾第4期開講式 開会挨拶

「地方創生」とは、一言で表すと人口減少の歯止め。
地方創生に関する国の方向性や政策を交えながら、田辺市においてどのように人口減少が進み、地域にどのような影響を及ぼすのかについて、田辺市の人口ビジョンを中心としながら説明した。

日本の人口は、2010年をピークに、今後、大幅な人口減少が予測されており、地方から東京圏への大幅な転入が続く一極集中となっている。

こうした状況を是正するため、国では地方創生を積極的に推進し、各種施策が展開されている。田辺市の将来人口推計に目を向けてみると、田辺市の人口は2010年現在の79,119名から2060年には40,122名まで減少するとともに、65歳以上の高齢者は40%を超え、15~64歳の生産年齢人口とほぼ同水準となることが予測されている。また、将来推計人口メッシュを見ると、旧町村部では将来的に非居住となる地域が多数みられ、2060年には2010年の約3分の1にまで減少してしまうというという衝撃的な数値も示された。こうした中で自分や家族の暮らし、自分の仕事はどうなってしまうのだろうか。

人口減少は「自然減」と「社会減」から引き起こされるが、その中でも「社会減」が大きな課題となっている。そのため、「地域経済分析システムRESAS(リーサス)」のデータを用いて、年齢階級別移動数を表したグラフを見ながら、このグラフが何を語っているのかについて、ディスカッションした。
大学進学等で大幅な「社会減」となるが、地域に大学がない以上、それは仕方がない。
それよりも、一旦、都会に出た若者をいかに戻すか。
将来帰ってきたいと思える地域をどう作るかが、重要な視点なのだろう。

概ね小学校区単位で田辺市の将来人口を推計すると、三栖や秋津、中芳養では人口増加が予測されているが、その他のエリアでは人口減少が進み、特に山村地域では大幅な人口減少が予測されている。
人口減少は労働力不足や生活環境の悪化をもたらすだけでなく、教育・医療・福祉、立地されるサービス施設や都市戦略など、地域全体に影響を与える大きな課題であり、人口減少が、自分の暮らしや仕事にどのような影響を与えるか具体的に考えたうえで、人口減少が起因となり生じる様々な地域課題をビジネスで解決することがまさに地方創生であり、人口減少の歯止めに直結する。

こうした企業行動は、ローカルイノベーションやCSVと呼ばれ、若者の中で憧れる働き方へと時代は変わりつつあるのである。

②ケーススタディ 「人生参加型工務店・高垣工務店」

講師 :(株)高垣工務店 代表取締役社長 石山登啓 氏(2期生)

社長が病で倒れたため、残されたスタッフ5名を率いて、会社の再建を図ることに。
どうすれば、会社が生き残れるのかを考える中で、お客様に寄り添い、信頼関係を築くことを追求した結果、今では日本最大の工務店ネットワーク「JHABNET」で3年連続顧客満足度№1(お客様紹介率が88%)を受賞するまでになった。また、引き続きお客様に寄り添い、ニーズに応える中で、半日型のデイサービス「きたえるーむ」や発達障がいの子どもたちを対象にした塾「ハッピーテラス」といった事業を展開、多角化経営を行うようになったのである。

こうした中、たなべ未来創造塾に出会い、講義を通じて、金岡教授の『コミュニティは武器になる』という言葉が心に深く刻まれた結果、学んで、創造して、飲んでしゃべる場、新しい価値が生み出される場として「シリコンバー」を作ることとした。今では、多くのセミナーやイベント、記者会見でも活用されるなど、人と人がつながり、新しい価値が生み出される空間となっている。

「シリコンバー」の会場使用料は無料である。しかし、本業である会社の売上げはアップしている。『コミュニティは武器になる』 人と人がつながる空間を作り、そこに寄り添うことで、地域から愛され、地域から必要とされる会社へ。

若年人口の減少に伴い、有効求人倍率が上昇している。

つまり、企業側は採用が難しく、学生側は企業を選べる状況となっているのだ。
しかし、高垣工務店では、スタッフがいきいきと働いている姿、ワクワクする会社づくりを積極的に発信し、体感してもらうことで、県外の若者から高垣工務店で働きたいという意識変化を生み出し、新卒者を雇用できるようになり、結果として、地域の人口減少の歯止めにも寄与している。
 賃金や休暇など「働きやすさ」だけでは、優秀な人材は確保できない。
「地域から必要とされる会社」「地域からありがとうを頂ける会社」が「働きがい」を生み出していく。
 こうした地域に寄り添う企業行動が、人口減少の中での企業経営のあり方なのではないだろうか。