たなべ未来創造塾-地域から必要とされる新たな仕事を創りだす-
未来デザイン

たなべ未来創造塾 第5期 事業レポートReport

6日目 小規模多機能自治の取組・地域課題解決と企業経営

2020年10月24日
日時 :令和2年10月24日(土)13:30~16:30
会場 :田辺市文化交流センター 2階大会議室

たなべ未来創造塾6日目は、人口減少が進む中、全国で注目されている「小規模多機能自治」の考え方や取り組みを学ぶとともに、ケーススタディとして、日常生活支援とビジネスの両立に向け取り組んでいる事例について学んだ。

講義 小規模多機能自治の取組

講師 :南砺市南砺で暮らしません課長 市川孝弘 氏
小規模多機能自治の取組

人口減少が進む中、役員のなり手が不足しているにもかかわらず、行事は減らない。
一方で、交通弱者や買い物難民が増えるなど、地域課題は山積している。

今後、人口減少がさらに進行することで、こうした地域課題がますます顕在化することが予測される。
南砺市では、平成24年3月に「南砺市まちづくり基本条例」を可決し、協働のまちづくりを進める中で、平成28年9月にIIHOE川北秀人氏の講演を聞き、そこで「小規模多機能自治」をはじめて知り、「行事を半減して、事業=福祉+経済を」「イベント(祭)からサービスへ、役から経営へ」という考え方の転換が持続可能な地域づくりには重要であると認識した。先進地として知られる島根県雲南市では、既に市内全域

30の組織が立ち上がり、それぞれが自主的な事業を展開している。
例えば、お年寄りの見守りを兼ねて水道検針を請け負う事業「まめなか君の水道検針」や、買い物難民やお年寄りのコミュニティづくりのため、産直市+サロンを運営している「笑んがわ市」など。
「小規模多機能自治」は、人口減少の歯止めにつながるのだろうか。
地域が総働し、地域課題を解決することで、人が住み続けられる地域を目指しながら、その一方で、毎年人口の1%を取り戻す「1%戦略」を実践する。

例えば、1,600人の集落の場合、人口の1%に当たる16人をUIターン(2組の30歳代前半夫婦で4歳以下の子ども連れ、3組の20歳代前半の夫婦、2組の60歳代前半の夫婦とした場合)させることができれば、人口減少は歯止めするのである。(特殊出生率も考慮する必要あり)
市全体で考えるのではなく、小規模の地域ごとに考えていくことによって、地域住民は人口減少対策を具体的にイメージし、住民自らが地域課題を解決しようという「小規模多機能自治」へとつなげていく必要があるのである。

「小規模」とは旧小学校単位、「多機能」とは地域の課題解決に結びつく多面的な活動でありイベントではなくサービスや経営の視点で取り組んでいくこと、「自治」とは行政ではなく住民自治を表しており、こうしたことが持続的な地域づくりに重要で、その結果地域では、「行政がやってくれない」から「行政がやらしてくれない」へと変化しつつあり、新しい公共の創出へと進展している。

 南砺市では、31ヵ所の地域で地域づくり勉強会を実施するとともに、アンケート調査を実施し、課題を分析・把握する中で、小規模多機能自治の取組を推進するため、住民自治の担い手となる住民が参加のもと、全6回からなる市民会議を開催、市街地や平野部、山間部にグループ分けし、それぞれのグループで議論を深め、最終的には提言書を取りまとめ、平成31年4月よりついにスタートを切ることができたのである。
 また、今年度より地域課題をビジネスで解決する手法を取り入れるため、「たなべ未来創造塾」を参考に、「なんと未来創造塾」を開催する。

 このまま何もしなければ、間違いなく人口は減少していく。人口減少に歯止めをかけるため、地方にとって「小規模多機能自治」の取組は今後ますます必要になる。さらに、こうした取り組みと企業利益を両立させることができれば、新たな地域づくりが実現できるかもしれない。

講義 地域課題解決と企業経営

講師 :丸進商事(株)・福祉用具まるしん 代表取締役社長 塚田高史 氏
地域課題解決と企業経営

富山県高岡市で鉄鋼会社に資材を販売する会社を経営しつつ、2009年に「福祉用具レンタル・販売まるしん」として新たに福祉事業部門を立ち上げた。

高齢化を背景に、福祉用具のニーズは拡大してきたものの、福祉用具の販売価格が、国の見直しにより引き下げられ、売上げが減少するなどの企業課題を抱えていた。また、社会保障費の急増に伴い、これまで介護サービスの対象となってきたものが、今後は切り離されていく状況にある。

一方で、地域では高齢者に向けたサービスが不足し、買い物難民や交通弱者などの地域課題を抱え、その解決が求められていた。

そのため、地域事業者と連携し、買い物支援サービスを開始、国の支援策もあり、これまで順調に売り上げを伸ばしてきた。
しかし、開始から8年が経過し、国の支援策が下火となり、利益が少なくなったことやメインとなる福祉用具の仕事に支障をきたしてきたことなどから、事業に行き詰まりを感じ、2019年に買い物支援サービスから撤退するという苦渋の決断をしたのである。

こうした中、新しいビジネスモデルを模索するため、「たなべ未来創造塾」の姉妹塾にあたる「とやま呉西圏域共創ビジネス研究所」に参加し、講義の中で「たなべ未来創造塾」の事例を聞いたところ、塾生たちがつながって新しいビジネスを生み出していること、地域に根差したスモールビジネスを数多く生み出すことが地域の力となっていくことを聞き、こうしたことに感銘を受け、同じ塾生であった居宅介護事業所と業務提携、「福祉用具まるしん」の空いた建物を活用し、今年7月に事業所を開設した。

また、介護保険による福祉用具のレンタルと販売だけでは生き残っていけないとの思いから、「住宅改修まるしん」という新事業も立ち上げたところである。
 今後は、地域課題を解決する企業へと転換し、高岡市を飛び出し、幅広い地域で活動していきたいという。

日常生活の中にビジネスチャンスがある。地域課題にしっかりと目を向けながら、企業利益につながることを考えていきたい。そう力強く宣言し、講義を終えた。