たなべ未来創造塾-地域から必要とされる新たな仕事を創りだす-
未来デザイン

たなべ未来創造塾 第5期 事業レポートReport

9日目 「地域活性化論②」

2020年12月5日
日時 :令和2年12月5日(土)13:30~16:30
会場 :南方熊楠顕彰館 1階 会議室

人口減少のメカニズムを解明しながら、民間企業が人口減少の歯止めにどう関わることができるか、子育て世代の移入とビジネスをどう両立させることができるか、舟橋村や魚津市での取組事例などを通じて、コミュニティを武器としてCSVを実現する手法を学んだ。

講義 「地域活性化論②子育て支援と人口減少のメカニズム、子育て支援とビジネスの両立
    ~子育て共助のまちづくり・ママビジネスの可能性~」

講師 :富山大学地域連携戦略室長 金岡省吾 教授
  :舟橋村 生活環境課長   吉田昭博 氏
地域活性化論②

どうすれば人口減少に歯止めをかけることができるのだろうか。
人口減少が進む理由には、大きく「社会減」と「自然減」があげられる。

年齢別の人口移動状況を見ると、高校を卒業し、大学や就職で都会に転出する「社会減」が大きい。しかし、一度都会に出ることはむしろ重要なことであり、それよりも、学生の頃にいかに地域にふれ、将来帰ってきたいという人材を育成できるかが大切なのである。
また、30歳代前後になったときに「社会増」がみられる。つまり、地域に帰ってきていることを表しており、さらに0~4歳の移動を生み出している。子供を連れて帰ってきているのである。
そして、この世代に対し、もう一人産んでもよいと思える環境を作ることで、「自然増」につながり、人口減少に歯止めをかけることができるかもしれない。

そのため、子育て世代の移入が人口減少の歯止めの大きなカギを握っているのである。
千葉県流山市、長野県下條村では、子育て世代に焦点を絞り、子育て賃貸住宅の提供や子育てしやすい環境づくりなどの施策に取り組むことで、その移入に大きな成果をもたらしている。
しかし、それは補助金施策により人の取り合いをするのではなく、重要な視点は「共助」。
旭化成ホームズや積水ハウスでは、コミュニティを武器とした子育て共助住宅の建設に取り組んでいる。地域がみんなで子どもを見守るコミュニティを形成することで、子育て世代にここに住みたいという感情が生まれているのである。他にも大手メーカーやUR都市機構がコミュニティを武器とした公共空間の再生に乗り出すなど、コミュニティビジネスの分野に進出する企業が増えている。

次に、舟橋村の吉田課長より「子育て共助のまちづくり」の事例紹介。
公共投資がトリガーとなり、民間の動きが活発になったことで、住宅開発が進み、子育て世代を中心に人口増加が進んでいたものの、近隣市町の地価が下落する中、舟橋村は下落率がゆるやかであったことから、近年では近隣市町と拮抗する価格となったことで、住宅開発が大きく鈍化しており、将来的には高齢化が進むであろうことが明らかとなった。

こうしたことから、舟橋村では、産学官金が連携した子育て宅地開発に着手。地価に左右されるのではなく、安心して子育てできる環境・仕組みを作ることで、子育て世代を誘導しようと、モデルエリアを設けて、子育て賃貸住宅と子育て支援センター、公園を一体的に整備するプロジェクトを進めている。
その中でも、子育て支援センターについては、立派な施設や豪華な遊具といったハードではなく、ベテラン保育士が相談に乗るのでもない。お母さん同士で相談しあえる“ゆるやかな”コミュニティを形成することで、多くの子育て世帯が訪れるようになっている。
公園については、こども公園部長の募集や月イチ園むすびプロジェクトなどを通じて、子どもたちが自ら公園づくりに関わることで、公園への愛着が生まれ、村への期待感につながろうとしている。
こうした取り組みが評価され、「第34回都市公園等コンクール」において最高賞の国土交通大臣賞を受賞、舟橋村総合戦略におけるKPI(数値目標)を見ると、子育て世代の転入世帯数や出生数などがほぼ達成できている状況であるという。

人口減少が進む中、子育て共助のまちづくりはどの自治体においても重要な視点であるに違いない。
次に、金岡教授から、魚津市「ココママ」の取組についての事例紹介があった。
フリーランスのママは、子育てと家事をこなしながら、仕事で活躍することが非常に難しい。子どもに振り回され、他にも悩みは尽きない。
そのため、ココマカロンの大島さんは、フリーランスのママたちが活躍できる場を作ろうと、「ココママ」を結成。理想の働き方を後押しし、ママが輝ける街を目指して取組を始めた。

同じような悩みを抱えているママたちに呼びかけ、マルシェを開催したところ、大きな反響を呼び、今では多くの出展者、来場者が参加するようになり、大きなママコミュニティが形成されつつある。他にも勉強会や座談会、育児の助け合いなどを通じて、共助を実践しながら、新たな働き方を創造している。
こうしたコンセプトと取組みが共感を呼び、多くのメディアにも取り上げられるなど、好循環が生み出され、魚津に住んでみたいという意識変容へとつながっている。

子育て世代の移入とビジネスとの両立。地方創生が叫ばれる中、人口減少という課題に立ち向かい、この課題を解決できる企業は必ず地域から必要とされる。
そのために重要な視点は「コミュニティ」。
一見、手間がかかり、コストが合わないと思われがちな「コミュニティ」の形成が、共感を呼び、人を動かす。

結果として、企業利益につなげていくことが可能なのである。
「コミュニティは武器になる」。

さらには塾生の討議のなかで、
「マルシェは変わった!」
「参加者が多い賑わいだけではつかれるだけ」
「人口減を克服する新たなマルシェが誕生しようとしている」
との話題がでてきた。

コミュニティは、子育てに限ったことではなく、若者、高齢者、どの分野においても、これからの地域ビジネスにおいて大きなカギを握るのかもしれない。